第61話

 私達はドラゴンの皮と肉を報酬として貰った。鱗は小さいながらも強度も高く、半透明になっていて装飾品としても人気だという。一部の貴族では希少品であるドラゴンの鱗を高額で買い取り、ドレスに取り入れて財力を誇示する事があるのだとか。


私にはよく分からないけれど、アクセサリーにしてみるのは可愛いかもしれないわ。セットで作って貰おうかしら。


「ファルス、この鱗を使ってピアスと髪飾りとネックレスをセットで作って貰おうと思うの」

「それは良さそうだな。後で手配しないとな」


 私は貰った肉を少し切り分けて折れた枝に肉を刺してからその場で火魔法を使い炙って食べてみた。行儀が悪いのは今更よ?


「美味しいっ!!」


貰った肉全てここで食べてしまいそうだわ。でも、我慢。肉は沢山あるのだからしっかりと家に持って帰ってみんなで食べる。


「相変わらずいい食べっぷりだな」

「アルノルド先輩もいかがです?」

「頂くかな」

「俺も!」


 結局みんなで焼いて食べることになったわ。その場で肉を切り分けて刺したら火魔法でジュッと焼き上げる。私は討伐セットが入っているリュックから塩を取り出し、肉に振りかけて食べる。

もちろん皆の分も塩を振りかけたわよ?みんなは美味しい、美味しいとどんどん肉を焼いて齧り付いている。どれくらい食べたかしら。結構な量を食べてしまったきがするわ。


 それでもドラゴンは大きいのでまだまだ肉は残っているのだけれど。お腹も満足したイェレ先輩は来た時のように魔法陣に魔石を置いて帰る準備を始めた。今回はドラゴン付きなので魔石+魔力を使うみたい。ブルードラゴン討伐で殆ど魔力は使わなかったからね。


 転移してきたのは王宮の魔術師棟前だったわ。転移した先で待機していた騎士団の方々がドラゴンの解体に入ってきた。イェレ先輩は事前に連絡を入れていたのだと思う。


のんびり肉を食べていた私達は申し訳ない気持ちがしたわ。きっとまだかなって待っていたと思う。


 それにしても流石騎士団。魔物解体はお手の物なのね。近衛騎士団以外は魔物討伐によく行くらしいわ。士気を維持するためだとか慢心しないためだとか理由はあるみたい。一般人の私達は騎士団の邪魔してはいけないわよね。


「イェレ先輩、アルノルド先輩。今日は有難うございました。私達はこれで帰りますわ」

「あぁ、有難う。おかげでケガする事もなくドラゴンを討伐出来た。ファルス、明後日は頑張れよ」

「はい!」


私達は肉と鱗の付いた皮を貰い邸へと帰った。


「お嬢様お帰りなさいませ。討伐と聞いていましたが、お早いお帰りでございましたね」

「オットー。今日の晩はこの肉を使って頂戴。余ったら使用人皆に分けて」


 ファルスは玄関ホールで出迎えてくれたオットーにリュックから取り出した大きな肉の塊を見せた。


「お、お嬢様。この肉は……」

「ブルードラゴンの肉よ。倒した後、ちょっと味見したのだけれど、美味しかったわ」


 オットーはドラゴンの討伐と聞いて青い顔をしているわ。まぁ、そうよね。ドラゴンの討伐なんて上位冒険者しか許されていないもの。


 私は部屋に着いてゆっくり息を吐きながらソファへと腰かけた。すぐにアンナが入室し、お茶を淹れてくれる。


「ファルス、明後日は闘技大会でしょう?今日はゆっくり休んで。アンナもいるから大丈夫よ」

「畏まりました。では明後日のために休ませていただきます」


ファルスは一礼をして部屋を出た。


「アンナ、今日ドラゴン狩ってきたんだけれど、これをアクセサリーに出来ないかしら?」


私は十枚ほどの鱗をリュックから取り出してアンナに渡す。


「これは素敵な鱗ですね。マーロア様なら自身で狩ったという強さの証になりそうですね。すぐに装飾品を扱う商会に連絡してアクセサリーを作るよう手配しますね」

「お願いね」

「それにしてもドラゴン討伐だなんてよく旦那様に止められませんでしたね」


アンナは心配そうに聞いてきた。


「オットーにちょっと討伐の手伝いに行ってくるわと伝えただけですもの。もちろんお父様には言っていないわ」

「次からちゃんと報告して下さいね。オットーも母も私も心配なのですから」

「ふふっ。有難う。なるべくは報告するわ」


 そうしてゆっくりとお茶を飲んだ後、食事の時に父から苦言を呈されたのは仕方がない。心配しての事だし、小言を甘んじて受ける事にしたわ。私は明後日ファルスを見るためだけに学院に行く予定。


きっとファルスは優勝すると思うのよね。

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