第28話 シキル杯 チーム主人公その3
「始まりました!わたくし
◯
カンナは今回で2回目の出場となるシキル杯、前回は知り合いに誘われる形で参加したが、今回は自分が誰かを誘う側で参加する。
その緊張感のせいか、いくら拭いても手汗が溢れ出す。
だが、自分以外の2人は今回が初のシキル杯だ。自分以上に緊張しているだろうから、どうにかその緊張をほぐしてやらねば!と思っていたのだが……
「おおー、始まったな。いや、いつ見てもシキルさんは、俺と同じ個人勢に全く見えねぇわ」
「そうよね、それに一度話した事あるけど、その時もアタルちゃんみたいに、企業勢嫌いオーラ出して無かったからね」
「お、俺だって!べ、別にそんなオーラ出してねぇーし」
ものすごく和気藹々とはしゃいでいた。
「ちょっとアンタら、もうちょっと緊張感持ちなさいよ!2人の緊張をほぐそうとしていた私が、バカみたいじゃない!」
「はぁ……、しょうがねぇなぁ。あー僕ちゃん緊張して何もできないよ〜!カンナちゃんたちゅけて!」
「バカにしてんのか!」
「ほら、これで緊張も晴れただろ」
「////」
まさか、自分が逆に緊張をほぐされるとは思っていなかったカンナは、そのサラッとそう言う事をするアタルに少し赤面した。
「ほら、2人ともイチャイチャするのは別にいいけど、そろそろ私達が呼ばれる番よ?」
「は、はぁ?べっ別にい、イチャイチャなんてしてねぇよ!なぁ、カンナ」
「……イチャイチャ。あ、えっと何?」
カンナのその様子を見たアタルはため息をつき、ナカヨはそんな2人の様子を見て優しく微笑んだ。
そんな事をしているとカンナ達は本放送の、シキルの配信にお呼ばれした。
「それでは次のチーム、【チームアカナ】もとい、主人公チームです」
「えっ、ちょっと主人公チームってどういう事ですか?」
「あれ?カンナさん知りませんでしたか?【チームアカナ】の配信で、初めは仲間との喧嘩からの次の日には、仲良くなってパワーアップして、さらに次の日には別メンバーが何か思い悩んで、そしてまた次の日にはパワーアップからの初優勝で、その動きがバトル漫画とかの主人公パーティーみたいで、今ネットでは、あなた方はチーム主人公って呼ばれていますよ?」
改めて言われてみると、シキルの言う通りだと思ったのと同時に、なぜか先程から他の2人が全く喋っていない事に気づいた。
「ねぇ、もしかしてだけど、アタルとナカヨ2人ともこの事知ってた?ねぇ?」
「いやまぁ、知ってたから知ってないかだと、普通に知ってたな。」
「私も同期から茶化されたりしたから、知ってたわね」
「教えてよ!」
それは心からの叫びだった。
「それで改めて、主人公チームの皆さんです。どうぞ」
「はい、【チームアカナ】のリーダーUPライブ所属のカンナです。よろしくお願いします」
「俺はチーム主人公の主人公のライバル役の、個人勢 突翼アタルだ!」
「はーい、私はチーム主人公の2人を諌めるお姉さん役の、ファースト所属の渋田利ナカヨです。よろしくお願いします。」
「いやぁぁぁ!!!やめてぇぇぇ!」
その後は、各々の意気込みなどを聞いて自己紹介は、終わりチーム主人公の面々は、自分達の配信枠へと戻った。
「ちょっと2人とも!チーム主人公って何なの?と言うか何で教えてくれなかったの?2人ともちゃっかり、紹介文まで考えてきてるし!」
「いや、俺は教えた方がいいって言ったんだがな。ナカヨの奴がな……」
「だってその方が面白そうじゃない?」
「ナカヨー!!」
「きゃー!」
そんな事をしていると、三人は他の紹介を見るのを忘れ、カンナで少し遊んだり、それでいじけたカンナのご機嫌取りなどをしていた。
それから時間は過ぎ、本配信でゲームの説明をし終えると、第一試合が開始となった。
カンナ達は初動を、物資の美味しい激戦区に降りるのではなく、物資は乏しくとも安全なマップの端にある、小さな集落の様な場所に降り立った。
そこで前衛であるアタルとカンナに、強めの防具とショットガンとサブマシンガンを持たせて、指揮官であるナカヨは状況把握のためあまり前線に出ないのと、周りを確認する為にスナイパーライフルを担ぎ、サブの武器としてマシンガンを手に持ち移動を開始した。
カンナ達のチームの一試合目は、出来るだけ敵とは戦わずに、弱った相手を狙う漁夫の利を狙った戦い方を選び、そのおかげでたった一度の戦闘で二つの物資を奪えたカンナたちのチームは、序盤にして既に物資が潤ってきた。
そしてマップが1回目の縮小を始める時、いつもならこの辺りで人数が60人から50〜40人程まで減っているのだが、今回はどこかのチームが暴れているのか、それとも皆がキルに飢えているのか、残り人数が既に二十人を下回っていた。
「ちょちょちょちょっと!早くない減るの?」
「早いって何が?」
「いやだから人が減るのもう19、いや今18になった。」
そう言われてアタルとナカヨも人数を見ると、その減りの速さがわかった。
そしてそれを誰がやっているのかをアタルが確認しようとした時、アタルの横を銃弾が掠めた。
「敵だぁぁ!」
アタルが大声で叫ぶと、カンナとナカヨは咄嗟に物陰に隠れた。
「ごめん。見逃してた……」
「私が戦闘中に、よそ見する様なこと言ったから……」
「お前ら、そんな事今はどうでもいいから応戦しろ!」
「「う、うん」」
カンナが敵からの攻撃に応戦する為に、物陰から顔を少し出して敵を確認しようとすると、そこを的確に狙ってきた。
その正確さと、一瞬見えた状況で相手が誰だかをカンナは瞬時に理解した。
それは前大会でカンナ達を何度も打ち倒し、尚且つ大会も第二回と三回を優勝するという、好成績を収めているチームだ。
「やばい、相手は前回優勝チームだった」
「マジかよ!どうする?このままやるか?それとも逃げるか?」
「え……えっと、に、逃げ……」
そう言いかけたところで、ナカヨはその続きを言うのを止めた。
いきなり黙り始めたナカヨに、カンナとアタルが2日前も少し様子がおかしかったのもあり、少し心配しながらも敵を寄せ付けない様に弾幕を張った。
「ねぇ、2人とも私達がチーム主人公じゃなくて、【チームアカナ】の目標は、3位入賞?それとも優勝どっち?」
「それ今関係あるか?」
「ある!」
いつものほほんとしているナカヨが、ハッキリとあると言った事に、アタルは少し驚きながらもカンナと口を揃えて言った。
「俺(私)達の目標は、優勝だ!!」
「そう、ならあのチームも、いつかは倒さなきゃいけないよね?」
「おいおい、それは楽しそうじゃねぇか!」
「よし、私は前回やられた借りもあるし、その分も返しちゃおっかな!」
「じゃあ2人とも行くよ!」
相手とカンナ達が居るのは、周りを崖に囲まれた中にある小規模な村で、カンナ達はその村の中で小さな家の中に3人が入っているのに対して、相手は家には入っておらず、家の物陰からカンナ達を狙っていた。
その事をナカヨが2人に伝えて、今咄嗟にだが考えた作戦を2人に伝えた。
それを伝えると2人はその作戦を了承し、各々が自分に授けられた作戦を、遂行する為に動き始めた。
とは言うものの、この作戦はその内容の薄さから、ほぼほぼ作戦とは言えず、簡単に言ってしまえば、単なる挟み撃ちだ。
家の中からナカヨが落ちている武器含め、色々な武器を使う事で、3人が家にいると誤認させている間に、カンナとアタルに敵の裏を取ってもらい、そこでナカヨも家の外に出て、一気に詰めると言う決まれば強いが、ナカヨが1人だと気付かれるまでに、蹴りをつけないといけないタイムリミットのある、カンナ達に取ってはこの大会中での、1番の作戦になるだろう。
ナカヨは2人に気づかれない様に、グレネードなどの物資も惜しまずに使い、相手の視線を自分に集中させる。
その間にカンナは自分の使用している忍者キャラの必殺技である[
その途中ナカヨが被弾した事により一瞬ピンチになり、仲間を見捨てたくないカンナは、ナカヨを助けに行きたい所を作戦の為にグッと我慢し、敵の背後へと回った。
そしてそれと同時に敵はナカヨが家の中に1人だと気づき、3人で家中に突っ込もうとした所をアタルが油断した敵の1人に、サブマシンガンの残弾を全て打ち込み、1人ノックアウトさせた。
裏に回れた事に気づいた敵は、カンナ達に応戦する為に後ろを向いた所を、スナイパーライフルからショットガンに持ち替えたナカヨが、家から勢いよく出てきて、2人のうちの1人にゼロ距離から全弾命中させ、その弱った敵をカンナが苦手だった中距離から、しっかりと弾を外す事はなくその脳天にぶちこみ倒し、残りの1人も3人の力を合わせて倒す事に成功した。
「おっしゃあぁ!!!!!」
「やったあ!!」
「やりましたね!」
3人は各々雄叫びをあげ、喜びあった。
まさか全員無事で倒せると思って居なかった3人は、全員が五体満足で生存している事に喜びあった。
「やりましたねお二人とも!」
「今回はナカヨの作戦が、ばっちり相手にハマったおかげだよ!」
「そうだな、それも俺達が移動する間の時間稼ぎもちゃんとやりきって、更には敵にゼロ距離でショットガン当てやがったんだ。誇っていいぜ」
「ありがとうございます。ですが、これは2人と一緒だったから、思いついた作戦です。ですので、ここから頑張って私達3人で絶対優勝……」
ナカヨがそう言った瞬間、どこからか手裏剣型のグレネードが2個飛んできて、それがナカヨの額に刺さった。
「え?」
それと同時にナカヨは2人の目の前で爆散した。
先程まで一緒に勝利を分かち合って居たナカヨがいきなり爆散した事に驚き、カンナはその場で一瞬硬直した。
すぐさま敵の攻撃だと気づいたアタルは、カンナに忠告しながら物陰に移動しようとした。
「おい、カンナボーッとするな!これは敵の……」
そう言ったアタルの脳天をどこからか飛んできた鉛玉が一撃で撃ち抜き、頭を撃ち抜かれたアタルは一撃で絶命し、その場で膝から崩れ落ちた。
「あ、アタルまで……ど、どうして?私達3人で優勝しようって、約束したじゃない!」
そう悲しみに叫ぶカンナの元に、堂々とした歩みで近づいてくる存在が一つあった。
「あ、アンタが……アンタがナカヨとアタルを!」
カンナが相手に叫ぶが、相手は何も答えない。
「うあぁぁぁぁ!!アタルとナカヨの仇ィぃぃ!!」
半狂乱の中、アタルに教わった通りに相手を照準の中に入れて弾を打つ、だが相手はその弾をスライディングやジャンプを併用して、いとも簡単に避けカンナとの距離を一瞬で詰めてきた。
「うわぁぁぁぁ!」
弾が当たらない恐怖に、いきなり仲間を2人も失った衝撃で、敵を見失ったカンナは適当に暴れながら銃を乱射したが、結局弾が切れるまで撃ち尽くしても、弾が相手に当たる事、いや相手を再度視認する事は叶わなかった。
するとカンナが適当に弾をばら撒いている間、ずっとカンナの背後に居た存在が、その手にハンドガンを一丁持っており、それをゆっくりとカンナへと向けた。
既に弾は打ち尽くし、更には回復などのアイテムもナカヨに預けていたため、今カンナの手持ちには何にもなくなっており、何もできない状態になって居た。
もう何も出来なくなったカンナは、もう無理だと諦めようとしたが、そこに死んだはずの仲間の声が聞こえた。
「戦え」「まだ負けてない」「今ならやれる」「いけ」「いけ」「いけ」
「いけぇぇぇぇ!!」
そう叫びながらカンナは己の拳を、硬く握り締め振りかざそうとした瞬間、相手は何の躊躇もなくカンナに突きつけていた銃で、カンナを撃ち倒した。
◯
「はい、勝ちぃ!」
「余裕ブイ」
「流石ですお兄様!」
ーーあとがきーー
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