第15話 『魔女の夜会』

 ブラッドムーンが浮かぶ夜は、もうすぐそこだった。

 赤い満月、魔女たちはその夜に好んで夜会に参加する。普通の満月の夜にも魔女だけの夜会は行われているのだが、ブラッドムーンの夜だけは特別だった。

 自分たちの瞳と同じ赤い色をした満月に心が騒ぐ為か、普段参加しない魔女もこの夜だけはふらりと寄る。

 空飛ぶホウキに乗って、断崖絶壁の上に建てられた魔女だけが出入りを許される場所。

 参加条件は2つだけ。

 魔女であること、そして空飛ぶホウキに乗って来ること。



 ***



 魔女の夜会に参加する為にニコラとルーシーはホウキを片手に外へ出た。

 春が近いというのに、ここ万年雪の降るスノータウンではまだ春の息吹を感じられないほど寒い。夜会が開かれる会場はホウキで飛んで行って約3時間かかる場所にあるらしい。

 長時間乗っていられるようにルーシーはここ数日の間、魔女の修行のほぼ全てをホウキの練習に費やしていた。もちろん目的は今年のブラッドムーンに行われる魔女の夜会に参加する為だ。

 その夜会に恐らく参加するであろう聡慧の魔女ライザに会う目的があるので、ニコラもホウキの練習に力を入れてくれた。そうしなければルーシーの特性がわからないまま修行の方向性を見定めることが出来ないのだとニコラは言う。

 氷の魔女なのだからてっきりルーシーも氷の魔女になる為に修行をしていくものだと思っていたが、魔法の特性によっては向き不向き、得手不得手があるらしく、魔女の修行を受けるには欠かせないものらしい。

 もしルーシーが氷属性の魔法に向いてない特性だったとしたら、それまで覚えた氷系の魔法を最大限に発揮することが出来ない、全くの無駄になるわけだ。


「準備はいいね」

「はい、お師様」


 声を掛け合い、まずはニコラがひとっ飛び。

 飛び立つと同時に風が巻き起こり、ルーシーは片手で目を覆う。次の瞬間にはニコラは遥か上空で豆粒のようになっていた。それだけ一瞬であれほど空高く舞い上がったということだ。

 次にルーシーがホウキにまたがり、真剣な面持ちで落下するイメージをした。ニコラがいる上空まで飛び立ったとしよう、もしそこから誤って落ちてしまったらどうだろう。

 もう以前のような雪深い地面はない。クッションになる雪がない地面に叩きつけられて、骨折で済むだろうか。死ぬだろう。どこから落ちて死ぬのか。頭から、背中から、足から、どこから落ちてもまず助からないことは目に見えている。

 そうならない為に、死ぬわけにいかないから、だからルーシーは飛ぶ、ホウキに乗って空を飛ぶ。

 バランスを崩したら落っこちてしまう。そうならない為に、ルーシーはホウキにしがみつく。


「どうだい、飛ぶイメージは掴めたみたいだけど」

「とんでもないです。毎回毎回空から落ちたらどうなるのかっていう、そんな落下のイメージでしか浮かんでくれないんです」

「難儀なきっかけだね。まぁその内、空を飛び回るイメージで浮かぶようになるだろうさ」

「早くそうなってくれることを願います……」


 夜会に参加する為に必要な物は何もない。

 せいぜい空飛ぶホウキがあればいいだけ、それでしか辿り着けないのだから。お金も、招待状も、何もいらない。必要なのは魔女である自分自身。あとは自由だ。

 危険なものでなければお付きの使い魔を連れてきてもいいし、自作の商品を持ち込んでも構わない。

 魔女たちは全員に対して関心があり、そして無関心だ。

 人間が好きであろうが、嫌いであろうが。

 攻撃的であろうが、保守的であろうが。

 誰もが関心を向けているようで、どこか無関心で他人事、それが魔女たちの本性だった。

 魔女の夜会に出てくるお茶や茶菓子はそれぞれが持ってくる。持って来なくてもいい。全てが自由。

 自由で奔放、好きにするのがこの夜会。

 そしてニコラやルーシーも特別何かを持ってきているわけではない。ニコラは申し訳程度にお茶会に出す茶葉と茶菓子、そして手作りの猫のぬいぐるみを持参している。

 飲食物はわかるが、猫のぬいぐるみは一体何の為に持っていくのだろうとルーシーは思っていた。

 訊ねると意外にあっさり答えてくれた。


「知り合いの魔女にね、猫が好きなやつがいるのさ。前にあげたぬいぐるみはもうボロボロになってるだろうから、新しいのをと思って作っておいたんだが。私も夜会に毎回参加するわけじゃないからね。ずっと渡しそびれていたんだよ。多分、私が行くって連絡してあるからその娘も来るだろうさ」


 そう言いながら、どこか寂しげな表情のニコラを思い出す。

 よほどその魔女に思い入れがあるのだろうかと、ルーシーは心がなぜか重苦しく感じて不思議に思う。ニコラが誰とどんな付き合いをしていようがルーシーには関係のないことだ。

 それこそ弟子だからといってそこまで干渉するつもりはない。たかが弟子が師匠の交友関係にまで首を突っ込んでいくのはおかしいものだと自覚している。しかし猫のぬいぐるみを大事そうに肩下げバッグに入れるニコラの姿を見ていると、なぜか胸の奥がもやもやしていた。

 この感情を例えるなら、そう。まるで妹のソフィアが誕生日パーティーでたくさんのプレゼントに囲まれ、笑顔でご馳走を食べている姿を遠くから眺めていた時と同じような感覚。

 それに似ていた。

 だから何だと言うのだと、ルーシーは心の中で1人ごちた。それこそニコラにとっては全く関係のないことだ。ルーシーが1人で勝手にそんな風に感じているだけで、ニコラは何も悪くない。

 だからルーシーは何も言わなかった。追求も、何ていう名前の魔女に渡すのかも、何も聞かずにいたのだ。

 そんな風に1人でぐちぐちと考えていたので、ニコラ以外に話しかけられていることにも気付かなかった。


「ねぇってば、君のことだよ、君!」

「ルーシー、ぼうっとしてホウキから落っこちるんじゃないよ!」

「えっ……、あっ……すみません! なんですか!? というか、あの……誰ですかっ!?」


 気付くと自分とニコラ以外にもう1人、並んで空を飛んでいる人物の存在にルーシーは驚いていた。

 突然の魔女、空をホウキで飛んでいるのだから魔女に違いない。それでもつい通りすがりの赤の他人程度の認識でいた自分が恥ずかしい。

 銀色の長い髪を三つ編みにして、風でたなびいている。年齢はまだ若そうだった。若い魔女といえば幽魂の魔女が思い浮かぶが、見た目で判断するなというお達しを受けていたので、実際の年齢は外見だけで断定できない。

 明るい表情、にこやかで人好きするタイプの人間だろう。

 恐らく魔女に対して偏見のない土地で暮らしているのかもしれないとルーシーは直感した。


「エーテルじゃないか、久しいね」

「ニコラに子供がいたのは知らなかったよ」

「違う、この娘は私の弟子だ。名はルーシーという」

「ふ〜んそうなんだ。ま、どうでもいいけど」


 軽い挨拶を交わしたところで、彼女の視線がルーシーへと移る。

 ぎこちなく会釈をすると、相手は笑顔で自己紹介をした。二つ名というのは全ての魔女に付けられるものなのだろうかと、ルーシーはふと疑問に思う。


「初めまして、私は劫火(ごうか)の魔女エーテルっていうの。よろしくね」

「あ……えっと……、ルーシーです。よろしくお願いします……」


 喋り方もぎこちなかったようで、名乗ったルーシーの顔を見ながら何やら物思いに耽ったエーテル。その直後すぐニコラに笑顔で思ったことを口にした。


「なんかこの娘、システィーナに似てない?」

「全然違うよ、どこが似てるっていうのさ」


 また突然知らない人物の名前が出てきて混乱するルーシー。ここはどうせわからないまましばらく会話が続くものなのだろうと、隣で黙って話を聞いた。

 ニコラはそのシスティーナという名前が出た途端に、どこか不機嫌になったような気がした。


「だってほら、喋り方とか。初対面に対してぎこちないとことか。あの娘もコミュ症じゃん? 似てない?」

「誰だって初対面にはぎこちなくなるだろう。なんでも自分と一緒なんだと考えるのは、お前の悪い癖だね」

「ふーんだ、どうせ私は初対面にも長年の付き合いみたいな接し方しますよーだ」


 この感じ、どこかで見たような気がしたと思った瞬間に思い出す。幽魂の魔女ヴァイオレットだ。彼女も初対面のルーシーにやけに馴れ馴れしく接してきたものだ。

 それをルーシーが不快に思ったかどうかは別として、どこの誰だかわからない人物に自分のことを知った風に語られることは、なぜか少し気分が良くなかった。


「システィーナ、どう思うだろうなぁ。ニコラにこんなに可愛い弟子が出来たって知ったらさぁ。泣くかなぁ? それとも落ち込むかなぁ? それをニコラはどう思う? 何を思って連れてきたんだい?」

「全くお前ってやつは本当に嫌な性格しているよ。私は別に何とも思ってないさ。ただ必要だから連れてきた。それだけだよ」

「ふ〜ん、相変わらず氷の魔女様は冷たいなぁ。冷たくって私の炎が消えちゃいそう」  


 それだけ言うと劫火の魔女エーテルはスピードを上げてルーシーたちの遥か先へと飛んで行ってしまった。

 片手で手を振り、一足先にとでもいうように去っていく。


「全く、名前を嵐の魔女に改めたらどうかね」


 呆れたようにそう呟くと、ニコラはルーシーの方に視線を向けることなく聞こえるように声をかけた。


「気にすることはないよ。あいつはああいう魔女なのさ。他にも嫌味を言ったり直接悪口を言ってきたりする魔女もいるが、とにかく相手にしないことだ。魔女の夜会っていうのはそういう癖の強いやつらが集まる場所なんだ。だから私はあまり参加しない」

「私の為、ですか。聡慧の魔女に会う為だから、好きでもない夜会に参加することになったということですよね」

「目的は確かにそれだけどね。遅かれ早かれ1度は連れていくつもりだったよ。お前を、この夜会にね」


 聡慧の魔女のことがなくても、嫌な夜会に参加するつもりでいた。しかもそれはルーシーを連れていく目的だと知って、なぜか少し嬉しく思う。


「1度でも魔女の夜会に参加して、どれだけつまらないものか経験しておくのもアリかと思ったんだよ。私は好きじゃないけど、お前がもし気に入ったというなら次回も参加していいけどね。強制はしない。自由にするといいさ」

「……参加してみてから、決めようと思います」


 ニコラが好きじゃないのなら、自分も好きになれない気がした。

 賑やかで騒がしいことを嫌うニコラ、そしてルーシーも静かな場所が好きだ。まだニコラの好き嫌いの全てを把握したわけではないけれど、どこか傾向は似ているような、そんな気がしていた。


 ホウキにまたがり空を飛び続けるのは意外に体力が必要だった。魔力で飛んでいるということもあり、精神的にも安定していないと真っ直ぐに飛んでくれない。そしてバランス感覚。このバランスをしっかり保っていなければ、風で飛ばされたり、逆さまになったりと。

 ホウキに乗る修行で最長4時間飛んだことがあっても、いざ知らない上空を長時間も飛び続けるという行為は、さすがにルーシーは参っていたようだ。

 そろそろ限界が近付いてこようかというところで、目的地が現れてなんとか着地することに成功する。


「お疲れだったね。これを帰りにもやるんだからしっかり休んでおきな」

「ヒェ……」

「まぁ帰りは途中で休憩してもいいがね。とにかく中へ入ろうか」


 断崖絶壁の上に建てられたとは思えない建物があった。象牙色の建物、どこかの貴族の屋敷のようだ。

 ブラッドムーンとはいえ、月の明かりで周囲が真っ赤に染まるわけではない。

 暗い外とは違い、建物内の明かりが窓から漏れてくる。もうすでに何人かの魔女が到着して、中でお茶会が始まっている様子だった。女性の笑い声、話し声が外まで聞こえてきている。

 ぼんやり建物に見入っていると、後方から次々と他の魔女がホウキに乗ってやって来た。


「こんばんは、ニコラ」

「ごきげんよう」

「あら、珍しいわねニコラ」


 次々と挨拶を交わされ、ニコラは笑顔もなく淡々と返事をしている。そういったところはスノータウンの村人たちと接する時と何も変わらなかった。

 そしてここでもニコラのそんな態度に不快感も何も抱くことなく、淡々と挨拶を交わしては中へ入っていく魔女たち。ニコラに教えられた通り、魔女というものは本当に自分以外に関心がないのだろうと思った。

 先に中へ入っていく魔女の後をついていくと、玄関ホールがすでにパーティー会場になっているようだった。

 あちこちランダムに置かれたテーブルや椅子、ソファー、お茶やお菓子が置いてある大きなテーブル。

 キラキラと華やかな雰囲気で包まれていた。中へ1歩2歩と入って行くと甘い香りがそこら中から香ってくる。

 まるでバニラエッセンスを壁や床に撒き散らしたように。


「今夜はずいぶんと甘ったるい香りにしたんだね」


 ニコラも甘すぎるこの香りが苦手なのか、苦虫を噛み潰したような表情で文句を言っていると、すでにお酒を飲んで酔っ払っている様子の魔女がふらふらな足取りで近付いてきて説明した。


「そうなのよう。今夜のチョイスはバニラのアロマオイルですってぇ。あ、ほら。ディフューザーとかアロマキャンドルもバニラのやつ使ってるみたいよう。おかげでほら、私ってばすっかりもうこんなに出来あがっちゃったぁ!」

「催淫作用ってやつかね。全く、お前の場合は効果てきめん過ぎるだろう」


 絡んでくる魔女を手で払いのけ、ニコラは近くにあった椅子にルーシーも促しひとまず座って休憩した。

 ちょっとしたパーティーのような場に来るのはルーシーは初めてで、思わずじっと様子を窺ってしまう。これは魔女の夜会なので特別正装している者はいなかったが、多種多様な出立ちの魔女は特に目を見張る。

 大きなツバの黒い帽子をかぶっている魔女、露出度の高い衣装に身を包んでいる魔女、やけに化粧の濃い魔女、魔女といえば黒というイメージを脱却した派手な色合いの服装をした魔女など。

 ひとくちに魔女と言っても、共通点は銀髪と赤い目、そして女性という3点のみだ。年齢は全員バラバラに見える。恐らく最年少でこの夜会に参加しているのはルーシーくらいだろう。

 ルーシーが夜会の様子をまじまじ見つめている間に、ニコラは飲み物を取ってきてルーシーに手渡す。


「どうだい、魔女の夜会は。別にダンスパーティーがあるわけでもない。司会者や進行役がいるわけでもない。みんなふらっと入ってきて、飲み食いして、しゃべり倒して、そうして帰って行くだけ。自由奔放な魔女の為の夜会さ。魔女であることという以外縛りのないこのお茶会は、それぞれ自由に過ごすが故に自然にグループが生まれる。シンパシーの合う者同士つるんで、そこから輪が広がったりすれば、小さなコミュニティのままで終わるところもある。私はどこにも属さないようにしてるから、参加する時は適当に挨拶をして、よく話す相手を見つければちょっと話して、それから頃合いを見て出て行くって感じさ」

「本当に自由気ままなんですね。もうちょっとこう……、リーダーみたいな人が中心になって、みんなを囲ってお茶を飲みながらお話しするものだと思ってました。見ているとみんなバラバラに行動してて驚いたというか……」

「魔女を統率しようなんて考えない方がいいのさ。ただでさえたった1人で国ひとつ滅ぼせる力を持つ魔女が存在するんだ。付かず離れず、それが一番賢い生き方さ」


 人間の社交界ですら経験したことのないルーシーは、魔女の世界での社交性を理解することがとても難しそうではあった。しかし人間同士の繋がりに比べれば魔女同士の希薄な関係の方が、もしかしたら自分には一番性に合っているのかもしれないとも思う。

 人間同士で繋がるのは、まだ怖い。そういったコミュニティには必ずヒエラルキーが存在するからだ。

 そしてルーシーはずっとその最下位に位置していた。最下位の苦しみや孤独は痛いほど経験している。

 それなら関係性を強く持たなくていい魔女の方が、ルーシーは気が楽なのかもしれないと思った。現に全員自分勝手に、誰にも阻害されず、過ごしたいように過ごしている。

 これが人間社会での中ならばきっと協調性がないとお叱りを受けているところだろう。

 魔女の才能があるのかないのか、自分には全くわからなかったルーシーにとって、もしかしたら魔女であることの方が自分に向いているかもしれないと思った初めての夜だった。


「あっ、あっ……! ニコラ……だ! やっと、会えたぁ……!」


 舌足らずで、どこか幼さを感じる声にルーシーは振り向いた。

 そこには体と服のサイズが合っていないダブついた服を着ている少女が立っている。

 フード付きの上着は袖をたくし上げないと、すぐまた両手が隠れてしまうほど長い。

 黒いワンピースは裾を踏まずにいられる程度である。

 大きな上着に付いているフードで顔半分が隠れてしまっていて、鼻と口元しか表情が見えない。

 口だけ見ていると口角を上げてへらへらと笑っている少女は、まず袖をたくし上げて手を出すと、フードを上げて顔を見せた。

 歳の頃は12〜16歳辺り、にこにこと笑顔を作ってはいるが困ったように下がりがちの眉尻と垂れ気味の大きな目のせいで、今にも笑いながら泣き出してしまいそうな容貌だ。

 フードを上げて顔を見せてくれるが、完全にフードを取るわけではなく、顔を見せたと思ったらまたすぐフードで顔の半分を隠してしまう。


「ニコラ……、今夜来るって、き……聞いてから……。ぼ、僕も……って思って。その……、また会えて、う……嬉しい……な!」


 恥ずかしそうにもじもじしながら話す少女。

 ぎこちなく、途切れ途切れで話すその姿に、ルーシーはまるで自分を見ているような気持ちになってきた。と同時に、同じ言葉をつい先ほど聞いたことを思い出す。


「お師様、もしかして彼女が……その、さっき言ってたシスティーナさん……ですか?」


 ついニコラに話す時にもぎこちなくなってしまう。

 長く一緒に住んでいる内にニコラにだけは普通に話せるようになっていたと思っていたが、目の前に現れた自分のような話し方の少女を見ていると、ぎこちなく喋っていた自分がつい蘇ってしまっていた。

 ニコラは立ち上がり、フード越しに彼女の頭を撫でる。

 それを見てなぜかルーシーは寂しく感じた。

 なぜこのような気持ちを抱くのか自分でもわからない。当てはまる言葉が見つからないまま、ニコラはダブついた服を身に纏った少女をルーシーに紹介した。


「この娘の名前はシスティーナ。お前が会いたがっていたかどうか知らないが、この娘があの遠雷の魔女システィーナだよ」


 名前を聞いたルーシーは衝撃しかなかった。

 かつて何百人という人間を一夜にして大量虐殺したとされる、知らぬ者は誰もいない有名な魔女。

 遠雷の魔女システィーナ。

 今ルーシーの目の前に、ルーシー・イーズデイルを孤独にする原因を作った張本人が、にこにことした表情で立っていた。

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