美凪side ② 後編 その②
美凪side ② 後編 その②
「ご馳走さまでした」
「ご馳走さまでした!!」
「俺もご馳走様でした」
食事を終えた私たち。彼は食器を持って立ち上がりました。
「じゃあ食器は流しに持ってくから」
「私も手伝いますよ!!」
ふふーん。こういう優しさも私の良いところです!!
「ありがとう、美凪。じゃあ二人で持っていくか」
「はい!!そのまま洗い物まで終わらせてしまいましょう」
「うん。そうだな。じゃあそうするか」
そうです!!良い女はこうした気遣いが出来る女です!!
私がそう思いながら、台所へと向かうと洋平さんが、
「じゃあ僕はちょっと部屋に行ってプレゼントを取ってくるよ」
そう言って居間を後にしました。
プレゼント?一体なんでしょうか。
洗い物ををしながら私は彼に問いかけました。
「隣人さん。プレゼントってなんですか?」
「あぁ。明日が俺の誕生日なんだよ。だから無理をして親父も帰ってきたんだろうな」
た、誕生日!?そんな話は初めて聞きました!!
むーー!!!!何でそういう重要なことを私に黙ってるんですか!!
「私、知りませんでしたよ?」
「え?だって教えるようなことでも無いだろ?」
こともなげにそう言う隣人さん……
た、確かにそうかもしれませんが……大切な日じゃないですか……
「……言ってくれてもいいじゃないですか。隣人さんのばか……」
私はぼそりとそう呟きました。
「……え?何か言ったか?」
流れる水の音で聞こえてなかったようですね。
別に、聞こえて欲しいセリフではありませんから。
「何でもありませんよー!!」
私は彼にあっかんべーをしながら台所を後にしました。
むーーー!!!!謝ってくれるまで口を聞いてあげません!!
私は棚からコップを二つ用意して、テーブルに置きました。
すると、彼が麦茶の入ったポットを持ってやって来ました。
「ありがとう、美凪」
「つーん」
私は彼の言葉につんとそっぽを向きました。
私のその様子に彼は苦笑いを浮かべながら、
「教えてなかったのは謝るよ、ごめんな」
まぁ……仕方ないですね!!謝ってくれたので!!口を聞いてあげることにしました!!
「まぁ、そういう流れは無かったですからね」
「ちなみに、美凪の誕生日はいつなんだ?」
「8月31日です」
夏休みの最終日です。
別に隠すことでも無いので教えてあげました。
「その日は祝わせて貰ってもいいか?」
ニコリと笑ってそういう彼に私は指を突きつけました。
「そう思いますよね?私も同じです」
「……え?」
予想外。そんな表情の彼に私は言います。
「貴方の誕生日。祝いたいと思うくらいの感情は私にもありますよ。まぁ今知れたのは良かったです。明日の夜は空けておいてください」
「そうか。うん……ごめんな。でも、ありがとう美凪」
私の気持ちがわかってくれましたか!!
それなら許してあげますよ!!
「ふふーん。わかればいいです。じゃあ明日の夜は楽しみにしていてください!!」
「了解だ」
彼とそんな話をしていると、
「そろそろ夫婦喧嘩は終わって仲直り出来たかな?」
「「夫婦じゃない!!」」
洋平さんの言葉に思わず反応してしまいました……
彼と言葉がまた重なってしまって、少し恥ずかしかったです……
「あはは。仲が良くて僕も安心したよ」
な、仲は悪くないと思います……
それはきっと隣人さんも、同じように考えていると思います。
そして、洋平さんは彼にプレゼントを渡していました。
どうやら中身は高価な腕時計のようです。
隣人さんは戸惑いはあったものの、とても喜んでいるようでした。
そして、時刻を確認すると二十時を過ぎた頃でした。
そろそろお風呂を考える時間ですね。
当然ですが、私は隣人さんの家のお風呂を使います。
あの部屋になんか一秒だって一人では居たくありません。
後で、着替えやお風呂用品を取りに、彼と一緒に向かおうとは思ってますが。
「さて、そろそろいい時間だし、お風呂に入ろうか」
「そうだな」
洋平さんのその言葉に、隣人さんは同意を示しました。
そして、彼がお風呂の準備をしに椅子から立ち上がった時でした。
「そう言えば、今日から優花ちゃんはうちで暮らすんだよね?やっぱり凛太郎と一緒に寝る感じかな?」
「「え!?」」
か、彼と一緒に寝る!?
そ、そうですね。一緒に暮らすことになれば、洋平さんの部屋を使えない彼と、一緒に寝ることは当然とも言えます。
「み、美凪と一緒に寝るってどういうことだよ?」
どうやら私が思い至ったことを、隣人さんは理解していなかったようです。
ふふーん。頭のキレが私よりも悪いですね!!
「えー?よく考えてよ凛太郎。いくら義理の娘になる女の子とは言え、こんなおっさんと寝るのは問題だよ?それに、僕のベッドは大人の男二人が寝るには流石に狭すぎるよ。だったら凛太郎が優花ちゃんと寝るしか無いよね?」
ぎ、義理の娘……ですか……
そ、その……彼と家族になることが前提の話になってる気がします……
「み、美凪は……嫌だよな……」
「そ、その……私は嫌じゃないですよ……」
貴方と一緒に寝るのは嫌では無いです……
は、恥ずかしいですが……
「な、なんで……」
「だって……隣人さんと寝ると……安心しますから……」
そう。貴方に触れていると、幸せな気持ちになれるんです……
「うんうん!!それなら決まったも同然だね!!凛太郎!!僕は寝たらどんな音でも当分起きない人間だからナニをしてても平気だからね!!」
「ふざけたこと言うなよ!!クソ親父!!」
ナニ……?ナニとは何のことでしょうか?
彼は大きく取り乱しているようですが……心当たりがあるのでしょうか?
「そ、そうだ!!俺だけ居間のソファで寝れば……」
何やら名案のように、彼がお馬鹿なことを言い始めました。
私はすかさずそれを窘めます。
「ダメですよ」
「み、美凪……」
はぁ……少し強く言わないとダメそうですね……
「四月はまだまだ寒いです。誕生日を風邪引いて迎えるつもりですか?」
「で、でも……」
「私は構わない。そう言ってるんです。覚悟を決めたらどうですか?」
私のその言葉に覚悟を決めてくれた彼は、
「わかった……一緒に寝よう……」
そう言ってくれました。
そして、隣人さんと一緒に私の部屋に行き、お風呂用品と明日のための着替えとかを持ってきました。
彼と一緒に寝られる。あの暖かい身体を抱きしめながら寝られる。私は嬉しくなって思わず鼻歌を歌いながらお風呂に入ってしまいました。
その後、彼の部屋の中では色々とありましたが、一緒に寝られたので良しとしましょう。
「…………喉が乾きました」
深夜。私は喉に乾きを覚えて目を覚ましました。
隣を見ると、隣人さんがすやすやと寝息を立てています。
私は彼を起こさないようにして、居間へと向かいます。
そして、冷蔵庫を開けて、麦茶を取り出します。
コップに注いだ冷えた麦茶を飲むと、乾きが癒えました。
使ったコップを水で軽く洗い、私は彼の部屋へと戻ります。
……すぅ……すぅ……
「寝てますね」
私はそっと彼の元へと近寄ります。
そして、その髪の毛に触れました。
「むー……悔しいくらいにサラサラです」
お風呂を見る限りでは、特に何か特別なことをしているようなものはありませんでした。
つまりこれは天然モノ。
「むー……ずるいです……ですが、気持ちいいです」
私は彼のそのサラサラの髪の毛をいっぱい触りました。
ふふーん。寝ている貴方は無抵抗で可愛いですね。
「さて、あまりイタズラをし過ぎると起きてしまうかもしれませんね」
私はそう呟くと、彼の隣に潜り込みました。
そして、暖かい彼の身体を抱きしめます。
……幸せです。
この人は……誰にも渡しません……私だけの人です……
明日……いえ、もう今日ですかね。
彼の誕生日です。夜は空けてもらってます。
そして、何を渡すかも、決めてます。
「隣人さん。私の『お手製ケーキ』楽しみにしててくださいね」
私はそう呟いて、もう一度眠りにつきました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます