おわりに

 私の愛した地下鉄烏丸線、そこに走る緑帯の車両10系は、次年度以降少しずつ、新型車両20系に置き換えられる。思えば私は鉄道というものに抑圧して以降、数多くの自分が好きだった鉄道の引退をメディアでしか見ていなかった。小学生のころに一番好きだった大阪環状線の103系は、いつの間にか新型車両に代わった。だからこそ、今度は引退する前にこっそり乗ってみようか。彼の写真は私の抑圧を解き放ち、こんなメッセージを提供してくれたような気がしたのだった。


 私のかつての記憶の中にだけある、東海道線の201系や阪神8000系、そして京都市営地下鉄10系のすべてがもう変わってしまった。そんな変化を目のあたりにするとともに、私は時代の大きな変化と不可逆的な歴史を感じざるを得なかった。鉄道もここ数年で大きく変わった。そして「オタク」という概念も大きく変わった。であるなら、今まさに問題となる「撮り鉄」的オタクの問題行為も、もはや変わらざるを得ない。これまでの在り方に「さよなら」を告げる方法、その形は、きっと長谷川大貴の写真が提示している。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る