3,000万円を手に入れた!

 すっかり日が昇ってしまった。

 昨晩からずっと激しい時間を過ごした。

 俺は体力を失い、そのまま気絶するように眠った――。



 少し眠ったところで俺は起こされた。



「起きて、早坂くん」

「――んぁ。天音か……」

「昨晩はごめんね」

「いや、最高だったよ。またあんな夜を過ごしたい」

「……ば、ばか。恥ずかしこと言わないでよっ」


 照れつつも、天音は俺にキスしてきた。最高の朝だ。

 起き上がって鈍った体を解す。

 そういえば、ラブホテルに滞在中だった。

 そろそろチェックアウトしないと。


「あれ、北上さんは?」

「今、シャワー中だよ。だから、二人きりだね」

「天音……」


 大胆に抱きついてくる天音。小さくて細くて柔らかい。それに良い匂いがする。


「ねえ、これからどうする?」

「そうだなぁ……」


 今後のプランを練り直さないと。このまま普通に地元へ戻っても危険なだけだ。けど、他の仲間の様子も気になるからなぁ……。

 って、そうだ、スマホで連絡をすればいいじゃないか。


「あ、早坂くん。連絡なら済ませておいたから」

「そうなのか?」

「うん、みんなに連絡済み。学校には復帰しないように言ってある。で、避難もお願いしておいた。全員、昨晩には退避済みのはずだよ」


 さすが天音。しっかり指示を出しておいてくれたか! それなら安心だ。


 俺は改めてスマホをチェック。



 千年世:町から出ましたー

 桃枝:こっちも脱出した

 リコ:あ~、もうまた狙われてるのー! てっちゃん大丈夫かな?

 艾:だるぅ! 今度はロシア人?

 大塚:病院組にも報告しておいたよー



 すると、グループメッセージに全員から安否の連絡があった。オッケー、問題なし。月と星は沖縄に滞在中だから問題なし。

 しかし、メッセージが入っていた。

 なんだ?



 月:兄様、財宝の一部が売却できました。ご確認を



 へえ、久しぶりに売れたのか。どれどれ。

 口座を確認してみると。



 カ)スフィンクス:30,000,000円



 おぉ、ダミー会社から三千万も入金が!

 こりゃすげぇ。この資金があれば、しばらくは何とかなる。逃亡資金ってわけじゃないが、ここはあえて言うなら活動資金だ。


「天音、金が入ったぞ」

「え? ほんと? うわ、なにその金額!!」

「財宝が売れたってさ。月と星のおかげだ」

「三千万って、あの双子凄いね!」

「おかげで動きやすくなった。この資金を使って、しばらくはあっちこっち回ろう」

「そうだね。……でさぁ、そのぉ、早坂くん」


 モジモジと言い辛そうにする天音。ああ、なんとなく察した。


「なにか欲しいブランド品とかあるのか?」

「あはは……バレちゃったか。でも、高いのじゃないよ。お洋服が欲しくて」

「いいぞ、服だろうが宝石だろうがなんでも買ってやる」

「ありがとっ! 大好きっ!」


 天音にはいつも精神面で助けられているし、今回は巻き込んでしまったお詫びもある。せっかく臨時収入が入ったし、なにか買ってあげよう。


 しばらくすると北上さんがシャワーが上がってきた。全裸で。


「おはようございます」

「――って、うあああ! 服を着ろって」

「慌てることはないでしょう。もう何度も見られていますし」

「そりゃ、そうだが。刺激が強すぎるんだよっ」


 また下半身が元気になってしまう前に、北上さんにはタオルを巻いてもらった。これでオッケーだ。

 そりゃ本音は裸体を眺めていたいさ。けど、また昨晩みたいなことになりかねん。少しは性欲を抑えないとな。


「それは申し訳ないです。ところで、なにかあったのです?」


 俺は、資金を得たことを北上さんに伝えた。


「欲しいモノがあればなんでも言ってくれ」

「それは嬉しいですね。ではHK416とグレネードを――」

「って、武器かよ!」

「そりゃそうですよ。我々の装備は貧弱すぎるので」

「おいおい、天音みたいに服だとか欲しくないのか!?」

「そうですね、防弾チョッキは欲しいです」

「だから、そっちじゃなくて……まあいいや」


 北上さんの言うことも正しくはある。俺たちは備えなさ過ぎた。法律を意識するあまり、持てる武器もショボイものばかりだった。これからは徹底的に揃えるべきだろう。


 そうと決まれば、そろそろホテルを出るとしよう。

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