第31話

夜も更けて、ライドが眠ったのを確認してからウカノは大愚へと連絡を取ろうと、目を開けた。

まだ視界は若干歪んでいる。


あの後。

ライドに運ばれてされるがまま、治癒士の治療を受けた。

その後は自室に放り込まれてしまったのだ。

ようやっと、ライドが眠ったので大愚たちに今日のことを報告できる。


いつもの様に指を滑らせて、薄い画面を表示させる。

すると、映ったのは初めてみる顔だった。

大愚でも、エステルでも、ましてやアエリカやトオル、メイでも無い。

それは、少女と女性の二人であった。

どちらも黒髪で、象牙色の肌をしている。


「おや、通信か。

えーと、この顔は、あぁ、ウカノ少年だな。

はじめまして」


「おおー、なるほどこうやってやり取りするんですねぇ。

本当、漫画やアニメの世界だなぁ」


女性が楽しそうに、少女は興味津々にそんなことを言ってくる。

女性は続けた。


「私たちも保護された者だ。

よろしく。

私はコウと呼ばれてる、だからコウって呼んでくれ」


「あ、自分はミズキって言います」


それぞれ、名乗ってきたので、


「は、はぁ、どうも。

ウカノと言います」


ウカノも名乗った。


「知ってる。

名簿を渡されたからな」


コウはそう言って微笑んだ。

クラスメイトや妹達とはまた違ったタイプの女性達だ。


「えと、大愚さんかアエリカさん、エステルさんは?」


「その3人は出払っている。

知ってると思うが、こちらは襲撃を受けてる最中なんだ。

私たちは非戦闘員で、ここでお留守番をしてるというわけだ」


「は、はあ」


「何かお伝えすることがあるなら私たちが聞きますよ」


ミズキの言葉を受けて、ウカノは大愚への伝言を口にした。


「ふむふむ、了解」


「伝えておきますね」


そんな反応を返してきた直後、ミズキが続けた。


「毒を受けた、という事ですけど。

大丈夫ですか?」


「へ?

あ、はい。

まだちょっと目が変ですけど、大丈夫ですよ」


「神経系の毒か。

しかし、ふむ」


コウは呟くと、まじまじとウカノを見た。


「いくつか質問、いや確認をさせてくれ。

ここで留守番をしてる関係で、ウカノ少年の個人情報は共有している。

その上で聞くんだが、君はその世界ではほとんどダメージを受けない体質なんだよな?」


「えぇ、はい」


ウカノが頷く。

ミズキも呟いた。


「チートってやつですよねぇ」


「にも関わらず、君は現在ダメージを受けている。

間違いないな?」


「はぁ、まぁ、そうですね」


ある程度回復したものの、爛れていた場所はまだ完全に治っていない。


「……これは、大愚から話を聞いた上での素人考えだが。

もしかして、君の身体情報が敵側に漏れてる可能性はないか?」


一瞬、何を言われたのか理解できなかった。

そのためウカノの口からは、


「……はい??」


そんな間抜けな返ししか出てこなかった。

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