おっさんん車夜話外伝 オープンカーにまつわる色々な物語
栗原慎一
第1話 良平さんとたか子さんのドライブデート
時はまだ昭和
時空を捻じ曲げて発売された NA
すぐに買った男 良平さん 見合いでたか子さんとうまく行く
そして 式に向け疾走中の二人の物語が始まる
8月の終盤、また暑い日が続いていた
それでも、まだ田んぼや畑もあり2020年代よりはかなり涼しい
やはり田んぼの水による冷却効果は絶大であった
それでも30度を超す日に、たか子さんとのデートなった良平さん
自慢のロードスターで、高原ロードを走って と夢想していた
ところが
「海岸線を 日本海側の越前で友人が嫁に行ったお店があります
そこへご飯を食べに行きましょう」
とたか子さん
女性からのコースリクエスト デートで男が考えてやらかすより余程危険は少ない
良平さん 「そのコースで」二つ返事
だが、その道をよくよく訊くと 河野海岸有料道路・・・・・・
この時期 海水浴客とかちあい渋滞のポイントもある
「渋滞で遅れるかもしれませんよ」ときっちり釘を刺す
とりあえず屋根は〆て、名神から北陸道に抜けていく
木之本の辺りのサービスエリアで休憩として、二人で缶ジュースを買い
ベンチに座る
「オープンカーなのになぜ開けなのですか」とたか子さん
どう見ても 普通の化粧にロングヘア 纏めても居ないし帽子もない
「オープンって風が巻き込んだりで大変なので 景色の良い所で開けます」
と なんとか誤魔化して再度の北陸道を北上していく
良平さん 見合いをする前 そう6月の晴れた日に
会社の女の娘に「オープンカー カッコいいです」と言って貰い
よし行こうと お昼休みに ブッチして 小一時間ドライブしたことがあるのだ
30分で無口になり会社に戻る頃には、完全にご機嫌ななめ
そりゃ、埃まるけになるわ、髪の毛はバサバサ、顔が日に焼けて痛い では当然だ
でも良平さんには、ご機嫌ななめの理由が解らず、困り果てて 途方に暮れる
オープンカーカッコいい乗せて下さい ドライブ 要望に答えたのに理不尽な対応だ
挙句に 良平常務に酷いことをされた との噂まで立ちはじめる
ハゲ専務が来て、散々の嫌味を言われて 父にも叱られた
見かねたお局様の涼子さんが、当事者の千歌ちゃんを呼び出し事情聴取してくれて
涼子さん「一時間でしょ オープンの地獄の入口の手前よ」と言い放つ
「え、もうめちゃくちゃ大変でしたよ」と千歌ちゃん
「まだ 最新のロードスター 私のカレのバーキン7に比べたら天国よ」
「はい?? 先輩も体験していると」
「結婚を取るか そのバーキン7を取るか でバーキン7に負けたわ」
とマルカツのバーキン7の写真を千歌ちゃんに見せる
「これって、前のガラスもろくに無い ドアもない」
「しかもダンプの排ガスなんて顔に直撃よ
でもね、こう言うのが好きな人なの 諦めて許してたら婿養子に来てくれるわ
両親は大喜びでガレージ発注してる」
「え、先輩が結婚!! それは置いておいて 手も出してくれないんですよ」
「それは良平さんには無理 こっちから手を引ってラブホに引きずり込まないと」
「はい?」
「そういう性格なの
だから千歌ちゃんはオープンの本気の地獄も味わっていないし
手を出さないのは仕方がないこと 千歌ちゃんのミスよ
良平常務に謝りに行きましょう ディナーくらいは奢ってくれる様に話をするわ」
というお局の涼子さんの暗躍で、千歌ちゃんとは和解できてホットしてると
・オープンは女性には厳しい
・あけるならUVケアから全てオープン対応に 帽子は必須
・出来ていないならMax15分で景色のいい処
とオープンカーのイロハをバーキン7で地獄を味わった涼子さんに説明される
千歌ちゃんと和解できるわ、オープンの地雷を体験者に聴けるわ
ディナー程度 格安な投資であった
ただ一つ 涼子さんも言わなかった地雷が有る
そんな見え見えの地雷くらいは自分で気が付きなさい、との涼子さんの思いやりだ
忠告を真面目に守り、河野海岸有料道路まで抜けて あと15分で 件のお店
屋根を開ける良平さん
青空天井となり、日本海を見ながら気分良く走っていく 筈だった
天気もいい 青い空 左手には日本海が有る筈だが堤防のコンクリートで見えない
そう、もともとが車高の低い車な上に車高調節の足を入れて30mm下げてる
挙句に、フルバケット化でヒップポイントも20mm下がっている
しかもたか子さんは背も低いので更に視点が下がり 堤防しか見えない
お店に着き屋根を〆て、二人で窓際の席で日本海を見ながら海鮮を食べて
帰途に着く二人 屋根は閉めっぱなしでエアコンが仕事をする
たか子さん
15分でオープンの地獄の片鱗を味わい 開けっぱだと思うと背筋が凍る
15分しか屋根を開けなかった この事実を評価することとして
海岸線でほぼ海が見えなかったことは 黙って飲み込むこととする
良平さんも一生懸命、私のために気を使ってくれたのだ
この人と縁を結べてよかった と
今宵も深けたようで
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注 物語の年代は80年代初頭
ですが、作者の中ではNAの発売は79年です
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