どこまでも追いかけてくる

 鹿児島港に到着。

 マイクロバスを降りて鈍った体を伸ばし、周囲を見渡した。ここが港。桜島が圧巻だな。いつも噴火しているニュースを見るが、こんな近いんだな。そりゃ、火山灰が落ちてくるわな。

 いや、そんなことよりも荷物をまとめないと。

 ここから先は『船』で移動だ。


 バスから荷物を下ろし、抱えられるモノは抱え、キャリーケースも引いていく。なかなかに大荷物だが、これから無人島生活するからな。必要なものを詰め込んである。


 荷下ろしをしていると港の奥が騒がしかった。天音も気になったのか周囲を見渡す。


「ねえ、早坂くん。気のせいかな」

「ああ、天音も? そうなんだよな。殺気を感じる気がする」


 その嫌な予感が的中した。

 駐車場に乗り込んできたセダンタイプの黒い車。こちらに猛接近して急ブレーキを掛け、窓を開けるなり――発砲してきた。


「ちょ、マジ!?」


 驚く天音を俺はかばった。

 たまたま引いていたキャリーケースが防弾で良かった。


 いきなり撃ってくるとか……まさか、例のロシア人か?


「なんなのもぉー!!」


 マイクロバスの陰に隠れながら声を荒げるリコ。他のみんなも上手く隠れたようだ。だが、相手は白昼堂々、こんな人目のつく場所で銃を撃ち続けた。……な、なんてヤツ等だ。一般人もいるんだぞ!!


 こんな人目につくところで……。

 けど、奴等にとってそんなことは関係ないってことだろう。それよりも、俺たちの財宝を欲しているんだ。


 だからって、一般人を巻き込むのは許せん。



「早坂くん!!」



 誰かが俺の名を叫んだ。

 振り向くと、その声は千年世だった。


「どうした?」

「艾ちゃんが撃たれました……」

「なんだって!」

「足から酷い出血なんです! どうすればいいのです!?」

「慌てるな。強く抑えて止血するんだ。俺が今直ぐ行く。北上さん、援護してくれ」


 北上さんには隠し武器の小型拳銃『レミントン・デリンジャー』がある。


「分かりました。急いでください、啓くん」


 予想通り、北上さんはフトモモに隠している小型拳銃を取り出した。援護射撃をしてくれたので、俺は千年世と艾のいる場所へ走れた。

 無心になって突っ走り、なんとか辿り着いた。


「艾、今すぐ手当をしてやるからな」

「……ぐっ。ご、ごめんね……早坂くん、私……」

「気にするな。悪いのはあのロシア人共だ」


 俺のカバンには救急セットがあった。

 急いで取り出し、止血剤を投入していく。

 北上さんの謎ルートから手に入れたモルヒネを打って、これで処置完了。


「ありがとう、早坂くん……」

「絶対安静だ。千年世、艾を見ていてくれ」


 千年世は呆然としていたが、ハッとなって俺の声に気づいた。


「も、もちろんです。てか、いきなりウチ等を撃ってくるとかヤバすぎですよ」

「こうなったら反撃するしかない」

「でも、武器がないですよ?」

「あるさ。前にロシア人が落としたレベデフ・ピストルがある」

「後期モデルPL-15ですか」

「詳しいな」

「師匠から銃に関しても知識を貰っていますからね」


 なるほど、千年世はみっちり訓練を受けていたようだからな。

 さてこうなると、俺がやるしかないようだな。

 どう立ち回ったものか。

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