番外編
天音さんと特別なデート①
【無人島脱出・一週間後】
貧乏学生の俺だったが、天音というアイドルにして金持ちの娘を彼女にしてしまい……完全にヒモになってしまった。ここ最近は毎日のようにお金を出してもらって、正直申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
なんとかバイトでも探して働きたいのだが、世間の目は非常に厳しい。
なぜなら無人島から帰還した高校生として、今や時の人となっているからだ。
幸い、名前こそは晒されていない。
いないが、高校は別だ。
俺やみんなが通っていた高校の前には報道陣が押し寄せまくっていた。五十、百人はいるだろうな。あんな混沌の中で登下校? 出来るわけねえ。
そんなわけで高校は、世間の影響を鑑みて――しばらくの間、臨時休校となってしまった。
だから俺は労働に励むことはできず、天音からお金を出してもらっていた。住む場所さえも。
「いつもすまないな、天音」
「いいの。今って、大変な時期でしょ。みんな困ってる」
「そうだな。入院中の女子もいるし」
「うん。だからね、今は助け合うべきだと思う。それにね、今日は早坂くんを独り占めできる日だから、すっごく楽しみなの」
テンションを上げる天音は、俺の腕に抱きついていた。
こんな状態で街中を歩くのは危険だが、一応変装はしてある。帽子、サングラス、マスクと完璧だ。
「久しぶりに二人きりだよな」
「だからね、今日はいっぱいデートしようね」
「約束だったもんな」
「覚えてくれていたんだ」
「当たり前だろ。天音とデートとか、絶対したい」
「良かった。……じゃあ、夜は楽しみにしておいてね」
「え? 夜?」
「ラ、ラブホ……連れていくから」
顔を真っ赤にして、とんでもないことをいう天音。女の子の、しかも女子高生からそんな言葉が出てくるとは思わなかった。
アイドルが言っちゃダメだろ!?
とはいえ、今はアイドル業は休止中。というか、引退も視野に入れているようだ。そりゃ、こんな大騒ぎになっていればなぁ……致し方ない。
とりあえず、駅前にある喫茶店へ入った。
チェーン店だから入りやすいし、コーヒーも最高に美味い。食べ物もメニューよりもボリュームがあって食べきれない量で有名だ。
「コマダ珈琲っていいよなあ」
「あ~、ここかぁ。美味しくて量も凄いよね」
「天音、入ったことあるんだ」
「もちろん。カフェ好きなんだ」
丁度良かった。
天音ほどのお嬢様となると、こういう場所だと満足できないかと思ったが、普通に利用していたとは。
入店すると、雰囲気の良い内装が出迎えてくれた。それとスタッフのお姉さん。
「いらっしゃいませ。二名様ですね。ご案内いたします」
俺たちは連れられ、席へ向かった。
向かい合うように座り、さっそくメニューを手にした。
「天音はどれにする?」
「わたしはいつもコーヒーとクロノワール」
「ああ、チョコクリームたっぷりのアレか。美味いよなぁ……じゃあ、俺も同じものを」
同じものを注文し、あとは待つだけ。
「ところでさ、これからどうする?」
「北上さんは、また島へ行きたいってさ。財宝を入手したいようだ。俺も賛成だけど」
「やっぱりそれか~。わたしも賛成かな。だって、お金があれば一生遊んで暮らせるもん」
それもそうだ。いくら天音が金持ちと言えど、限界はあるだろう。みんなを養えるほどの力はないはずだ。
なら、自力で稼ぐしかない。
となれば、キャプテン・キッドの財宝を探しだして売るしかない。
残された道はそれしかないような気がしていた。
「こうなったら、やるしかないよな」
「そうだね。島へ戻るのはちょっと嫌だけど、でも、今回は訓練もしているし、装備だって集めているもんね」
そう、ここ一週間は北上のスパルタ教育を受けていた。軍人の本物の訓練だ。あまりに過酷で悲鳴を上げている女子もいるが、財宝の為とみんな厳しい訓練に耐えていた。俺もそのひとりだった。
更に装備だ。
銃は所持できないので、ネイルガンを改造することになった。千年世がたまたまゾンビ映画を見て思いついたのがキッカケだった。
あとは合法的に集められるアイテムだ。
準備は着々と進んでいた……。
【続く……予定です。応援よろしくお願いします】
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます