美凪side ② 中編 その②
美凪side ② その②
そして、学級委員に任命された私は教壇に立ち、挨拶をしました。
「学級委員になった美凪優花です!!隣人さん……海野くんではこの大役は務まらないと思ったので立候補しました!!別に愛してるとかそういうのじゃないです!!勘違いしないでください!!」
ホント!!困るんです!!勘違いしないでくださいね!!
「このパーフェクト美少女の美凪優花ちゃんが学級委員になったのでこのクラスは一年間は安泰です!!安心して学業に励むと良いです!!」
そして、挨拶を終えた私に彼が言いました。
「じゃあ美凪、書記をやってくれ。お前の方が文字が綺麗だからな」
文字が綺麗!!そうです!!隣人さんも汚くは無いですが、私の方が綺麗な字を書きますからね!!
「ふふーん!!美しいこの私から生み出される文字は美しい。これは世の中の必然です!!」
「あはは……じゃあ美凪。よろしく頼むわ」
「任されました!!」
私は意気揚々と黒板に決まった委員を書きました。
学級委員
美凪優花・海野凛太郎
……なんか結婚してるみたいに見えました。
き、気のせいですよね。
そして、LHRの時間をめいっぱい使って各委員の選出が終わりました。
意外なことにくじ引きの出番は無かったです。
奏さんや成瀬さんのように、くじ引きで変な委員に入るよりは、自分の意思で選んだ方が良い。そう考える人が多かったみたいですね。
私も嫌でしたから。隣人さん以外の男性と共に委員をやるなんて。
ふふーん。ですから、こうして彼と学級委員を出来るようになったのはとても僥倖です!!
「海野に美凪。ご苦労だったな。しっかりと時間内に委員の選出を行えたのは評価が高いぞ」
「いえ、山野先生。俺の評価にしないでください。クラスメイトのみんなが協力的だったお陰です」
謙虚な彼は山野先生の言葉にそう答えてました。
ですが、まだ真の功労者の名前が足りませんね?
そんな彼の言葉に私が捕捉をしました。
「ふふーん!!そうですね。隣人さんはクラスメイトの意見を集めてただけです!!結局のところ、くじ引きも使いませんでしたしね。クラスメイトと、この美凪優花ちゃんのお陰と言えるでしょう!!」
私のその言葉に、山野先生と隣人さんが苦笑いをしていました。な、何故ですか!?
「なるほどな。そういう姿勢は嫌いでは無い。海野凛太郎。放課後に進路指導室に来い。話がある」
「……え?」
進路指導室……
彼は放課後に先生に呼び出されていました。
な、何をしでかしたんですかね……
隣人さんも意外だったのでしょう。驚いた顔をしていました。
「それでは、今日のSHRはこれで終わりにする。部活動の体験入部など、興味のある部活に顔を出すのも良い。そのまま帰宅しても良い。自由にするがいい。では解散」
山野先生はそう言うと、教室から出て行きました。
私は機を見計らって、彼に話しかけました。
「……隣人さん。山野先生から呼び出しを受けてましたね。何をやらかしたんですか?」
「し、知らねぇよ。何だよ、進路指導室って……」
やはり、彼にも心当たりがないようです。
そして、隣人さんは奏さんと成瀬さんと放課後の予定について会話をした後、こちらを向いて言いました。
「さて、進路指導室に行ってくるかな」
「じゃあ。私は待ってますね」
ふふーん、当然です。今日は貴方と一緒に帰り。そして、スーパーで買い物をして帰る。そういう約束ですからね。
「先に帰っててもいいぞ?」
……え?
何を言ってるんですか、隣人さん。
もしかして、朝話したことを忘れてるんですか?
「今日は一緒に買い物をする。そう話してましたよね?忘れてしまったのですか??」
「あぁ……すまん。そうだったな」
やはり彼は忘れていたようです。
もう。忘れないでくださいね!!
「それでは進路指導室に向かいましょう。外で待ってますからね」
「あぁ。何を話されるかはわからないけど、とりあえず話は聞いてみるよ」
そう話した私たちは、進路指導へと向かいました。
『進路指導室』
「ここですね」
「そうだな」
部屋の上にプレートが出てるので間違いありませんね。
「それではここで待ってますね」
「あまり遅くならないとは思うけど、もし遅いようなら先に……ん」
もう。また『先に帰れ』なんて言うつもりですか?
そんないけない唇は私が抑えてあげます。
私は彼の唇を人差し指で抑えました。
そして、私は彼に言いました。
「私は貴方を待ってます。それはどんなに遅くなっても。です。次に先に帰れ。なんてことを言ったら、貴方の部屋にあったえっちな本の名前を叫びながら帰りますよ?」
「あはは……それは勘弁だな……」
ふふーん。ようやくわかってもらえたみたいです!!
「すぐに終わらせてくる。そしたら一緒に買い物に行こう」
「はい!!」
そう言って彼は進路指導の中へと入っていきました。
「一体何を話しているのでしょうか?」
少しだけ気になった私はそっと扉に耳を押し当てました。
「…………全然聞こえません」
考えてみたらここは『進路指導室』です。
進路を相談する生徒の声が、外に漏れたらそれは問題です。
そして、私は外のグラウンドを眺めながら時間を潰していました。
部活動をしている生徒達が走り回っていました。
時間にすれば十分程だったと思います。
ですが、私にとっては一時間くらいにも思えました。
進路指導室の扉がガラリと開き、中から隣人さんが出てきました。
……ちょっと寂しかったです。
彼の顔を見た私は、少しだけほっとして、心が温かくなりました。
「何を話されたんですか?」
私は廊下を歩きながら、彼にそう問いかけました。
「生徒会に入らないか?と打診を受けたよ」
せ、生徒会ですか!?一年生で打診を受けるのはかなり凄いことだと思います!!
で、ですが……彼が生徒会をするとなると、こうして一緒に居られる時間が減ってしまいます……
そ、それは少し……イヤです……
「……生徒会。隣人さんはその話を……」
「断ったよ。当然だろ?」
こ、断った!?な、何でですか!!
かなり栄誉な事だと思いますが!!
そ、それにこの人の人柄ならその……
「生徒会ですよ?何となくですが、隣人さんは生徒会長とか目指してそうな雰囲気がありました」
「あはは。中学時代は生徒会長をやってたよ。でも、高校ではやるつもりは全く無いな」
全くやる気が無い。どういうことなんでしょうか?
「その……何か理由があるんですか?」
私の質問を聞いた隣人さんは、呆れたような表情をして、私の前に立ちました。
な、何でしょうか……
「り、隣人さん……?」
「俺が部活に入らないのも、生徒会に入らないのも、全部お前のためだよ。なんだよ、そんなこともわかんないのかよ?」
「わ、私のため……」
彼の口から出てきた言葉に、私は理解が追いつきませんでした。
「そうだよ。一緒に暮らすんだろ?お腹を空かせた美凪お嬢様にご飯を作るんだから、部活や生徒会なんてやってる暇なんかねぇよ。朝にその話はしただろ?」
全校生徒のためでなく、私だけのために力を振るってくれる。
彼のその言葉に、私は胸が温かくなりました。
彼にとって私は『特別な存在』だと言えるのでしょう!!
「ふ、ふふーん!!そうですよね!!隣人さんは私の飯使いさんです!!たくさん美味しいご飯を作ってくれないと困りますからね!!」
私がそう言うと、彼は優しい笑みを浮かべて私の頭を撫でてくれました。
「……り、隣人……さん?」
ど、どうしたのでしょうか……
その……私としては歓迎ですが……
「親父も奏も、俺の料理を食べて『ありがとう』とは言っても、『美味しい』と言ってくれることは無かったんだ」
「お前が初めてなんだ。俺の料理を『美味しい』って言ってくれたのはな」
「ありがとう、美凪。俺の料理を『美味しい』と言ってくれて」
そうですか。私が貴方の料理を食べて『美味しい』と言うのは、そこまで喜ばれることだったんですね。
私としては、正直な感想を言っていただけなんですが。
「え、えへへ……その、照れますね。私は思ったことをそのまま言ってるだけですから……」
貴方がそうやって『正直な気持ち』を伝えてくれるのでしたら、私も少し『正直な気持ち』を話しますね。
「私は貴方にこうして頭を撫でられるのは嫌いではありません。なんでしょうかね、安心する感じがします」
「そうか。俺もこうしてるとお前の綺麗な髪の毛が触れて幸せだ」
『綺麗な髪の毛』
また褒めてくれました。嬉しいです。
「ふふーん?そうですか。この髪の毛はお手入れが大変なんですよ?」
「だろうな。でも、とても綺麗だと思う」
彼はそう言うと頭を撫でながら、朝の時のように髪の毛を梳いてくれました。
とても……気持ちいいです……
胸が幸せでいっぱいになります。
「じゃあ……これからもお手入れを頑張ります……」
私がそう言うと、後ろから声が掛かりました。
「おい。海野に美凪」
「「はい!!」」
振り向くと、呆れた表情の山野先生が居ました。
み、見られてましたか!!??
「イチャイチャするのは構わないが、学校では控えろよ?」
「「イチャイチャはしてません!!」」
お、思わず隣人さんと声が重なってしまいました!!
「はぁ……私もそろそろ彼氏でも探すかな……」
山野先生はそう言うと、私たちのヨコを通り過ぎて行きました。
「み、見られてしまいましたね」
「ろ、廊下では控えようか」
そ、そうですね……こういうのは自宅でしましょう……
「じゃあ美凪、買い物をして帰ろうか」
「そうですね、今日はオムライスですよね!!私、今から楽しみです!!」
彼の作る料理は全部美味しいと思います!!
ですが、私が好きな料理ならさらに美味しくなること間違いありません!!
私は今から夕飯が楽しみで楽しみで仕方なくなりました!!
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