第43話 魔剣解放
神の一柱、それが世界の柱。
一人興奮し、高らかに叫んだリヴァーンは確かにそう言った。
世界を支える原初の神。異世界からくるまがい物などではなく。
そんなわけはなかった。リシュは異世界の住人である。
リシュ・グレイスメールはこの世界の住人ではない。
もう一つの『始原世界アルステラ』の創造主の一人。また、その世界の運営者だった。
リシュはこの世界の神に、無理やり引きずり込まれたのだ。多数のメイドとともに。
確かにリヴァーンの言った通り、神に近い存在ではあった。不老不死であり、条件付きではあるが無敵の存在。それがリシュ・グレイスメールなのだ。
この世界におけるリシュの目的は一つ。元の世界への帰還のみであるが、それに伴い、どうしてもこの世界の神々が邪魔になる。だからリシュは神殺しを求めていた。
特に、フラーマ。この神はこの世界の理を捻じ曲げて、都合のいいように改編していた。始原世界にも同名の神がいたがここまでゴミクズではなかったと記憶している。
リシュはこの世界に召喚されこの世界に生きた結果、この場所が、自分たちのいた世界のコピーだということに気づいていた。恐らくフラーマという神が『始原世界』をまねて作りだしたということも分かっていた。
だからリシュはこの時代において、勇者や魔王に接触していたのだ。全ては神を殺すためである。
その過程でセロハやリヴァーンと出会った。彼らはリシュに多大な影響を与えた。
初めの接触は最良とは言えないものだった。
王国の命を受けセロハとリヴァーン、そして勇者の面々がリシュ達、メイド教会を襲ったのだ。リシュはそこで半分以上のメイドを失うことになってしまう。しかし代わりに勇者たちも半分ほど削り殺していた。本気になったセロハとケイトとの戦いで、北の地は大きく被害を出すことになった。巨大な世界の裂け目である大壁「世界壁」を大きく陥没させ、北の大陸を半分消し飛ばした。そして王国はこの裏でガストレアと戦争を始めた。人々はこの戦争を『二重戦争』と呼んだ。
最終的にセロハは負けを認め、メイド教会に降伏した。しかしリヴァーンはそれを拒み、自らの勇者としての力も捨てて王国民を裏切りこの命も使いリシュを殺そうとした。セロハはリシュと契約しこれを制圧。リヴァーンを世界壁の陥没した場所の奥深くに封印しそこを獄穴と定義して王国にはメイド教会をそこに封印したと嘘を伝え、今に至る。
リシュは神殺しを求めている。だからこそ、異界の魂を持つクラウスに目をかけてその行動に力を貸したのだ。
リヴァーンは大きく構えをとっている。対してリシュは世界を展開させ、一時的にこの世界を始原世界アルステラと同等のモノに変えた。
創世剣が地に刺さる限り、この世界は始原世界のままだろう。これがリシュにとってどのような効果をもたらすかは俺には分らない。
リヴァーンが跳んだ。リシュに襲い掛かり、右の爪を振るう。
カキィィンという音ともに、剣で受けたリシュは横薙ぎを繰り出す。鮮やかに回避したリヴァーンは後ろへ下がり、口から灼熱の咆哮を吐いた。リシュには当たらず、咆哮の残り火のみが後ろに抜ける。
「この世界を始原世界と同じに変えた。リヴァーン、どういう事かは分かるな?」
「分かるさ。俺はこの世界の理に引っ張られてこの場所なら再生できず死ぬんだろう?」
「正解だ。ならとっとと死んでくれ」
リシュが動く。一息でリヴァーンに肉薄し一瞬で細切れの斬撃を放った。装甲を食い破り、斬撃がリヴァーンに直撃する。大量に吐血したリヴァーンは尻尾を使い、リシュを下がらせた。
「この空間では分が悪すぎるな、だが…、旅行者はどうだろうな。一時的に狭間へと退避させたのだろうが、いったいどれだけの時間持つことか」
「持つさ。その前に俺がお前を殺す」
「ずいぶんな気合だなリシュ。だが、俺の聖剣が今どこにあるか分かるか?」
「まさか」
狭間の場所にいる俺のすぐそばで何かが光った。それはリヴァーンの聖剣だった。
聖剣は一直線に俺の体目掛け飛んでくる。俺は魔剣ラキを振るい、それを天高くにカチ上げた。回転しながら上空を舞う聖剣は輝きのままに分身して数を増やした。
それはいつの間にか人の形を成し、人型の化け物に変わった。
「俺の聖剣が旅行者を殺すのが早いか、お前が俺を殺すのが早いかだな」
「大丈夫さ、クラウスくんは負けない。それよりも自分の心配をしろ」
閃光が煌めき、始原世界では剣戟が舞う。
そうだ、こっちは俺が何とかしないといけないんだ。
「ラキ、永劫展開。魔剣解放」
まだ負けたわけじゃない。ここからだ。
モブ顔勇者は世界を救わない 芹 @seli1120
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