お姫様抱っことキスのチャンス
ツルハシを使い、地面をガンガン砕いていく。
これが意外にも砕けた。
三十分ほど作業すると、汗だくになった。
「ふぅ、あと少しだ。もうすぐで地下に通じる穴が出来る」
「啓くんはお休みください。あとはあたしが」
「いいのか、北上さん」
「大丈夫ですよ。あたしは体力ありますので」
残りは北上にやってもらうか。
ツルハシを手渡し、俺はタオルで汗を拭った。
まさか、無人島に来て土木作業的なことをするハメになるとはな。
しばらくすると、砕いていた地面が貫通した。
やっぱり、地下に通じていたんだ。
「おぉ、早坂くんも北上さんもお疲れ」
天音から水を貰って、俺は喉を潤した。さすがに重労働だった。こりゃ、労働手当を貰わないといかんな。
なんて冗談はさておき。
地下があったか。
「……マジであったね。早坂くんの脳内地図って本当だったんだ」
「なんだ、信じていなかったのか大伊さん」
「まあね。私は半信半疑だった」
「それもそうだよな。でも、本当にあったろ」
「うん。今なら信じられるよ。さすがだねっ」
なんだか褒められたようで、俺は嬉しかった。琴吹や草埜も俺を見て目を輝かせていた。
こう女子に注目されると照れるな。
「さて、ロープを外の木に固定して垂らそう」
「そうですね。トーチカの覗き穴の向こうに丁度良い木がありますから、そこにロープを巻き付けてしまいましょう」
その作業を北上に任せた。
直ぐに完了して、いよいよ地下洞窟へ。
「暗くて怖いなぁ」
ぽつっと言葉を漏らす琴吹。
不安でいっぱいだな。俺もだけど。
「それじゃ、俺が先にいく。みんなは後に続いてくれ」
「先行してくれるんだ。早坂くん、カッコイイ~」
「どうも、草埜さん」
照れ隠ししながらも、俺はロープを跨ぐ。……下、真っ暗闇なんですけど。
海賊たちはこの穴を掘って地下洞窟に財宝を運んだのだろうか。確証はないけど、地図はここを指していたんだ。間違いはないはず。
ここからはヘッドライトを点灯。
周囲を注意深く警戒しながら降りていく。
……やっぱり洞窟か。
「下まで降りれた。約五メートルってところか」
『了解です。今から天音さんたちを降ろしていきます。あたしは最後に』
「分かったよ、北上さん。俺は下で女子たちを受け止める」
そう伝えると、さっそく天音が降りてきた。まさかの二番目か。
ロープを使ってゆっくりと降りてくる天音。
かなり慎重だ。
だが、手足が震えている。
大丈夫なのか……?
「は、早坂くん……怖いよぅ」
「下を見るな、天音。ていうか、五メール程度だから、そんなに高くないぞ」
「高いって! あぁもう……暗いし、湿っぽいし……」
ぐちぐち言いながらも天音は降りてきた。
「そろそろ手を離していいぞ。俺が受け止める」
「ちゃ、ちゃんと受け止めてよ」
「俺を信じろ」
「うん……」
ロープから手を離す天音。
俺は腕でキャッチした。
オーケー、上手くいった。
天音を一時的にお姫様抱っこする形になり、俺は少し頭がぼうっとした。
「天音……」
「はぅっ! 早坂くん、これは想定外だったね……」
顔を真っ赤にする天音は困っていた。
抱えながら立ち尽くしていると、上から指示を仰ぐ声が響いた。
『あの~、天音さんはまだですか?』
「あー、すまん。もう少し掛かる」
『了解しましたが、早くして下さいね』
「あと少しだ」
あと少しだけ天音を堪能したい。
「天音……」
「早坂くん……今なら少しだけキスできるよ」
天音から誘ってくれた。
嬉しすぎるが、上を待たせるわけにはいかない。
このお姫様抱っこで十分だ。
次に大伊さんを降ろし、続いて琴吹……草埜と受け取った。後は北上だけだ。
「北上さん、あとは君が最後だ」
『ええ――むっ!』
いきなり銃声のような音が響いて、俺は背筋が凍った。まさか、もうプロ集団が嗅ぎつけてきたのか……!?
「北上さん、大丈夫か!!!」
『なんとか撃退しました。すぐに降りますが……その前にトーチカを爆破します』
「マジかよ!! ダイナマイトを使う気か!!」
『三十秒後に爆発するようタイマーをセットします』
時限式か!!
降りてくる北上を俺はキャッチ。直ぐにダッシュで奥へ向かう。
次の瞬間――。
『ドオオオオオオオオオオオオオオオオォォォ…………!!!!!』
凄まじい轟音が響いて、トーチカのあった場所は崩落した。いくらなんでもやりすぎだが、しかし敵が向かってきたのでは……仕方ないか。あれだけメチャクチャになったのだから、もう塞がってどうしようもないはずだ。
しばらくは安全と言えよう。
さて、どこへ進むべきかね。
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