制服姿の織田姉妹と合流

 大木を設置できた俺は、再び洞窟へ。

 天音と楓と合流し、そのまま財宝部屋へ向かった。今度は、北上たちにこの事を知らせねばならない。


 来た道を引き返し――歩くこと三十分以上。


 ようやく財宝部屋へ戻れた。


「……! 早坂くん、天音さん、楓……戻られたのですね」


 唯一起きている北上が、こちらの気配に気づいて歓迎してくれた。他の女子たちは疲れて寝ているようだ。


「無事に戻ってきた。出入口を発見したんだよ」

「なんと、それは驚きです。爆破をしたのです?」

「いや、森に通じる穴があった。そこで……いや、みんなを起こそう。全員に聞いてもらうべきだ」


「分かりました」



 寝ているみんなを起こした。



「おはよ~。戻ったんだね」

「よく寝たぁ」

「……頭痛い」



 みんなポケポケしちゃって可愛いな。

 起きて貰ったところで俺は、同級生の田中とアキラが潜んでいたこと。田中は抹殺したことなどを話した。



「そうだったんだ。アキラってヤツは生きているんだ?」

「いや、あのケガだから無事では済まないはずだ。多分、もう……」


「そっか。じゃあ、脅威は軍人だけかな」

「ああ、今のうちにお宝を運び出そう」


 そう提案すると草埜がこう言った。


「でもさ、島から出られないんだよね」

「大丈夫だ。すでに千年世を通して織田姉妹に連絡済み。本州から助けが来てくれるはずだ」


「おぉ!」


「だから、今のうちに財宝を運べるだけ運ぶ。で、埋めて隠しておくんだ」



 みんな俺のプランに乗ってくれるようだ。

 現時点で持てるだけのお宝を持ち、俺たちは財宝部屋を出た。そのまま森へ続くあの道へ向かったんだ。



 * * *



 財宝を運び出し、外へ出た。

 森へ戻り、全員が安堵していた。



「久しぶりの地上だ~!」


 千年世が楽しそうに手を広げていた。



「そうだね、千年世ちゃん。洞窟内はジメジメしてるし、暗いし、も~ヤダ」



 本当に嫌だったのか草埜は泣きそうになっていた。気持ちは分かる。

 それから、みんなで穴を掘ってそこへ財宝を埋めた。この作業を何度か繰り返していく。全部を持ち帰らないとな。


「ふぅ、でもさ。まだまだ沢山あるよ。これ、何日掛かるんだろう」

「そうだな。天音。あの量だから……本気を出しても最低三日、五日は掛かると思う」


「そ、そんな……」


 しかも、北上が重症を負っているからなぁ。

 そんな中での作業は効率も多少落ちるだろうな。だが、救援も直に来るはずだ。


 財宝の運搬を続けようと思った時だった。


 ポケットに閉まってあるスマホが振動した。



 ああ、そうか。

 ここなら電波は届くんだった。

 スターゲイザーシステムの範囲内か。



「メッセージがたくさん溜まってる。リコからだな」

「そっか! ここならネットできるんだ」

「その通りだよ、大伊さん。俺がリコに電話する。待っていてくれ」



 俺は直ぐに電話を掛けた。

 しばらくするとリコと繋がった。


『――啓くん!? やっと電話が繋がった……大丈夫?』

「いろいろあってね。リコ、こっちは大丈夫だ。ただ……」


『ただ?』


「北上さんが肩を撃たれて重傷だ。敵に民間軍事会社が現れた」


『み、民間軍事会社!? まさか、ホワイトウォーター!?』


「なんだ、知っていたのか」

『そりゃそうだよ。こっちはこっちで調べていたから』



 そうだったのか。しかし、まさかホワイトウォーターの名が出てくるとは思わなかったな。もしかして、ネット界隈で話題になっているのかな。



「ところで、リコたちは本州か?」

『ううん、今はそっちに向かってるところ。飛行機が墜落したんでしょ?』

「織田姉妹から聞いていたのか」

『そそ。あと一時間以内には到着するから』


「マジか! 早いな」


『善は急げってね。だから、財宝の準備しておいてねー!』

「分かったよ。出来る限り運び出す。また連絡くれ」

『らじゃー!』



 電話は切れた。

 このことをみんなにも伝えた。



「――というわけだ。一時間以内にリコが来る」

「となると、早くしないとですね」

「全部は無理だ。時間が無さすぎる。けど、織田姉妹とリコたちの手伝いもあれば……一日でいけるかも」


「そうですね、そこに懸けてみましょう」



 北上はにっこり笑った。

 今は人海戦術でいくしかないだろう。


 その時までは、俺たちだけで可能な限り運び出す。



 * * *



 ――あれから三十分後。

 運び出せた財宝はかなりの数に上った。土嚢袋でいえば、十袋となった。金銀や金の延べ棒が大量すぎて大変だ。


 財宝はまだまだ眠っている。


 キャプテン・キッドってヤツは、あんな奥地に大量の財宝を保管したとか、溜め込み癖でもあったのかもしれない。

 それとも、よっぽど隠しておきたかった理由でもあるのだろうか。今となっては分からないままだが。



「……こんなところか」



 リコたちが到着するであろう一時間ギリギリまで宝を運び出した。かなりの重労働だった。おかげで俺も含めて全員が汗を流してクタクタだ。



「いっぱい運びましたね。参加できなくて申し訳ない」

「責任を感じる必要はないよ、北上さん」

「しかし……」


「いいんだよ。この先には幸せがあるはずだから」



 そうだ、みんなと一緒に幸せを掴む。その為に、ここまで頑張ってきた。だから……。


「そうですね、もうすぐお金持ちになります」

「ああ、無事に帰れたら乾杯しよう」



 直後、茂みがガサゴソと動いた。……まさか軍人が!?


 みんなで警戒していると、そこから現れたのは織田姉妹だった。



「お久しぶり」

「ただいま合流いたしました」



「び、びっくりした。双子だったか」



 月と星は、なぜか制服姿だった。なぜに、高校の制服なんだか。



「月ちゃんに星ちゃん」

「どうも、天音さん。わたしたちが来たからにはもう大丈夫です」



 なんだか自身満々だな。



「よろしくね」

「はい。よろしくです」



 あとはリコたちを待つだけだ。

 財宝はいつでも掘り返せる位置にあるし、万が一の戦闘が起きても埋めて隠せる。


 軍人たちに見つからないといいのだが……む?

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