第十話 ~レストランでアホほど食う美凪に唖然とした件~
第十話
「さて。これで今日のLHRは終了だ。まぁ高校は中学までとは違い義務教育では無い。寄り道をしないで帰るな。とは言わない。だが、自分の行動には責任を持て」
自己紹介を終えた俺たちに、山野先生が諸連絡をする。
「明日から通常の授業になる。春休みの宿題などはその時に提出だ。成績に影響のあるテストも行われるから準備をしておけ」
「明日の六時間目がLHRになっているが、そこでは各委員を決めることになっている。海野は学級委員をやる。と言っているが、別に他の奴が立候補しても構わん。その場合はクジ引きとなる。あとは各委員は基本男女一人づつのペアになる」
「ここまでで何か質問はあるか?」
クラスメイトの誰からも質問は出なかった。
「よし。では解散」
山野先生はそう言うと、教室から出て行った。
「よし、凛太郎!!飯くいに行こうぜ!!」
「構わないぞ。サイセでいいか?」
幸也のセリフに俺は了承を示す。
「ねぇねぇ!!優花ちゃんも一緒に来るよね!?」
と、奏が美凪を飯に誘っていた。
「そうですね。私が一緒だと海野くんも喜ぶと思いますので、ご一緒させていただきますね」
「しれっと妄言を吐くなよ……」
俺のその言葉に美凪はニヤリと笑う。
「この超絶美少女と一緒にご飯を一緒に食べられるんです。感謝してくださいね」
「あぁ、はいはい。ちなみに、美凪。今日はちゃんと金を持ってるのか?」
「はい。お母さんから朝、お昼代として2000円貰いました。サイセリアならギリギリ足りると思います」
「……え?」
あのサイセリアの価格設定で一人で2000円って相当食わないとだぞ……
「ホントお前は良く食うな……」
「ふふん。この優花ちゃんのパーフェクトボディを維持するためにはしっかりと食べないとダメなのですよ。まぁ、昨日食べた隣人さんの夕飯は非常に満足だったと褒めてあげるです!!」
「ははは。ありがとうよ」
「……で。お前たちのイチャイチャは終わったか?」
「「……え?」」
俺と美凪の会話の様子を、幸也と奏が温かい目で見ていた。
「腹減ったし、サイセに行こうぜ。お前たちのイチャイチャはそこに着いてからでも良いだろ?」
「「イチャイチャしてない!!(です)」」
「息ぴったりだね!!」
バカップル二人にからかわれた俺と美凪は、同じようなタイミングでため息をついた。
『サイセリア』
俺と美凪は一度家に戻り、自転車に乗って駅前にある庶民の味方。サイセリアへと向かう。
『普通』の人間なら1000円握りしめればお腹いっぱいになる良心的な価格設定。
安さと美味しさを両立したイタリアンレストランだ。
この店のミラノ風ドリアは何回食べても飽きない。
俺たちは店に着くと、自転車を駐輪場に停めて店内へと向かう。
幸也が先に行って扉を開けてくれる。
こういうことをすんなり出来る所がこいつの良い所だと思っている。
「ありがとう、幸也」
「いつもの事だろ?」
店内に進むと、すぐに店員さんがやって来た。
『何名様ですか?』
「四名です。禁煙席でお願いします」
俺がそう言うと、店員さんは
『禁煙席に空きがありますのですぐにご案内できます』
と言って案内してくれた。
「飯時だけど空いてて良かったな」
「そうですね。私はお腹が空いてますからね」
「優花ちゃんがどのくらい食べるのか今から楽しみだよ!!」
「奏はもう少し食べた方がいいぞ?じゃないと胸に……いいっ!!??」
余計な事を口走った幸也の足を奏が踏み付ける。
「……何が言いたいのかな?幸也?」
「……いえ、なにも……」
「私のお胸は小さくないの。ちょっと物足りないだけよ」
「はい。おっしゃる通りです……」
そんなやり取りを見ながら、美凪が俺の耳元で言う。
「奏さんのおっぱいは小さいと思いますが」
「……お前。それを奏に言うなよ?命が惜しいならな……」
「……わかりました」
そして、俺たちは案内された席に座り、メニューを開く。
「俺と幸也は決まってるから先に選んでてくれ」
「凛太郎と二人で飲み物取ってくるよ」
「ありがとう幸也」
「ありがとうございます海野くん」
女の子二人に見送られて、俺と幸也は水を取りに行く。
「迂闊な一言だったな」
水を注ぎながら、俺は幸也に笑いながら言う。
「あはは。ちょっと口が滑ったな。まぁ、気にしてるところも可愛いところなんだけどな」
「はいはい。ご馳走様」
「凛太郎は美凪さんの下着を見たんだよな?」
「……事故だがな」
「やっぱりデカかったのか?」
「……黙秘で」
あの光景は俺だけのものにしておきたいからな。
「あはは。こんな会話が出来るのもここまでだな」
「向こうに行ったら出来ないからな」
なんて言いながら俺と幸也は水を持ってテーブルに戻る。
「お待たせ」
「お二人で楽しそうに話してましたね?」
何かあったんですか?
首を傾げる美凪に、幸也が笑いながら言う。
「凛太郎が美凪さんの下着はデカかった。って言ってたんだよ」
「ふええええぇぇ!!!!???」
「……幸也、てめぇ……」
楽しそうに笑っている幸也に、俺は非難の視線を向ける。
「り、隣人さん!!なんて会話をしてるんですか!!あの映像は今すぐ忘れてください!!」
「いや、あの光景はなかなか忘れられるもんじゃないだろ……」
「あぅ……」
俺の正直な一言に、美凪は顔を赤くして伏せた。
「まぁ……すまんな……」
「すまんな。じゃないです……」
「さて。頼むか」
俺は話題を変えるためにメニューを書いた紙を掴む。
「俺はミラノ風ドリアとミートスパゲティの大盛りだな」
「凛太郎。俺はハヤシライスとカルボナーラで」
「あいよ」
俺はメニュー票に書いていく。
「凛太郎くん。私はフォッカチオとシーザーサラダで」
「奏は本当に食わないな。もっと食った方が良いと思うけどな」
「あはは。あまり食べると気持ち悪くなっちゃうんだよね」
俺の言葉に奏はいつものように答えた。
「隣人さん!!私はですね!!」
「おう、美凪は何を食うんだ」
「ミラノ風ドリアとミートスパゲティの大盛りとベーコンとコーンのピザとシーザーサラダと青豆のサラダと辛味チキ……」
「ちょっと待て!!」
「……え?」
俺の静止に美凪が首を傾げる。
「ひ、一人で食うのか?」
「もちろんですよ。あ、ピザが食べたいんですか?ふふん。一切れなら分けてあげても良いですよ?」
「……いや、構わない。たくさん食う女は嫌いじゃない」
俺はそう言うと、美凪の注文を書いていく。
これなら確かに一人で2000円だな。
そんなことを思いながらメニュー票を眺めていた。
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