道具収集と謎のアイテム
俺は止めようとしたが、北上は忍者のように素早く動いて天音を襲った。
……いや、横を素通りして洞窟の壁にナイフを突き立てた。
「きゃっ!?」
思わず叫ぶ天音だが、刺されたわけではない。
よく見れば、北上は何か小さなものを刺していた。
「危なかったですね、天音さん」
「へ……?」
北上のナイフには、
とはいえ、ここがどんな島なのかサッパリ分からんのだが。
いや、だが……待てよ。
確か……俺の
多分そうだ。
ということは、この島は……
もともと俺たちの学年は『屋久島』へ観光するつもりだった。
……けど。
う~ん……今考えるのは止そう。
「良かったな、天音。サソリの毒は死んだほうがマシなくらいヤバイらしいからな」
「そ、それってマジなの、早坂くん」
「テレビの受け売りだけどね」
「そ、そっか……。ありがとう、北上さん……わたし、ちょっと誤解してた」
天音は助けられたことに感謝していた。
一方の北上はサソリの尻尾を切り取っていた。
穴を掘り、地面へ埋めていた。へえ、ちゃんと毒を処理するとはな。
「いえ、早坂くんの言う通りです。揉めている場合ではないですね。
それに、このような自然豊かな島には、危険な動植物がたくさんいますからね。お互い助け合っていきましょう」
気が変わったのか、北上のヤツ、妙に素直だな。
意見が一致したところで、海辺を目指した。
また片道十五分ほど歩き続け……海。
あれから結構時間が経過して、日が傾き始めていた。まずいな、早めに寝床の準備もしないと、夜は寒いはず。
「天音、北上さん二人とも聞いてくれ。海へ到着して早々で悪いけど、材料集めを分担しよう」
「えぇ……わたし、一人は嫌だよ」
「分かっている。だから、北上さん……悪いんだけど、ナイフ持ちの君に乾いた枝とか草木を集めて欲しい。焚火と寝床に使いたい」
腕を組み冷静に俺を見つめる北上。
そう凛々しくされると……反応に困る。
「分かりました。ナイフを持っているあたしにお任せください。枝を切ったりするにはナイフで作業する方が効率が良いですから、請け負います」
「助かる。こっちはペットボトルとか探すよ。なにか容器があれば水を溜められるし、料理に使ったり、食べ物を備蓄できるからね」
「二人ともお気をつけて」
北上は、涼しい顔で去っていく。
サバゲーマニアらしいし、多分、北上は一人でも大丈夫だろう。さっき、サソリも一突きにしていたし、あれは只者ではない。
「北上さんって、なんか変わってるね」
「そうだな、天音。多分、あれは彼氏とかの影響じゃないか? 普通、女子高生がサバゲーなんてするか? 別に偏見ってつもりはないんだけどさ」
「彼氏? いないと思うよ」
「なんで分かる」
「分かるよ、同じクラスだもん。普通に話すから」
それもそうか。
俺がぼっちすぎるだけの話だった。くそぅ……。
女子と話すのが今日が初めてだなんて言えないな。
悲しみを心の奥底に閉まって、俺はプラスチック製品を探した。
ペットボトル、お菓子の袋、カップ麺の容器でもいい。なんだったら、
「浜に流れ着いたものを探すんだ」
「了解。わたしは向こうを探すね」
「使えるものは、なんでも拾ってくれ」
一時間後――
洞窟へ戻り、拾ったものをそれぞれ確認した。
まずは、北上。
「あたしは、枝をかなり拾いましたよ」
固いヒモ状の植物をロープ代わりにして見事に枝を
大きな葉っぱや枯れ葉もきちんと収集してくれている。これを地面に敷けばマットレスの代わりになる。
「俺は、空のペットボトルを二本を見つけた。あと漁船の網も発見した。少し壊れているけどね。でも、これは奇跡だよ」
天音は拍手しながら「おぉ、早坂くんやるね~!」と称賛してくれた。北上も「網があれば、網漁ができますね。凄いです。うん、感心しちゃいました」と絶賛。
俺はとても良い気分になった。
可愛い女の子から褒められるってこんな嬉しいのか。知らなかったな。
学校では退屈な毎日だったけど、この無人島に来てからは俺は楽しくなっていた。
もしかして、サバイバルの才能があったのか、俺。
「じゃあ、最後にわたしだね」
「天音は何をゲットしたんだ?」
「うん……実は」
「実は?」
「なにも拾えなかったよおおおぉぉぉ…………」
ダバ~っと滝のように泣いてしまった天音さん。
なにも拾えなかったんか~~~いッ!
うそでしょ!?
あんなに歩き回って収穫ゼロだと……仕方ないけど、貝殻でも拾ってくれたら嬉しかったがなぁ。
「おいおい、天音。なにも拾わなかったの?」
「う~ん……実は、なにもってワケでもないんだよね」
「なんだ、一応なにか入手したのか。なんだよ」
スカートのポケットに手を突っ込む天音は、なにか取り出した。
な、なんだこのガラクタ……?
って、なんで
ありえねぇ!!
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