月と星を守るために
釣りは終わった。
特に大物は釣れず、結局リコの独擅場だった。不思議なくらいリコばかりヒットしていた。どうしてだろうなぁ……。
しかし、おかげで新鮮な食材が手に入った。
メバルにアジなどが釣れた。十分すぎる。
「さて、そろそろ夜営の準備だな」
「そだね。私もそろそろ情報収集に戻るかな――って」
なぜか固まる桃枝。
鳩が豆鉄砲を食ったような、そんな顔をしている。
「どうした?」
「……スマホに連絡が入ってさ」
「ふぅん? 友達か」
「友達っていうか、てっちゃん……アベリアちゃんだよ」
「え……アベリアって、あのアベリアか!?」
「そそ。前に北センチネル島で会った子」
懐かしいな。あの事件後、アベリアは無事にアメリカに帰した。実家に帰り、平和に暮らしているとは聞いていた。まさか桃枝と連絡を取っていたとは。
「で、なんでアベリア?」
「実はさ、アメリカの状況とかを逐一報告してもらっているんだよね。もちろん、報酬を支払ってだけど」
「そうだったのか。で、向こうはなんだって?」
「ロシア人のことを調べてもらっていたんだけどね、まずいかも」
「マジか。そこまで調べられるのか」
「うん、アベリアちゃん、
CIAの知り合いがいたのかよ。桃枝から詳しく聞くと、ここ半月ほどはアベリアと連絡を取り合っていたようだ。
アベリアの情報によれば、ロシア人……存在しないはずの
まさに俺たちが標的になっていた。
「なるほどね。けど、最近は大人しいよな」
「それなんだけどね、近い内に動きがあるかもだって」
「なっ……。いよいよ神造島が戦場になるのか?」
「ううん。沖縄で目撃されてるって」
「沖縄で?」
……まさか、月と星か。まずいな、あの二人に財宝の管理を任せているんだぞ。もちろん、訓練は受けているが……心配だ。
俺は気になってスマホを確認した。
するとメッセージが複数入っていた。
あった。月と星からのメッセージだ。
月:大変です、兄様
星:ロシア人に拠点を特定されました
月:移動を開始したのでご安心を
星:沖縄から移しますね
なんてこった。最近、ロシア人の動きが見られないと思ったら、沖縄に潜伏していたか。確かに、最近までは沖縄にあるオーハ島で生活していたからな。周辺を念入りに捜索していたんだろうな。
だが、月と星は上手く対処したようだ。今は移動もしている。任せるしかない。
「大丈夫かな、月ちゃんと星ちゃん」
桃枝が心配そうにする。
「大丈夫だろ。残っている財宝ももうそれほど多くはない。ほとんど金にしちゃったからな」
「こうなったら、二人を守る為にも偽情報を流すしかないかもね」
「アベリアのCIAの知り合いに頼んでそうしてもらうか……」
「うん、それがいいんじゃない? 月ちゃんと星ちゃんが心配だよ」
「分かった。そろそろ、
「ああ~、私たちが見つけた地下洞窟だよね。あそこをバラしていいの?」
「もうお宝はないからな。だけど、集結している民間軍事会社が躍起になる。ロシア人も当然宝島へ向かうだろう」
そう、あの地下洞窟はほとんど俺たちが調べ尽くしている。あっても金のカケラくらいだろう。となれば、しばらくは時間が稼げるはずだ。
神造島のことを漏らすよりはリスクが低い。
「了解。じゃあ、いよいよ宝島の地下洞窟のことを流すよ」
「頼む」
これで月と星は少しの間だけ狙われない。わずかな時間を耐えてもらい、別の場所へ移動してもらう。これでいく!
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