洞窟脱出! チェーンソー男のDIY

 俺はアキラの元へ向かった。

 しかし、岩陰にはヤツの姿はなかった。


 しまった、逃げたのか……!



「アキラってヤツ、どこにもいないよ!?」



 天音も一緒になって探してくれる。どこだ、どこへ行った!? あの足では、そう遠くへは逃げられないはずだけど……。


 楓もキョロキョロと周囲を探してくれているが――だめか。



「見失った。まあいい、あの傷なら助からないだろ」

「探さなくていいの?」

「血を流していたし、勝手に自滅するんじゃないか」

「そうだね、結構な傷だったし」


 周囲を警戒しつつも、楓は納得してくれた。


「天音もそれでいいか」

「発見したら対処するしかないね」

「今はそうしよう。それより、ロープだ」



 地上の森から垂れているロープ。これを登れば出られる。ちゃんと固定されているかチェックすると、無事だった。登れそうだな。


 よし、試しに地上へ上がってみるか。


「の、登るの?」

「確認するだけ。天音たちはそこにいてくれ」

「分かった」


 俺はロープに掴まって、どんどん上がっていく。洞窟からは約五メートルってところかな。転落すれば骨折はするだろう。気を付けていかないと。


 でも、一度登っているから、あの時の要領でいけば――よし。


 十分も掛からず地上へ出られた。


 久しぶりに緑を見た。


 周囲は静かで自然の音しかしない。……人の気配はないな。こっちはまだバレていないらしい。


 あの田中とアキラがいたけど、アイツ等がいただけかな。


 しかし、ロープで上り下りが大変すぎるな。

 自作してハシゴを作る必要がありそうだ。となれば、俺がやるしかないか。


 洞窟の中で見守る天音と楓。

 俺は二人に対し「ハシゴを作るから、待っていてくれ」と伝えた。


「え、でもっ……」

「天音、安心しろ。楓が守ってくれるさ。そうだろう?」


 話を振ると楓は、胸を張って応えてくれた。


「もちろんだよ。天音さんの護衛は任せてちょうだい! アキラが現れたら瞬殺してやるさ」


 なんと頼もしい。

 ……さて、俺はハシゴを自作する。


 まずは丸太を集めていく。

 できれば、五メートルを超えるものがいいが、そんな都合の良い長さのものはないだろうな。


 木を切り倒すしかないか。

 この森の木々は五メートルを優に超える高さだ。


 一本図太いのを倒せれば吊り橋になるな。



 あの洞窟は少し傾斜になっているから、図太い木を斜めにぶっ刺せば上り下りが可能になるだろう。そのプランでいくか!



 となれば、あとは木をどうやって切断するか。



 斧があればいいのだが、生憎、銃と爆弾しかない。……爆弾か。これでいけるが、軍人たちに勘付かれる可能性があるな。爆弾は使えないか……。


 いやだが、手っ取り早くいくならC4か手榴弾でドカンとやるのがいいだろう。


 どうにかして使えないものか。



 悩んだ挙句――爆弾の使用はやめた。リスクが高すぎるな。なるべく音を出さずに木を切り倒したい。



 そうなると斧とかナタが欲しい。

 飛行機へ行ってみるか。



 俺は森の中を突き進み、飛行機の墜落した現場へ向かった。道はそれとなく覚えている。ここから十分ほど歩いた場所だ。


 茂みを進んでいくと、プライベートジェットの残骸が見えてきた。



 ここだ。



 なにか装備が残っていないかと地面を探す。

 ん~…ゴミしかないな。



 探すこと五分。

 飛行機の荷室らしき場所を見つけ、持ち出せなかった装備があった。

 おぉ、残っていたんだな。


 斧もあった。

 薪割り用のヤツだ。だが、それよりも、もっと良いものを見つけた。



「マジか。チェーンソーあるじゃん。気づかなかったな」



 恐らく、マーカスの持ち物だろうな。

 俺はチェーンソーを持ち、再び洞窟前へ戻った。



 さっそく、スーパーキコリタイムだ。



 良さげな木を見繕い、俺はチェーンソーを起動した。ぶるんぶるんと激しくチェーンが回転する。


 俺の知識によれば『追い口切り』という方法がある。まず、受け口に三角形の切り込みを入れるんだよな。で、追い口に更に切り込みを入れると、受け口側に木が倒れるってわけだ。



 まずは受け口に三角形を作る。



 俺は慎重にチェンソーで切り込んでいく。……よし、上出来。上手くいった。あとは追い口から切り込んでいけば、木は倒れる。


 スッとスライドさせていくと――。



『メキメキメキ…………バタン』



 と、大木が見事に倒れた。

 おぉ、ちょっと感動した。

 林業もいけるかもな、俺。



 あとは大木を洞窟へ差し込むだけだ。重労働だが、押していくしかない。だが、普通に押していたら大変なので、木の下に丸太を敷いていく。それをローラーコンベアのイメージで並べていった。


 こうすれば、比較的楽に大木を運べるというわけだ。



 三十分ほどで仕事を終え、あとは押していく!



 気合を入れて俺は大木を流した。

 ローラーコンベアの丸太が見事に功を奏して、簡単に進んでくれた。あっさり洞窟まで運搬でき、あとはぶっ刺すだけ。


 気合で洞窟へ落とした。



『ズドン……!』



 少し音が響いて、下にいた天音と楓が何事かと顔を出した。



「よう、二人とも。これで上り下りが楽になったぞ」



「え、ええ!? 早坂くん、凄すぎない!?」

「こんな大木をよく切り落とせましたね……ていうか、運べましたね」



 二人ともビックリして俺を見ていた。

 ふっふふ。

 もっと褒めてくれ!


「ああ、ちょっとチェーンソー男になっていた」

「ま、まさかぁ~」

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