ピンクダイヤモンドの約束

 精算し、牛丼屋を出て今度は櫛家を目指すことに。


 タクシーで移動して十分後。

 櫛家の前に到着した。


 到着と同時に黒服の男が現れ、俺たちの前に。


「ようこそいらっしゃいました、あねさん」


 姐さんとは北上さんのことらしい。

 厳重な警備の中、家の中へ案内されていく。昨日と同じ和室へ。

 座ってしばらく待つと千国の爺さんが現れた。



「来たか、絆。それと早坂と天音だったな」



 どうやら、俺と天音の名前を覚えてくれたらしい。へえ、これはちょっと意外だ。

 それから北上さんが交渉に入ってくれた。

 ここへ来る前にタクシーの中で自分に任せてくれと言ったので、俺は北上さんに判断を委ねることにした。


「おじいちゃん、ダイヤモンドの件ですが」

「もう結論が出たのかね」

「ええ、ピンクダイヤモンドは差し上げます」

「ほお?」

「ただし、我々の移住が完了してからです」

「というと?」

「我々は現在、ロシア人や世界の組織から狙われています。なので、味方が少ないのですよ。せめて櫛家だけでもバックにつかせたいという思惑です」


 北上さんはそんな風にぶっちゃけた。

 すると千国の爺さんは豪快に笑った。


「クワッハッハッハッハ!! 絆、お前は私に最後まで面倒を見て欲しいと言いたいのか」

「要はそういうことです」


「気に入った! 気に入ったぞ……! さすがあの父親の娘よ」


 愉快そうに笑う千国の爺さん。

 上手くいきそうかな。


「いかがでしょうか?」

「80億が手に入るのだ。リスクを背負うのも、やぶさかではない。よかろう、お前達を全面的にサポートしよう」

「ありがとうございます、おじいちゃん」


「よいよい。武器も何かも好きに使え。男共も自由に従えよ」

「本当に助かります」


 今後は俺から、爺さんに今後のプランを明かした。


「千国さん、実は俺たちはこれから鹿児島の神造島かみつくりしまを購入して移住しようかと思うんです」

「……神造島? ああ、あの無人島かね」

「そうです。あそこなら戦闘をしても被害は出ないので」

「なるほど、考えたな。しかし、神造島を購入とは……そんな資金があるのか?」


「ええ、三億円しますけど、それくらいは大丈夫です」

「大金は惜しまんということか」

「リスクを考えたら安い投資ですよ」

「早坂、お前は高校生にしては頭のキレる男よ。気に入ったぞ」


 なんか褒められたな。

 俺は凡人高校生だったと自負していたが、確かに普通とは違う経験を経ている。残酷で最悪な運命に立ち向かってきたから、俺はいつの間にか浮世離れしていたのかもな。

 言われてみれば裏社会のことには詳しくなったような、そうでもないような……。



「なので、武器や生活用品の運搬の協力を要請したいです」

「ふむ、いいだろう。神造島を入手したら、いつでも連絡をするがよい」

「ありがとうございます」

「それで、今からどうするのかね」

「島を手に入れるまでは、ロシア人の動向を探ります。つけられているものですから」

「そうか。この家も狙われるかもしれぬな」

「はい、なので……お気をつけて」

「なぁに、我が家はその為に備えている」


 そうだな、あんな武器庫があるんだ。それに舎弟も多くいるようだし、今も二~三人がこちらを威圧している。

 気配を探る限り、百人はいるようだ。


 きっと大丈夫だな。


 そう思っていると――。



『ズドドドドドドドドドドド――!!!!!』



 外で爆発音のような音が響き渡った。

 な、なんだ……!


 この爆撃みたいな音!!



「お、おい……まさか!!」

「啓くん、これはロシア人では!?」



 くそっ、ヤツ等ここまで追って来たか!!

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