便利なアイテム大量ゲット! スマホの充電も可能になった

 森の方がガサガサしていた。

 もしかして……動物か? と身構えていると、それは天音たちだった。


 そういえば、風呂(海水浴)へ行ってくると言っていたっけ。


「ただいまー!」

「な、なんだ。天音か」

「ん? どうしたの?」


 北上から告白されていたなんて言えるはずもない。

 悟られるわけにはいかないので、俺は気持ちを即座に切り替え話題を変えた。


「い、いや……なんでもないよ。それより、体はスッキリしたか」

「うん。この通り、服装も変わったよ」


 よく見ると、天音たちはジャージに着替えていた。うちの学校のヤツじゃん。



「そのジャージ、どうしたんだ!?」



 聞き返すと、ほっきーが答えてくれた。



「浜にスクールバッグが複数流れ着いていたんです。中を見たら、ジャージとか下着などの着替え、筆記用具や裁縫セット、救急セット……お菓子とか、その他にも漫画や小説、便利な道具らしきものも色々出てきました」


「おぉ!! 他の生徒の持ち物か。ありがたく使わせてもらおう」



 さっそく見せてもらうと、スクールバッグは全部で七つもあった。まるで七つ揃ったらどんな願いでも叶うアレみたいだな。


 生活レベルがグンと上がる予感!


 暇つぶしになりそうな漫画とか小説もあるとか……こりゃいい。


 他にも細かいアイテムがあるようだ。あとで精査しよう。



「へえ、いいな。ジャージは余ってないの? 俺ずっと学生服でさ……いい加減にラフな格好したかったんだよ」


「早坂くんの分もありますよぉ」



 ほっきーが取り出してくれた。


 ズボンの方に『天音』の文字が刺繍ししゅうされている。

 ……あれ、これは……天音さんのでは。


「なあ、天音」

「な、なによ……」


 顔を赤くしてモジモジする天音……って、まてよ。よぉぉぉく見たら、天音が着てるジャージって、俺のだ!!


 ズボンに『早坂』の苗字が刻まれている。


 ……マジっすか。


「それ俺のジャージ……」

「う、うるさいな。いいでしょ、別に」


 すっごく恥ずかしそうに天音は視線を外す。……つまり、俺は天音のジャージ着ろと。そう解釈してよろしいのだろうか。


 多分良いんだろうな。


 でも、サイズ合うのかな……。


 天音の体型かなり細いし、困ったぞ。

 ……まあ、多少伸び縮みするし、なんとかなるかな。


「じゃあ、遠慮なくジャージを借りるよ」

「大丈夫よ。早坂くん、太ってないし、イケるって」

「キツかったら交換してくれよ」

「その時考えるよ」


 他にも何かないかとバッグを漁ってみる。

 すると千年世がニヤッと笑っていた。

 なんだ、この小悪魔スマイル。


「早坂くん、良いモノ見つけましたよ~」

「ほぉ? 言ってみろ」


「じゃーん! モバイルバッテリーです! ちゃんとケーブルもあるんです」

「おぉ! すげえ! 誰の持ち物か分からないけど、しかもソーラー&LED付きのモバイルバッテリーか。こりゃいいッ! 最強のアイテムだ」



 これがあればスマホの充電ができるぞ。

 しかもソーラー付き。

 小型なので発電能力はそれほどないにしても、太陽光を使ってモバイルバッテリー自身を充電できる。


 容量は『15000mAh』もある。

 満タンなら、スマホを4,5回はフル充電できるぞ。


 なんて神器だ!



「え~、ほんと! わたしも充電したい」

「そうか、天音のアイフォンは無事だもんな。先に充電する?」

「ううん。早坂くんがお先にどうぞ。ライトいっぱい使って残量ないもんね」


 そうなんだよね。

 俺は今まで散々ライトとして代用してきた。


 おかげで電池残量は30%を切っていた。いよいよ電池切れも覚悟していたのだが、ここで最強のアイテムが登場してしまった。


 モバイルバッテリーがあれば、悩む必要もないな。


「悪いな、天音」

「いいよ、いいよ」



 獲得アイテムの件は、いったん後にした。


 先に飯だな。


 今日は、リコが採ってきたらしい怪しいキノコを……え?



「キノコぉ!?」



 リコが採りだしたのは“卵の形”をした白いキノコだった。


 俺はそれを見てゾッとした。


 俺の無駄知識トリビアが直ぐにそれを『タマゴタケモドキ』だと認識したからだ。


 まさか、そんなモンがあったとは!!



「これ、卵みたいで可愛くない~?」

「ちょ、リコ! それは猛毒キノコ・・・・・だぞ」


「……へ。ええッ!? も、猛毒なの、これ!!」

「ああ……『タマゴタケ』の方なら食用なんだが、そっちは猛毒キノコ。間違いないよ」


「そんなぁ……」



 がっくしと項垂れるリコ。

 素人ではキノコの判別はまず不可能だ。大体食用は難しいから食わない方が安全だ。ほとんど毒キノコだからな。


 俺はその昔、炎のように燃える『カエンタケ』に魅了されて毒キノコを調べまくった時期がある。その時の知識が役立ったな。


 ……あぁ、でも『タマゴタケ』は一度食ってみたいな。美味くて料理にも使えるようだし。



「余りの魚と……蛇でも食べよう」

「へ、蛇は遠慮しておきます……」



 すっかり意気消沈したリコは、トボトボと歩いて焚火の前に座った。みんなも続くように向かう。



「俺はもったいないから蛇を食うよ」

「勇気ありますね、早坂くん」

「北上さん……良かったら食うかい」


「あたしは遠慮しておきますね」


 某先生風に言わんでも……。

 ええい、仕方ない。

 貴重な食糧だからな、俺が食うさ。


 これ以上は鮮度も下がっていく一方だ。俺は別の場所で蛇を捌き、肉に加工した。



「……こんなところか」



 肉になってしまえば、蛇とは分からない形状となった。

 枝を串代わりにし、ぶっ刺して串焼きにする。


 ――だが、女子たちが嫌がっているんだよね。



「……早坂くん、それ……」

「天音、そんな目で俺を見るな。俺だって勇気を出して捌いたんだぞ」

「ま、まあ……お肉になっちゃえば分からないけど、形の名残が……」


「魚だって内臓取ったりしないと食えないだろ。それと一緒だ」

「それもそうだけど、慣れの問題かな」


 魚はまだ普通に料理として出てくるから、違和感はない。けど、普段は蛇なんて食わないからなあ。ニョロニョロでキモいし。


 だが、自然と向き合うとは、こういうことなのだ。グロいだとかイチイチ気にしていたら、生き残れない。


 俺は、なるべく女子たちから距離を取り、蛇肉を焼いていく。


 じゅうじゅうと音を立て、良い感じに表面が焼けていく。おぉ、これなら直ぐ完成しそうだ。



「飲み物です、早坂くん」

「ありがとう、北上さん。木製のコップ、人数分作ったんだ」

「暇さえあれば作っていますので。水もだいぶ確保しやすくなりましたからね。もちろん、煮沸消毒済みです」


「ありがとう、助かるよ」



 礼を言うと、北上は顔を赤くしていた。

 見つめ合っていると天音が介入し、俺の袖を引っ張った。



「早坂くんは、わたしと一緒にいればいいの」

「ちょ、天音……」


「いいのいいの。ピッタリくっついて」

「……近すぎるって」


 肩と肩が触れ合っている距離だ。

 北上も肩をくっ付けてきた。


 俺、天音と北上に挟まれてしまった……。


 二人とも目線でバチバチしているなあ。頼むから、仲良くしてくれよ。



 俺は焼けた蛇を食べながら、そう思った。



 お、美味い……鶏のササミっぽいな。あっさりしていて美味しいじゃん。

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