もぐらに侵略された世界でもぐらを育てる

田中山

第1話

 ある日、アイツらは地面から這い出てきた。


 まるで地獄の底から蘇ってきたかのように、奴等は地上へと姿を現したのだ。

 俺はその光景を、ただ黙って見ていることしかできなかった。


 そして、今……。


 あの時と同じように、目の前には巨大なもぐらが鎮座している。

 ただ、あの時の俺とは違う。


 コイツを……このもぐらたちを殺す鍛錬を積んできた。


「もう二度と……お前に好き勝手はさせねぇよ」


 俺は旧式のヴァークライト光線銃を構えて、引き金を引いた。

 発射された光線は、真っ直ぐにもぐらの眉間を撃ち抜いた。


「……!」


 だが、撃ち抜かれてもなお、もぐらは倒れることはなかった。

 それどころか、撃たれた箇所が再生していく。


 そう、人類がコイツらに負けた大きな要因の1つがコイツらの再生力だ。

 どこでこんな再生力を身に着けたのかは知らないが、厄介なものだ。


「おい、突っ走るな都賀!」


 後ろから桃園先輩の声が聞こえたが、気にせずもぐらに向かって走り出す。

 すると、もぐらは口を大きく開けて俺を飲み込もうとしてきた。


「遅いんだよ!!」


 俺はもぐらの攻撃を避けつつ、頭部目掛けて光線銃をぶっ放す。

 だが、俺の攻撃が届く前にもぐらは再び地中へ潜ってしまった。


「くそっ!またか……」

「おい、都賀つが!勝手に行動するんじゃない!」


 桃園ももぞの先輩が俺に追いついて来たようだ。


「すみません。でも、あいつを倒すにはどうしたらいいんですかね?」

「さぁね……。しかし、このままではこちらの分が悪いことは確かだな」


 もぐらが再び地表に現れたと同時に、俺と桃園先輩は奴に向けて攻撃を開始する。

 しかし、俺たちの攻撃は効かない。


 いや、それだけではない。


「ぐあッ!!」

「先輩!!!」


 先輩が奴の爪による一撃を受けてしまい、地面に叩きつけられてしまった。


「くっ……大丈夫だ。それよりヤツが来ているぞ!!」

「え?うわっ!!」


 いつの間にか、俺のすぐ傍まで接近していたもぐら。

 そのまま俺を掴んで、地面の中へと引きずり込もうとしてくる。


「都賀ぁあああ!!」

「離しやがれぇー!!」


 必死に抵抗するが、一向に抜け出せる気配はない。

 むしろ、徐々に俺の身体は地中深くへと沈んでいく。


「くそぉ……」


 俺の意識はだんだんと闇に沈んでいった。



 …………。

 ここは……どこだろう?

 

 何も見えない真っ暗な世界が広がっている。

 俺は痛む体をゆっくりと起こす。


「確か……ここに」


 胸ポケットに入れておいた携帯型万能ツールを引っ張り出し、ライトを点ける。

 明るくなった周りを見渡すと、もぐらが徘徊したらしき跡があった。


 そうすると、どこかに地上に出られる穴があるはず……。

 しばらく辺りを探してみると、ちょうど人が通れるぐらいの穴を発見した。


 俺はその中へと入り込む。


「よし、ここなら出られそうだな」


 俺が這い出てきた場所は、少し開けた場所だった。

 そして、そこには……。


「ん……?」


 小さいもぐらが居た。

 小さいって言っても1mぐらいはあるが。



 周りに他のもぐらは居ない。


「はぐれたのか……?」


 俺はとりあえず、目の前にいるもぐらを抱きかかえてみる。


「お~軽いな」


 俺が抱いても嫌がる素振りを見せないので、このもぐらは大人しい性格なんだろうか。


 でも……。


「すまないな、お前は今殺しておかなきゃいけないんだ」


 俺は光線銃をもぐらに突きつける。

 ……いや、殺すより持ち帰ったほうがいいんじゃないか?


 研究材料?


 使役化?


 何にせよ、抵抗しないやつは使える。

 俺はもぐらを抱きかかえたまま、外に出る穴を探し始めた。

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