神造島生活、一週間目

※神造島・早坂視点


 神造島生活をはじめ、一週間が経過した。

 あれから道を切り開いたり、道路を舗装したり……森林伐採を行ったり、頑丈なコンクリートの壁を作ったり、ドラム缶風呂を作ったり、トイレを設置したり。


 さらにソーラーパネルを設置しまくって電気を確保。


 北上さんは塹壕ざんごうまで作り始めちゃって、本格的な戦場フィールドも整いつつあった。


 数々のトラップを仕掛け、地雷原まで出来上がった。迂闊うかつにつっこめば体が吹っ飛ぶ。



「……ふぅ。少しは島が住みやすくなったな」



 俺は畑を耕していた。

 元園芸部の艾の要望だ。

 花だけでなく、野菜を作ったりするらしい。自給自足までし始めちゃったのである。



「ごめんね、早坂くん。手伝わせちゃって」

「いいよ、艾。こういう趣味も必要だ」


 少しは体を動かさないと鈍るってもんだ。

 それに労働も悪くない。


 艾は本格的な作業服に身を包み、苗を植えたりしていた。やはり、園芸部員だけあって手際が良い。しかも、農業もやれるときた。

 ジャガイモやキュウリ、ナスやトマトなどなど作り始めた。

 いざ島が孤立しても、やっていけるな。


「ねえ、てっちゃーん!」

「ん? リコか」


 振り向くと麦わら帽子をかぶったリコが元気よく走ってきていた。


「見て見て、魚釣れたよ!」

「おぉ、デカいな」


 リコは最近、釣りにハマっているらしい。

 ミミズをエサにしているようだが、よく触れられるな。ギャル女子にしては珍しいタイプだ。


「五十センチだってさ」

「大物じゃないか! てか、いつの間に釣竿を……」

「神造島へ来る前に買っておいたんだ。キャンピングカーにいくつか積んであるよ」

「へえ、俺もやってみようかな」

「無人島の頃と違って、高性能な電動リールだよ」

「マジかよ。電動とか三万以上するだろうに」

「うん、高いって聞いた。でも楽じゃん」


 そりゃそうだが、高級装備で整えてあるなぁ。まあいいか、楽だし。


 俺も釣りに参加することにした。


 整備した小規模の港には、リコの他にも桃枝もいた。この二人、仲良いな。



「あ、てっちゃん~!」

「桃枝も釣りか」

「そそー! リコちゃんに連れられてさ~。ここ、ほのぼの出来て最高だよ」


 確かに、穏やかな海が広がり、潮風も心地よい。

 絶好の釣り日和な気配を漂わせていた。

 なるほど、大物が釣れそうな気配がある。実際、リコが釣れているし、今日はいけるかもな。


「俺の釣竿もある?」

「もちろん。これを使って」

「ありがと」


 電動リール付きの竿を受け取り、俺はさっそくエサをつけて遠投した。


「うまいね」

「昔から釣りは好きだからね」


 それにしても、リコがどんどん釣っているな。才能ありすぎだろ。



「また釣れちゃった!」

「リコ、上手すぎだろ」

「えへへ~。なんか今日は調子良いんだよね!」



 俺と桃枝はぜんぜん掛からないぞ。

 場所のせいなのかなぁ……。


 ほとんど離れてはいないけどな。



「うーん……てっちゃん。釣れないねぇ……」

「そうだな、桃枝。けど、こうしてボ~っと釣りを楽しむのも醍醐味だいごみだぞ」

「そういうものなの~?」

「そういうものなの」


 俺は静かに釣りを楽しんでいくが――桃枝はノートパソコンで世界情勢を調べながら釣りをしていた。


「ところでさ~」

「どうした、桃枝」

「てっちゃんって、今は誰が好きなの?」

「――ブッ!? いきなりなにを言うんだ!?」


「これだけ女子がいるんだから、もう誰かと手を繋いだりしてるでしょ?」


 いや、それ以上なんだが。


「今更なにを言っている。桃枝は欲求不満なのか」

「…………ちょ! ハッキリと!」


 赤面する桃枝は、ノートパソコンを落としそうになっていた。あぶねっ!


「大切なパソコンを海に落とすところだったぞ」

「う、うん……ありがとね、てっちゃん。そ、その……手が触れてる」

「き、気にすんな。これくらい」

「……てっちゃんしか男の子いないんだもん」

「へ」

「今夜……どうかな」

「桃枝、お前……大胆だな」

「女の子だって、そういう気分になることあるし……」



 桃枝から誘われるなんて珍しいことがあるものだ。しかし、断る理由もない。



「良いんだな?」

「うん、いいよ。その代わり、伴侶はんりょに……」

「んな!? 伴侶って夫婦じゃねぇか!!」

「いいじゃん。てっちゃん、北上さんを愛人にするんでしょ!?」

「なんで知ってんだよ!?」


「私は天才ハッカーなので!」



 どういうことだよ!

 そんな情報がネットに出回っているのか!? いや、絶対に関係ないな。どこで漏れたのやら。まあ普通に盗み聞きされていたんだろうな。

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