美凪side ③ 後編 その②
美凪side ③ 後編 その②
台所でご飯の準備を終えてから、私は居間へと移動してテレビをつけました。
そこで夕方のニュースを見ていると何やら見覚えのある女性がテレビに映りました。
「……あ、あれ。この人って確か今日私と隣人さんにインタビューをしたキャスターの人ではないですかね?」
名前は確か……西川さんです!!
西川さんは頬笑みを浮かべながらトークを始めました。
『皆さんこんばんわ。ニュースキャスターの西川です。本日は話題の映画を観覧したカップルに私が取材した様子をお伝えしたいと思います』
「…………ま、まさかとは思いますが。本当に全国デビューしてしまうのでしょうか」
私は少しの不安と期待を持ちながらテレビを見つめます。
『それでは、私が取材したラブラブカップルの様子をご覧下さい』
西川さんがそう言うと、画面が切り替わりました。
そして、テレビの画面には私と隣人さんが映し出されました!!
「こ、こんなことってあるんですね…………」
そして、テレビの中では私と隣人さんのインタビューの様子が流れています。
「私が可愛いのは勿論ですが、隣人さんもやはりかっこいいですね……」
そんなことを思いながらテレビを見ていると、テレビの中の私がとんでもない事を言い出しました。
『そ、その……凛太郎さんはとても優しいんです』
『ほうほう……』
『わ、私がとても怖い思いをした時にも助けてくれました。彼に抱き締められて、頭を撫でて貰うととても安心出来るんです……そ、そういう所が好きなところです』
『あ、あまーーい……』
な、な、な、な、なんてことを言ってるんですかね!!私は!!こ、こんなことを喋ってたんですか!!??
さらに、画面の中の私の発言はとどまることを知りませんでした。
『彼の手に触れてもらうととても気持ちいいんです……幸せな気持ちに……』
も、もう辞めにしましょう!!!!!!
そんな私の祈りが通じたのでしょう。
画面の中の隣人さんが私の口を塞いでくれました。
『も、もうそのくらいにしておこうか優花!!』
そ、そうです!!こんなことがありましたよ……
本当に……彼には頭が上がりませんね。
そう思っていると、画面がスタジオに戻りました。
そして、西川さんが少しだけ笑いながら言葉を放ちました。
『最近の若い子はラブラブで羨ましいなぁと思いましたね。私も彼氏が欲しいですね』
『西川さんのそれはかなりの爆弾発言ですね!!それではここでCMです』
こうしてニュース番組はCMに切り替わりました。
「こ、こんな全国デビューは望んでなかったです……」
私はCMを眺めながら小さく溜息をつきました。
「なぁ、美凪。今日の夕飯のことで話がある」
お風呂場の掃除を終えた隣人さんが居間へ戻ってきました。
そして、私を見ながらそう言ってきました。
な、なんでしょうか。とても神妙な目をしています。
「……え?何ですか、そんな神妙な顔をして」
私が少しだけ疑問に思いながらそう問いかけると、隣人さんは理由を話してくれました。
「悪いけど今日の夕飯は全て俺に任せてくれないか?俺が本気でお前のために夕飯を作る」
「…………り、隣人さんの本気」
い、一体どんな料理が出てくるのでしょうか?
そして、隣人さんが何故いきなりそんなことを言い出したのか……あぁもしかして、私に対しての罪滅ぼしなのかもしれませんね。
「昨日に比べて、今日のクオリティが低いと思ったからな。それに、漫画喫茶ではお前に嫌な思いをさせてしまった。こんなことで罪滅ぼしになるとは思わないが、俺はお前を喜ばせたい」
やはりそうでしたか!!
ふふーん!!貴方がそこまで言うのでしたら本気の夕ご飯を楽しみにしてあげますよ!!
「ふふーん!!そうですか!!隣人さんがそこまで言うなら良いでしょう!!貴方の本気の夕飯を、この美凪優花ちゃんが食べてあげますよ!!」
私が笑顔でそう答えてあげると、隣人さんはほっとしたような表情を浮かべました。
そして、お風呂の準備が終わったとのアナウンスがありました。
一番風呂は家主の特権なので、昨日同様に彼に譲ってあげることにしました。
昨日と違うところは、私が隣人さんの居るお風呂場に突撃しなかったことでしょうかね。
女の子の私と違って、男の人の隣人さんは二十分程でお風呂から出てきました。
お風呂場から出てきた隣人さんは、バスタオルで頭を拭きながら私に言ってきました。
「じゃあ美凪が風呂に入ってる間に夕飯の支度をしてるから」
「昨日のカレーを使って何を作るんですか?」
ふむ……台所にあるのは昨日のカレーです。冷蔵庫の中には野菜が少しある感じですかね。
これで何をするつもりですかね?
そんな私の疑問に、隣人さんはニヤリと笑って答えました。
「それは出来てからのお楽しみだ」
「あはは。そうですか、でしたら出来上がりを期待してお風呂を楽しむことにしますね」
私はそう言葉を返し、楽しみはお風呂から出てからに取っとくことにしました。
そして、私は支度を整えてからお風呂場に向かいました。
お風呂場へと到着した私は扉を開いて中に入ります。
そして浴室で服を脱いでから洗濯機へ、下着はカゴに入れました。
浴場へと入ると、蒸気と一緒に彼の匂いがしたような気がしました。
「二番風呂でも構わない。そう思える理由はここにあるんですよね」
そんなことを呟きながら、私は隣人さんの温もりが溢れるお風呂を堪能しました。
そして、しっかりと身体の汚れを落としてから私はお風呂場を後にしました。
男の人の隣人さんと違って、私の場合は一時間くらい掛かりますからね。
「隣人さーーん!!出ましたよ!!」
お風呂場から私は隣人さんを呼びました。
髪の毛を乾かすのは彼の仕事ですからね!!
ふふーん。光栄に思ってくださいね!!
「わかった!!今行く!!」
居間の方から彼の声が聞こえてきました。
だんだんと近づいてくる彼の足音に、私は彼に髪の毛を乾かしてもらえる幸せな時間を想像しながら待つことにしました。
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