恐ろしき真の計画

 自然とキスをする流れに向かっていた。

 俺は……千年世のことも好きだ。

 なにげないところで俺を支えてくれる。


 だから……。



『ドォォォォォオオオオオオン……!!!』



 なッ!?


 千年世と見つめ合っていると、監視塔の下の方で爆発音が聞こえた。……まさか、ラウルとそのテロ組織が戻って来た!?



「みんな、起きろ!!」



 俺と千年世は慌てて、みんなを叩き起こす。



「え、なになに!?」

「天音、装備を整えろ! 緊急事態だ」

「えっ、ええッ!?」

「いいから早く。北上さんは――早ッ、もう準備をしていたのか」


 北上さんは既にミニミ軽機関銃の『M249』を手にしていた。さすがガチ勢。準備万端だな。


「恐らくラウル率いるテロ組織でしょう。排除しなければ」

「殺る気マンマンだな、北上さん」

「ええ、まあ。やらなければやられるだけですから」



 その通りだ。

 俺も銃を手に取り、準備を進めた。


 そして全員の準備が完了した。



「アベリアとトムはここまで待機。いざとなれば二人で戦ってくれ」


 俺はハンドガンを手渡した。

 アベリアは少し焦りながらも、手慣れた手つきで腰に収めた。やっぱり、アメリカ人だけあって銃には慣れているようだ。


「早坂くん、無茶はしないで」

「ああ、アベリア。トムもアベリアを守るんだぞ」


「モチロンダ」


 ここは二人に任せ、俺、天音、北上さん、千年世で迎撃する。



 * * *



 最上階の扉を開け、下の様子を見た。

 複数の気配がある。


「北上さん、俺が様子を見る」

「分かりました。スナイパーがいるかもしれませんから、気を付けて」


「おーけー」


 ゆっくりと下を覗く。

 複数のライトが交わっているところを見ると、人数はざっと五人。スナイパーはいなさそうだ。


 まずは牽制の意味も込め、俺はアサルトライフル『H&K HK416』で威嚇射撃を行った。


 すると下で叫び声が聞こえた。


 これで去ってくれるといいのだが……。



 ――しかし、しばらくすると何かが飛翔してきていることに気づいた。



「ん……なにか下から轟音が……って、まさか!!」

「啓くん、RPGです!!」


「マジか!!」



 RPG-7の弾頭がこっちへ飛んできていた。

 俺はアサルトライフルで反撃。

 見事に命中させ、空中で爆発させることに成功した。



「……さ、さすが早坂くん!」

「おう、天音。もっと褒めてくれ」



 だが、RPG-7の弾がまた飛んできた。


 ちょ、ウソだろ!!



 このままでは危険だ。

 部屋の中に避難するしかない。



「いったん、退避しましょう」



 北上さんの言う通りだ。このままでは木っ端微塵に吹き飛ばされてしまう。とりあえず、扉は頑丈だし、そう簡単には突破できないはずだ。

 それは向こうも分かっているはず。


 部屋へ戻り、アベリアとトムと合流。

 事情をサクッと説明して部屋の奥へ隠れてもらった。



「アベリア、トム。お前たちは身を潜めていてくれ」


「了解」

「オーケー」



 しばらくすると、扉の向こうに気配が。

 ラウル共がきやがったか。


 パスワードは変更済み。

 そう簡単には開けられない…………む!?



『…………ガシャ』



 マジかよ!!

 扉開けられちゃったぞ。

 ここのセキュリティは脆弱性しかないのかよ!?



 やがて、ラウルらしき金髪の男と戦闘員四名が現れた。



 クソッ!



「ほう、こんなガキ共が監視塔を占領していたとはな」



 コイツ、日本語が分かるのか。



「……お前がラウルか!」

「なるほど、こちらのことは把握済みというわけか。小僧、どこまで知っている」

「全部知ってるさ。お前がISILを裏で操っているボスってこともな!」


「半分正解、半分ハズレだな」


「なに!?」



 銃を向けてくるラウル。

 ヤツはニヤリと笑い、叫んだ。



「ボス! コイツ等を予定通り・・・・追い詰めたぞ。これで報酬はたんまり貰えるんだろ!?」



 は……?

 ボス?


 部屋の奥から足音がした。


 アベリアの髪を引っ張り、俺に銃を向ける男。



「……早坂くん、ごめん……わたし、知らなくて……」

「アベリア、まさか、そんな! トム、お前なのか……お前がテロ組織のボス……なのか」



「フフフ、フハハハハ……ハッハッハッハ!! ようやく気付いたのか、早坂 啓。そう、この私が北センチネル島の舞台を整えた張本人さ!

 旅客機の墜落も、食人族を巻き込んだことも、テロ組織を利用したのも全て計画の内なのさ」



「トム……お前!!!」



「僅かな時間だったが、楽しかったよ。この馬鹿女アベリアがいてくれたおかげで、お前の警戒心を解くのは容易かった」


「まさか、お前……はじめから」


「ああ……そうとも。早坂 啓……お前の『宝島』の財宝をいただくためだ……!」



 そういう、ことかよ!!


 これは全て、トムの仕組んだ計画だったのか……。

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