美少女二人に挟まれた俺

 捕虜によれば、ラウルという男は週に一度だけ顔を出すようだった。つまり、次に現れるのは一週間後か……。

 だが、一時撤退みたいなことを言っていたようだし、またいつ現れるかは不明だ。


 それまでは、島で生活して待っているしかなさそうだ。


 新たな仲間、アベリアとトム。

 そして、捕虜の男との奇妙な島生活が始まった――。



 * * *



 ――三日後。



 洞窟生活を止め、テロ組織が使っていた小屋を発見。そこを拠点としていた。

 小屋には武器や弾薬、食べ物、生活用品が揃っていた。


 無線もあれば嬉しかったが、連絡手段はなかった。


 今のところラウルがやってくる気配はない。

 そのせいか、みんなこの生活に慣れ始めていた。



 俺はいつものように島の見回りへ。



 今日は千年世が一緒について来てくれた。それとアベリアも。彼女はこの島に興味があるらしく、見て回りたいという。


「良い天気ですね~。海も透き通っていて綺麗です」

「そうだな、千年世。おっと、足元に気を付けろよ~」

「はい、ありがとうございますっ」



 ゴツゴツした岩場を降りていく。

 この先はまだ調べていない場所だ。

 なにがあるか分からない。



「この島って広いですね。ずっと食人族が住んでいたんですよね」


 アベリアは足を滑らせないよう、慎重に下りながらも話題を俺に振ってきた。


「俺もまさか北センチネル島がこんなに広いとは思わなかったよ。というか、こんな場所まで流されていたとは思いもよらなかった」


「ええ。当時の飛行機がこんなところを通るなんて……」


 マレーシアに逸れすぎているし、意図的な何かを感じるな。きっと誰かの……。


 岩から飛び降りると、そこから先に小さな岩が。しばらくは岩が続くらしい。その先に何か見えていた。なんだあの塔のようなもの。


 登ったり、飛び越えたりして何とか先が見えてきた。



「ここは……」

「こんなところに監視塔のようなものがありますね」

「テロ組織の作った物かな」

「っぽいですね」


 千年世の言う通り、監視塔だとしたら……食人族とか島を監視してたのか?


 近づいてみるか。


 監視塔らしき建物は『灯台』のような形をしていた。


 出入口を調べてみると、一応セキュリティが必要だった。



 123

 456

 789



 う~ん……適当に押しても無理だろうな。

 悩んでいるとアベリアがポチポチとパスワードを入力してしまった。おいおい……。



「123456789っと」



 当然、扉なんて開くわけ――『ガシャン』――えッ!?



 開いちゃったぞおおおおおお!?



「馬鹿な! アベリア……知っていたのか?」

「うそー! 適当ですよ!?」



 パスワードを『password』と登録しているようなものだぞ。バカすぎるって。

 そういえば、最も酷いパスワードランキングで上位に入るのが『123456789』だとか『password』なんだよな。

 覚えるの面倒だから気持ちは分からないでもないけど、侵入されるだろうが!

 おかげで監視塔に入れるけど……いいのかなぁ。


 まあいいか、相手はテロ組織だし。


 中へ入ると、どうやら風力発電とソーラー発電によって電気を確保しているようだった。


「凄いな。ここは他の小屋とは違って頑丈だし、自然にも強そうだ」

「もしかしたら、拠点にもなっているかもですね」



 千年世は鋭いな。

 多分、その通りだろう。

 ここはあのラウルという男が指示を出して作らせた拠点であり、監視塔なのだ。でも、今は誰もいない。


 階段を上がっていくと、中間あたりに小さな部屋があった。



「わあ、ここ寝室ですね」



 アベリアが指をさす方向には、船舶に備え付けられているほどの寝室があった。二段ベッドで窮屈そうだが、ベッドがあるだけマシだな。


「へえ、布団は普通に良いな。ふかふかで」

「ここを乗っ取ってもいいかもですね」


 俺の腕を引っ張る千年世。

 そのままベッドへ腰掛けた。


「ちょ、ちょっと千年世さん! なにを!」


 当然この状況にアベリアが焦る。

 俺も焦っているけどな……。



「なにって早坂くんを誘惑しているんです」

「んなッ!?」


「邪魔者はいませんし、ここでしちゃいましょうか」

「ち、千年世!?」


 いきなり押し倒され、俺はビックリした。千年世がこんな積極的だなんて。



「ちょ、ちょ、ちょ! 千年世さん!!」

「なんですか、アベリアさん。貴女も混ざりたいんです?」

「ま、混ざるとか! あのですね、私たちは調査に来たんですよ。そ、そんなハレンチなことダメです!」


「アベリアさんは分かっていないですね。あの小屋に戻れば、師匠や天音さんがいて早坂くんとイチャイチャできないんです。今しかチャンスがないんですよ」


「だからって!」



 アベリアが慌てている間にも、千年世は俺の服を脱がしていく。……まったく、えっちな娘に育ってしまって……けしからん。



「千年世。アベリアさんが困ってるって」

「でも……。私、早坂くんのこと……好きだから……やるなら今かなって」

「気持ちはとても嬉しい。今は頭を撫でてやるから、それで我慢してくれ」


 俺は千年世の栗色の髪を撫でた。

 嬉しそうに目を細めて俺に身を預けてくれる。


 隣で呆然となるアベリア。

 ですよねー。


 なんだか気まずい視線だ。


 だが。



「……ず、ずるいです。千年世さんばかりずるいですよ!」



 なんとアベリアもくっついてきた。



 マジか!?

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