合成音声音楽の生息域

ソーシャルメディアの生存関係——Twitter、Instagram、TikTok

ソーシャルメディアの生存関係——Twitter、Instagram、TikTok①

 2020年8月10日にソーシャルメディアのTwitter上で生じた「#TwitterとTikTok合併許すな」というムーブメントは、TwitterユーザーがTikTokに対する印象を認識するにおいて、大いに参考になる出来事であった。当時のトランプ政権が主導となり展開された中国の企業ByteDance社が提供するソーシャルメディア「TikTok」の買収をめぐる騒動は、米国のMicrosoft社やTwitter社がその買収先として名乗りを上げ、大きな注目を集めた[1]。この一連の動きの中で、日本国内のTwitterユーザーがTikTokの買収によって今日のTwitterの持つ空気感が損なわれるのではないということを危惧し、上記のハッシュタグを中心に多くの批判的意見が示されたという事件である。その批判内容にはTikTokの規約におけるプライバシー上の問題、そしてTikTokで使用される楽曲やBGMの著作権上の問題、そしてTikTok上で展開されるユーザーの文化に対する心理的拒絶の三つがあげられる。最前者はTikTokの利用規約における「お客様は、当社に対し、お客様のユーザー名、写真、声、および似顔絵を、お客様のユーザ・コンテンツの提供元としてお客様を特定するために、無償で使用する権利を許諾します。」という箇所によって[2]、投稿されたコンテンツに対しByteDance社が自由にそれらを利用できる点で個人情報上の問題が指摘されている。次の批判はTikTokの特徴である動画と映像の組み合わせの際に、使用される楽曲、音声を無断使用している点で批判がされている。広告としてYouTube上で配信された以下の動画では、テレビアニメ「銀魂」の一場面の音声が使用されており、この使用における著作権上の問題が挙げられている[3]。 だが最後の心理的拒絶については、それがTikTokの構造的な批判ではなくユーザーの生成するコンテンツに対しての拒絶であるという点において、これまでの二つとは根本的に異なっている。それらの批判を展開するものたちはTwitterを「陰キャ」といい、一方でTikTokを「陽キャ」のコンテンツとみなしたうえで、その文化の違いゆえに一体化はされるべきでないと主張する[4]。しかし、自身を「陰」とし、TikTokをそれとは反対の「陽」であるというTwitterユーザーの主張は、なぜ成立しているのだろうか。無論、Twitterがテキストをベースとしたソーシャルメディアであり、TikTokが動画をベースとしたソーシャルメディアである以上は、両者の構造上の違いには注意しなければならないだろう。その一方、Twitterは10年以上の歴史の中で多くの機能を追加しており、現在では動画を投稿する機能も組み込まれている。にもかかわらず、両者の間にある文化的な違いとはどのようなものなのだろうか。この問題を考察することは、現代の情報社会において乱立するソーシャルメディアたちがどのように共存し、互いの文化を持っているかを考察するにおいて、有用な観点を提供してくれるだろう。


 以上より、本稿では2006年に登場したTwitterと2016年に登場したTikTok、そして2010年に登場したInstagramをという三つのソーシャルメディアを対象に、それらの構造的制約とそれを受けつつ生成されたユーザーの文化を比較する。TwitterとInstagram、そしてTikTokはそれぞれ「テキスト」「画像」「動画」がベースとなっており、テキストから動画の順にコンテンツに含まれる情報量は高くなる。この点で、より多くの情報量を含んでいる動画を中心としたソーシャルメディアが最も近年に登場している。その一方で、テキストをベースとしたソーシャルメディアであるTwitterは後に登場する画像や動画を投稿する機能を含ませながらも、今日でも継続して利用者を増加させている[5]。Twitterはアプリケーション内で画像を投稿できる機能をInstagramの登場翌年である2011年に搭載し、その次に動画を投稿する機能を設けている。これらの機能はInstagramやTikTokの機能と重複するものであるにもかかわらず、互いに共存している。同様な事象はInstagramにおける「ストーリー」機能においても同様であり、短い動画を録画、編集し投稿する機能はTikTokの基本的な構造に類似しているものの、互いのソーシャルメディアは共存している。


 このようなソーシャルメディア間に存在する文化の比較を目的に、本稿ではTwitterとTikTokの両ソーシャルメディアにおける構造的特徴とその中で形成されるユーザーの文化を先に明示し、その違いがどのように形成されたのかを2010年代におけるInstagram上でのユーザー文化に見出す。

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