腹ぺこお嬢様の飯使い ~隣の部屋のお嬢様にご飯を振舞ったら懐かれた件~

味のないお茶

第一章

プロローグ

 プロローグ



「隣人さん、隣人さん。私はおかわりを所望します」


 栗色の髪の美少女が、空になったお茶碗を俺に突き出しそう言った。


「うるせぇよ、美凪みなぎ。ご飯くらい自分でよそえ」


 俺はその要求を突っぱね、後ろにある炊飯器を指さす。


「ちぇー……仕方ありませんね」


 彼女はそう言うと渋々立ち上がり、炊飯器を開けてご飯をよそう。


「全部食べても良いですか?」

「構わねぇよ。その方が助かるわ」

「わーい!!やりました!!」


 美凪は俺の言葉を聞いて、ウキウキとお茶碗にご飯をよそっていく。

 そして、一杯目より多く盛った二杯目のご飯を手にして椅子に座り、パクパクと食べていく。


 今日の夕飯のおかずは唐揚げだ。ご飯がすすむのは良くわかるけどな。

 それにしても本当に良く食う女だな。

 その栄養は何処に行くんだろうな?


 俺はそんなことを思いながら、高校一年生にしては豊かに育った美凪の一部分に目が行く。


「……隣人さん。女性は皆、男の人の視線はわかるものですよ?」

「わりいな。不躾な視線だった」


 俺はそう言って謝罪する。


「はぁ……本来なら警察案件ですよ?」

「何言ってやがる。不法侵入にただ飯食らい。警察の厄介になるとしたらお前だろ?」

「ふふーん。私は知ってますよ、隣人さん。あなたは私の食費として、お母さんからかなり多くのお金を貰っていることを!!」

「まぁ、それなりの金額は貰ってるな」


 俺がそう答えると、美凪は


「ドヤァ」


 と笑った。


「いや、でもな。その食費が余らないレベルでお前は食ってるからな。むしろ手間賃の分だけ損してるわ」


 と、俺が呆れながらそう言い返すと、


「何を言ってるんですか、隣人さん。一人分も二人分も手間は変わりませんよ?」

「それは本来食ってる奴じゃ無くて、作ってる奴のセリフなんだけどな……」


 と俺は肩を落としながら言った。


 ホント、なんでこんなことになってるんだろうな。


 目を見張るような美少女とひとつ屋根の下でご飯を共にする。

 男なら垂涎もののシチュエーションかもしれないけど、恋愛に発展するような甘いイベントやらなんやらはなんも無い。



 そうだな、俺たちの関係を一言で表すなら……


「今日もご馳走さまでした。美味しかったですよ『飯使い』さん」

「はいはい。お粗末さまでした、お嬢様」


 腹ぺこお嬢様と飯使いってところだな。

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