第二十四話 ~美凪との仲直りのために本気で夕飯を作ることを決意した件~
第二十四話
「昨日は最後にサプライズでアクセサリーを渡したりして、美凪を喜ばせることが出来た。でも、良く考えて見れば今日はあいつに満足を与えられてないんじゃないか?」
浴槽を洗いながら、俺はそんなことを考えていた。
昨日に比べて、今日の方が一日のクオリティが低いような気がしてきた。
というか、漫画喫茶では美凪に嫌な気持ちを味合わせてしまった。
先程の謝罪で許しては貰えたが、もう一つ何かが必要じゃないか?
「…………な、何か無いかな。今からでも出来る美凪を喜ばせる方法は」
あと残ってるイベントは、お風呂と夕飯と就寝。
一緒に寝ることになってるから、就寝のイベントでこれ以上何かをするってのは難しい。
お風呂は一緒には入らないことにしてるから、頭を洗うとかそういうのはない。
そうすると、残るのは夕飯……
「カレーにひと手間加えて、あいつがめちゃくちゃ喜ぶ料理に変えるか……」
そうだな。となると、候補としてはカレードリア。
昨日の残りの野菜を少し使ってコンソメスープも作るか。
「よし。今日の夕飯で美凪を喜ばせることにするか」
俺はそう決めると、浴槽の泡をシャワーで流して綺麗にしていった。
「なぁ、美凪。今日の夕飯のことで話がある」
お風呂掃除を終えた俺は、ご飯の準備を終えて今でテレビを見ている美凪に話し掛ける。
「……え?何ですか、そんな神妙な顔をして」
軽く首を傾げる美凪に、俺は言う。
「悪いけど今日の夕飯は全て俺に任せてくれないか?俺が本気でお前のために夕飯を作る」
「…………り、隣人さんの本気」
少しだけ驚いた表情の美凪。俺はそんな彼女に笑いかける。
「昨日に比べて、今日のクオリティが低いと思ったからな。それに、漫画喫茶ではお前に嫌な思いをさせてしまった。こんなことで罪滅ぼしになるとは思わないが、俺はお前を喜ばせたい」
「ふふーん!!そうですか!!隣人さんがそこまで言うなら良いでしょう!!貴方の本気の夕飯を、この美凪優花ちゃんが食べてあげますよ!!」
ようやく笑ってくれた美凪に、俺はホッと胸を撫で下ろした。
よし、あとは俺の本気の料理で美凪を満足させるだけだ。
簡単なことでは無いけど、どうしたら良いかもわからなかった先程よりは断然良い。
そして、お風呂の準備が終わったので俺から先に入ることになった。
昨日とは違い、美凪が風呂場に突撃してくることは無かった。
しっかりと今日の疲れと汚れを落としてから風呂場を後にする。
「じゃあ美凪が風呂に入ってる間に夕飯の支度をしてるから」
「昨日のカレーを使って何を作るんですか?」
美凪がそう問いかけてきたので、俺はニヤリと笑いながら答える。
「それは出来てからのお楽しみだ」
「あはは。そうですか、でしたら出来上がりを期待してお風呂を楽しむことにしますね」
美凪はそう言って、着替えを持ってお風呂場へと向かっていった。
「よし。やるか」
美凪がお風呂に入っている間に夕飯の支度を終わらせる。
彼女の髪の毛をドライヤーで乾かすことも考えれば、与えられた時間は多くない。
冷蔵庫からチーズや牛乳など、ドリアに必要な材料を用意する。
お米は既に炊けているのでその分の時間は短縮出来る。
まずはコンソメスープ用にピーラーで剥いた野菜を細かくカットしていく。
「絶対にあいつを満足させて『美味しい』って言わせてやる」
これまでは『自分の為』にご飯を作ってきた。
せっかく食べるなら、美味しいご飯を食べたいと思っていたからだ。
だけど、今夜は違う。
「俺は、美凪優花の為に、あいつに美味しいと言わせるために、ご飯を作る」
キャベツや玉ねぎ、人参などの野菜とウインナーにバターを加えてフライパンで炒める。
これはコンソメスープの具材だ。
鍋に水を入れ具材とコンソメを加えて強火で煮立たせていく。
そして中火に落としてしっかりと灰汁をとって雑味を無くす。
弱火に落としたあとは蓋を閉じて具材が柔らかくなるのを待つ。
ここまで来たらあとは余熱調理だ。
「よし。次はカレードリアだ」
これはオーブンに入れてしまえばこっちのもの。
そこまでが勝負だろう。
俺はフライパンにバターを溶かしてご飯を入れて混ぜる。
そこに更に小麦粉を入れて混ぜる。
それらが混ざったら牛乳を少しずつ入れて更に混ぜる。
ご飯にひと手間加えることが美味しいドリアを作る秘訣だ。
ここで手を抜く訳には行かない。
そして作ったご飯に塩とコンソメとブラックペッパーを加えてグラタン皿に入れていく。
そして上から隠し味にホワイトソースを加える。
グラタン皿の中に温めたカレーを入れたあとは、上からたっぷりとチーズを乗せる。
チーズの量をケチらないのがポイントだ。
ここでどれだけ犯罪的な量のチーズをぶち込めるかが、ドリアが美味しくなるかの別れ道だ。
そして、グラタン皿をオーブンに入れ、240℃で20分にセットし、チーズが焦げ付かないかを確認するために時々様子を見る。
こうすればカレードリアの完成だ!!
うちのオーブンはでかいから、二人分までのグラタンやドリアを同時に作ることが出来る。
二人分のグラタン皿をオーブンに入れ、温度とタイマーをセットして俺はスタートボタンを押した。
「あとは出来上がりを待つだけだな」
確かな達成感を俺は感じていた。
後は、この俺の渾身の料理に美凪が喜んでくれるかどうかだろう。
『隣人さーーん!!出ましたよ!!』
お風呂場から美凪の声が聞こえてきた。
ドライヤーで彼女の髪の毛を乾かすのは俺の特権だ。
そこに間に合わせることが出来て良かった。
「わかった!!今行く!!」
俺はそう言って、美凪の元へと歩いて行った。
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