第二十話 ~まさか美凪と同居する流れになるとは思いもよらなかった件~
第二十話
下味を付けたソーセージを焼き終え、テーブルの上に置いてあったスクランブルエッグの入った皿に盛り付ける。
テーブルの上にはマーガリンと、牛乳の入ったコップが用意されていた。
そして、俺が料理をしている間に、美凪はパンを焼いてくれていたみたいだった。
香ばしく焼けたパンが四枚。テーブルの上のお皿に載せられていた。
「色々用意してくれてたみたいだな、ありがとう」
「ふふーん。パーフェクト美少女の美凪優花ちゃんです。こうした細やかな気配りが完璧に出来る女の子ですからね!!」
「あはは。まぁでも助かるよ。じゃあ食べようか」
「はい!!」
俺と美凪は「いだきます」と声を揃えてから朝のご飯を食べ始める。
俺はまずはパンにマーガリンを塗ってから一口食べる。
美凪のトーストしてくれたパンは焼きすぎでもなく、美味しく焼けていた。
そして、スクランブルエッグを取り皿に移して、軽くケチャップを掛けてからパンに乗せる。
更にウインナーを乗せてから挟んで食べる。
あーうめぇ。朝から幸せの味がする。
でも、レタスを用意しておくべきだったな。
そこだけが少しだけ後悔したところだった。
「スクランブルエッグもフワフワで、とても美味しいです隣人さん!!」
「あはは。ありがとう、美凪。でもレタスが欲しかったな」
「そうですね。シャキシャキのレタスを挟んだらもっと美味しかったかも知れません。では、明日はそうしましょう!!」
明日は……か。
こいつも『これから先』のことも考えてくれてたんだな。
なんて思いながら食事をしていると、
「これからはこちらで暮らさせてもらう予定ですからね」
「………………は?」
今、こいつなんて言った?
これからは、こちらで、暮らす?
「隣人さんも知っての通り、私の部屋は幽霊か不審者が居る、危険な場所です。もしくは欠陥住宅です!!」
「……そ、そんなことは」
「あるんです!!もうあんな部屋には一秒だって居たくありません!!!!」
かなり本気の発言だった。まぁ、昨日のこいつの様子を見たら、そうなる気持ちはわからないでも無いが……
「いや、それでも……ダメだろ?」
今朝みたいに、俺の理性が吹っ飛ぶことも考えたら、高校生の男女が一緒に暮らすのは流石に……
そんな俺に、美凪は目をスっと細くしながら話をする。
な、なんだその表情は……
「『巨乳同級生の淫らな秘密~制服の下に隠された魅惑の肢体~』」
「……………………………………え?」
待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て……………………
な、なぜお前がそのタイトルを知っている?
そ、その本は……俺が引越しの時にどこかに紛失してしまった本。お気に入りだったけど見つけられなくて、きっとどこかに紛れてしまったのかな。と諦めていたものだ。
そ、その本の名前をなぜお前が……
「昨晩。隣人さんのベッドの上にポーンと置いてありました」
「はぁ!!!!???」
な、なんで!!どうして!!
そんなことあるはずが無いだろ!?
だって!!あの本は!!見つからなかったんだから!!
なんて思ってると、俺のスマホがメッセージを受信したと告げてきた。
「ちょ、ちょっとスマホを見ていいか?」
「どうぞ」
俺は美凪に許可を取り、テーブルの上に置いてあったスマホを確認する。
『おはよう、凛太郎!!お父さんは同僚の女性と何とか頑張って仕事をしてるよ!!その人はとても優秀な人でね、とても助かってるんだよね!!あぁそうそう!!昨日話そうと思ってて忘れてたんだけど、お父さんの荷物の中に凛太郎の『秘蔵の本』が紛れてたからね!!凛太郎もそう言うのを見る歳になったんだねぇ。感慨深いよ!!その本は凛太郎のベッドの上に置いておいたから、後でどこかにしまっておきなね!!じゃあ!!』
なんてメッセージが来ていた。
「あのクソ親父!!ふざけんな!!!!!!」
俺は思わずスマホを叩きつけたくなる衝動に駆られたが、何とか耐えた。
「そ、その本が……どうした……」
「隣人さんは、ああ言うのがお好きなんですね?」
「す、好きと言うか……その……」
「どう見ても二十歳を超えた女性が高校生のコスプレをしてる姿がお好きなんですね?」
「い、いや……その……」
な、なんだこの、浮気が見つかった旦那のような気分は……
そこまで言うと、美凪はニコリと笑う。
「私は口の軽い女ですので、もしかしたら学校でポロッと言ってしまうかもしれませんね?」
「……なぁ!!!???」
こ、この女!!俺を脅してるのか!!
つ、つまり……言われたくなければ、一緒に暮らすことを了承しろ。そういう事だ……
さらに、美凪は微笑みながら追い打ちをかけてくる。
「隣人さんが了承してくれるのでしたら、髪の毛くらいでしたら触らせてあげても良いですよ?」
ふぁさ。と髪の毛を手で広げるように動きを見せる。
「……っ!!」
ヤバい……どう考えても俺の方が劣勢だ……
「……はぁ。わかった。今日から一緒に暮らそう」
俺がその言葉を絞り出すと、美凪はぱあと笑った。
「ありがとうございます!!」
ほんと、俺はお前のその笑顔に弱いんだ。
「一緒に暮らすと言っても部屋は別だからな。今日みたいに夜に忍び込むのは無しにしてくれ」
「はい。了解です」
美凪そう言うとフワリと笑った。
「では、今日から隣人さんの部屋は私の部屋です」
「……わかったよ。俺は親父の部屋で過ごすわ」
そう話したあと、美凪は俺に聞いてきた。
「隣人さん。今日の夕飯はなんですか?」
「あぁ、昨日卵を沢山手に入れたからな。オムライスを作る予定だ」
「オムライス!!私大好きです!!」
俺のその言葉に、美凪は手を合わせて喜んだ。
「グリンピースとか細かいものが足りてないから、放課後に買い物に寄ろうと思ってる。どうする、お前も来るか?」
「はい!!買い物にお供します!!」
「よし。じゃあ放課後は買い物をして帰るか。食パンとかも買わないとだしな」
「そう言えば、美凪は部活には入るのか?」
「いえ、入りません。隣人さんは入るんですか?」
「いや、その予定は無いな。うちには養わないといけないお嬢様が居るからな」
俺がそう言うと、美凪は笑った。
「ふふーん!!そうですね、隣人さんは美凪家に雇われた飯使いさんです!!部活なんてやってる暇は無いですからね」
「あはは。まぁ貰った金額分くらいは頑張らせて貰うよ」
俺はそう言うと、椅子から立ち上がる。
「じゃあ俺はお弁当の準備をするよ。お前も一回家に帰って着替えて来いよ。服とかは向こうのままだろ?」
「……い、一緒に来てください」
……なんとなく、そう言われる気はしたな。
「……はぁ。わかったよ。じゃあ俺が弁当の準備が終わったら一緒に行くよ。それまでは待ってろ」
「は、はい!!ありがとうございます!!」
ホッとしたような表情の美凪。
まぁ、この機会にブレーカーとかも教えておくか。
俺はそんな事を考えながら、台所へと向かった。
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