子ども達と母上
全員の出産が終わり、年を越すことになった。
伴侶達の子がまだ小さいという事もあり、王族関係の事はエドガルドに任せてしまった。
なので、王族関係行事が終わると「頑張った私を甘やかしてくれ」と言ってきたのでいろんな意味で甘やかした。
エドガルドの腰がしばらく抜けて立てなくなったのは私の所為ではないと思いたい。
伴侶達は、出産した身なのでそういう事をするのは体に負担がかかるというので、体を触れあうだけで終わるというのをしていた。
じゃないと拗ねるからネ!
「まぁま」
「私が産んだが男だからパパだよブルーナ」
「まぁま」
「むぅ……」
ママ呼びが未だ納得できないクレメンテがブルーナにいい聞かせているが効果はゼロ。
「大丈夫ですよ、大きくなれば変わると思いますから」
「そうですかね……?」
「ぱぁぱ、ぱぁぱ!」
「うん、アルバートは分かってるなぁ!」
私とアルバートの両方をアルフィオはパパ呼びしていた。
「……」
「クレメンテ、抑えて、抑えて」
「分かってます、が、後でアルバートにお話が」
「愚痴るだけにしましょうね?」
赤ん坊というか子どもは千差万別、育て方が同じでも同じようには育たない。
親が違えばそっくりなんてまずない。
なので、こういう違いが生じる。
「ディアナは寝てばかりだな、側頭部が垂直にならんようにするのに気を使う」
「デミトリオはおっぱいほしがってて……ちょっとたりなくて……あの、母乳液、どこにありますか?」
「これだな、ほら」
「あ、ありがとうございます」
ディアナは寝ては乳を飲み、乳を飲んだら寝てを繰り返す手が全くかからない子だった。
デミトリオは最初は小さかったが、母乳を飲むようになってから大きくなり、エリアの授乳だけでは足りず母乳液……前世で言う液体ミルク? だっけかそんな奴で代用している。
あんなに小さかったのに、今じゃディアナと同じ大きさになってるよこの子。
小さくか弱い命がここまで成長してすごいなぁと思う私であった。
そんなことを考えているとディアナ以外が一斉に泣き出した。
「どうしたのです? ああ、これは……」
「なるほど」
「えっと多分……」
「……私、ですか?」
とたずねれば三人が頷いた。
この子達は生みの親である伴侶以外に、父たる私を認識している。
不思議なことに、こんな小さいうちから。
というわけでー
座り込んで、赤ん坊三人を抱きかかえる羽目になった私である。
「ブルーナ、私の髪は食べ物じゃないですよ」
「アルフィオ、私は乳はでませんからね?」
「……デミトリオは寝てしまったようですね」
三者三様の行動をするのに感心しながら、私は赤ん坊を、我が子を抱き続けた。
動いていた二人も、しばらくするとすやすやと私の腕の中で眠ってしまった。
「……」
──さて、どうするのが正解か──
下手に動くと起きて泣き出す可能性が高いのでこのままなのが正解なのだが、現在母上に呼び出されている。
──どうしよう──
「ダンテ、一体何を……あら、これなら仕方ないわね」
時間になっても来ない私を迎えに来たらしい母上が納得したような声をあげる。
「
「あ、アデーレ妃様」
「アデーレ妃様」
「アデーレ妃様」
伴侶勢全員硬直し、緊張状態。
「そんなにかしこまらなくていいのよ。もっと気軽にアデーレとか、
母上の言葉に全員がぶんぶんと首を振る。
まぁ、そうだろう。
「どうしてかしら」
「母上、伴侶の方々を困らせるのはやめてください、それより要件はなんですか?」
「いえ、貴方が育児に困っていることは何か無いかと聞きたかっただけよ?」
「既に困ってます、初育児なので」
「どうしたらいいか分からないという事?」
「ええ、取りあえず今は動かないのが正解かなと」
「でしょうね」
母上は我が子達を見ながら、穏やかに笑っている。
「母上、そういえば父上は?」
「また、退位したいと駄々をこね始めたからリディア
「父上ェ……」
あれだけ祖母の説教を受けているのに、まだ退位したいと言うあたり、相当母上とイチャイチャしたくてたまらないのだろう。
「母上は、父上のことをどう?」
「頭はいいのに、だだをこねる子どもっぽい人とみてるわ。愛しているけれども、やるべきことはちゃんとして貰わなくては」
私は父上と結婚したのが母上で良かったと心から思った。
「貴方が王位に就くのは当分後だからそれまで子育てをがんばりなさい」
「はい、母上」
「それはそれとして──」
母上が周囲を見渡し、ディアナに目をつけた。
「ねぇ、この子抱っこしてもいいかしら?」
とカルミネに聞くと、カルミネはぎこちなく頷いた。
「ありがとう」
母上は心底嬉しそうに言うと、ディアナを抱っこした。
それでも起きないディアナ、大丈夫かこの子?
「ぐっすり寝てるわね、ふふ、おばあちゃまですよー」
寝てるディアナに言っても意味がない気がするが、母上が満足ならそれでいいか。
「
「どうかしたのかしら、クレメンテ?」
「アルバートの子はダンテとアルバートを両方ともパパと呼ぶのに、私の子は私をママと呼びます。どうしたらよいでしょうか?」
「んーでも産んだのは貴方だからママなのはあってるはずよね」
「そう、なのですが……」
「大丈夫、子どもが大きくなったら色々と変わっていくわ」
「そうでしょうか?」
「ええ、そうよ」
「……」
クレメンテは納得しそうでしなさそうな曖昧な雰囲気をだしていた。
「大丈夫よ、きっと」
母上はのほほんと答えた。
「そういえば、フィレンツォの姿が見えないのですが……」
「ああ、貴方達の子の専任の世話係を連れてきてくれてるわ」
「はい?」
今までも世話係はいたが、専任はいない。
誰だろうと思っていると。
「お妃様、お待たせし申し訳ございません。さ、お二方中へ」
「「はい」」
エリアとクレメンテの目が見開かれる。
「ブリジッタ・アルテミジアと申します」
「カリオ・マニョーリャと申します」
「「今後宜しくお願いします」」
二人が恭しく頭をさげると、クレメンテとエリアがフィレンツォを見る。
「ど、どういう事です?!」
「このお二人が、皆様のお世話と、御子のお世話をしたいと申し出て、しばらくの間訓練していたのです」
「カリオおじ様……」
「エリア様、私めはうれしゅうございます。貴方にお仕えし、貴方の子の成長を見守れることが」
「ブリジッタ……」
「私もカリオ様と同じ意見です。クレメンテ様、どうかこれからもお仕えさせてください……」
と、感動的な対面をしているのをアルバートとカルミネが見守る。
「俺等従者いねぇもんな、というか俺の従者がカルミネだったし」
「そうだな」
「お二人は私が担当します、これからもダンテ様共々お仕えしますので宜しくお願い致します」
フィレンツォはそう挨拶した。
いつも通りだけどちょっと違った事が起こりそうだと思っていると──
「ふぇええ……」
ディアナが泣き声を上げ始めた。
「あら、起きてしまったわ、おっぱいの時間かしら?」
「すみません、アデーレ妃様……」
「もう、いいのよ、かしこまらなくて」
母上はカルミネにディアナを返し、カルミネは授乳室へと移動していった。
「ダンテ」
「な、なんでしょう母上」
「貴方は無理をしすぎないでね」
「……はい」
再三言われている事に私は頷いた、自信なさげに──
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