第三章
第一話 ~お互いの両親に兄妹としての家族ではなく夫婦としての家族になる。と報告をした件~
第一話
美凪と気持ちを確かめ合ったあと、俺たちは手を繋いで自分たちのマンションへと戻って来た。
さて、ここからがもう一つの正念場とも言えるよな。
まぁ、反対されることは無いと確信を持って言えるけど、キチンと話さないといけないよな。
そんな事を考えながら、俺と美凪は自室へ向かってエレベーターに乗り込む。
「少し緊張してきました……その、大丈夫だとは思ってますけどね」
「俺も同じだよ。まぁ、きちんと話せば大丈夫だろ」
話の主導権は俺が持ってやるから安心しろよ。
俺がそう言葉を続けると、美凪はふわりと頬笑みを浮かべた。
「ふふふ。頼りにしてますよ旦那様」
「……辞めろよ、そんな呼び名は」
俺がそう言葉を返すと、美凪は俺の身体をギュッと抱きしめる。
「……最後にもう一度キスしてもいいですか?」
「良いぞ。てか、そんな許可なんか取らなくても断りなんかしないから」
俺がそう言うと、美凪はニヤリと目を細めながら言葉を返す。
「ふふーん!!そうですよね!!これ程の美少女とキスを出来るなんて隣人さんはとても幸せ者ですからね!!幸運をかみ締めてください!!」
「あはは。そうだな俺はとても幸せ者だよ」
俺はそう言って、美凪と唇を重ね合わせる。
柔らかい唇。押し当てられた美凪の女性としての膨らみ。
理性が溶けていくのを感じる。
もっと欲しいと思ってしまう。でもまだ我慢だ。
欲望の全てを彼女にぶつけるのは……まだ、もう少し先だから……
そう思いながら、彼女とのキスを楽しんだ。
そしてエレベーターが目的の階に到着した為、どちらともなく口を離した。
「……好きです。凛太郎さん」
「あぁ、俺も好きだぞ。優花」
微笑みを向ける美凪に俺はそう愛の言葉を返す。
「それでは行きましょうか」
「あぁ、俺たちの家に入ろう」
こうして、俺と美凪は自室の扉を開けて両親の待つ居間へと向かった。
「おかえり凛太郎。それに優花ちゃんも」
「ふふふ。その様子だと『家族』になって帰って来たって感じで良いのかしら?」
居間へと入ると、先程と同じように椅子に座った二人の姿があった。
どうやらテレビを見ていようで、人気のクイズ番組が流れていた。
「そうだな。まぁ詳しく話をしようとは思うからテレビは消してもいいか?」
「構わないよ。凛太郎の話のほうが百倍大切だ」
親父はそう言うと、手元のリモコンでテレビを消した。
そして、俺と美凪は先程と同じように二人の正面の椅子に腰を下ろす。
違うのは俺たちの関係性だな。
そう思いながら、俺は親父に話を始める。
「まず最初に結論から話すから」
「うん。それで凛太郎は優花ちゃんと『家族』になって帰ってくる。そう言って出て行ったね。それはどうなったかな?」
「優花とは兄妹としての家族じゃなくて夫婦としての家族になるよ。それは優花も了承してくれてる」
「そうですね。その……り、凛太郎さんからプロポーズをされました。私はそれを了承しましたから」
美凪はそう言うと、俺が贈ったペリドットがあしらわれたプロポーズリングが填められた左手をテーブルの上に乗せる。
「私は彼と結婚したいと思ってます。その……先程は『凛太郎さんと兄妹になれ』と言われたように感じたので反対して部屋を出て行ってしまいました」
「まぁ、二人が再婚すれば俺たちは戸籍の上では兄妹になる。でも義理の兄妹なら結婚しても問題は無い。多少世間体が悪いかもしれないけど、それは許して欲しいかな」
俺がそう言うと、親父は少しだけ笑いながら言葉を返す。
「僕としては反対する理由がないかな。花苗さんはどうかな?」
「ふふふ。私としても反対するつもりは無いわよ。だって優花に凛太郎くんをモノにしなさいって話をしていたくらいなんだから」
「お、お母さん!!??」
あぁ……あの手紙と似たような内容のことを、花苗さんは美凪にも伝えていたのかもしれないな。
「ちなみに何だけど、住む場所のことも少し考えているんだよね」
「え?どういう事だよ親父」
俺がそう尋ねると、親父は先程と同じように笑いながら答える。
「僕と花苗さんは隣の部屋に住もうと思ってるんだ。凛太郎と優花ちゃんは引き続きこの部屋を使って貰おうかと思ってるんだ」
「な、何でだよ!!??」
ど、どういう事だよ。親父も花苗さんも戻って来たのなら、お互いが家族と暮らせば良いじゃないか。
俺がそんなことを考えていると、花苗さんが答えてくれた。
「私が洋平さんにわがままを言ったのよ。貴方と一緒に暮らしたいですって」
「まぁ僕も花苗さんと暮らしたいとは思ってるしね。それに、凛太郎も優花ちゃんと一緒に暮らしてるこの生活が気に入ってるんじゃないかな?」
「そ、それは……」
「わ、私は賛成です……」
「み……優花?」
隣の美凪からは肯定する意見が出て来た。
「そ、その……私はこのまま凛太郎さんと一緒に暮らしたいです」
「ふふふ。そうよね。どうせ結婚するのだから今から一緒に暮らしてても問題は無いわよね」
お、俺が心配してるのは……結婚を前提とした恋人同士になった今、欲望を抑えるのが今まで以上に大変なんだけどって話なんだけど……
そんな俺の心配事を察してなのか。花苗さんが俺に向かって微笑みながら言ってきた。
「大丈夫よ、凛太郎くん」
「……え?」
「避妊さえしてくれれば私は何も言わないわよ?」
「お、お母さん!!??」
「花苗さん!!??」
俺たちの声に、花苗さんは大して気にも止めずに微笑みを絶やさなかった。
「まぁ早速だけど、今日から始めてみようか」
「……え?」
「僕と花苗さんは隣の部屋で寝るから、凛太郎と優花ちゃんはこっちの部屋で夜を過ごしてね」
「ふふふ。それじゃあ洋平さん。私の部屋に来てください」
親父と花苗さんはそう言うと、俺たちの部屋を出て隣の部屋へと向かって行った。
「ま、マジかよ……」
反対はされないと思っていた。
でも、ここまで『お膳立て』をされるとは思ってもいなかった。
突然用意された据え膳に、俺は小さく頭を抱えた。
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