墓標
緑川神威
棺探し
私は死ぬ。そして、
特別に辛いことも
先程も言ったが、特別、人として生きることに絶望した訳ではない。只、特に才もない今の自分が必要かわからなくなったから、面白くない、呆れ、を感じたから、とでもしておこう。所沢にある築30年は越える階段が1段外れかけている自宅から出て、無心で歩き続けて、どれ位の時間が経ったか。流石にとっくのとうに、東京入りは果たしているだろう。ちらっと、何かの店の看板を見ると、「調布」の文字が見えた。もう調布まで来たのか。だが、「武蔵野台地」という狭い領域は抜け出せないらしい。‐武蔵野台地、北を荒川、入間川、南を多摩川に囲まれた、青梅を頂点とする扇状の土地。面積は700k㎡程。‐狭いなんて言ってみたが、井の中の蛙である私からすれば、十分に大海なのだろう。ふと、気になって、ズボンの右ポケットにある筈の、睡眠薬を触ってみた。あった。まあ、ないならないで、適当な線路に飛び込んでみてもいいさ、迷惑を被られたんだ、たまにはかける側に回ってみてもいい筈だ。
流石に歩きっ放しだからだろう、辺りの景色も霞み始めてきた。只でさえ、夜なのに、更に見辛い。いや、待てよ。逆に、この
また、歩く。そういえば、私は何処を目指していたのだろうか。忘れてしまった。死にに来たのは覚えてる。嗚呼、そうだ。死に場所を探していたのだ。そこが、私の墓標だ、棺だ。寺と家ばかりのここでそれを探すのには、骨が折れそうだ。寺で死ねば、仏にでもなれるかな。
気付いたら、
「さて、一眠りするか。」
墓標 緑川神威 @hrdream
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