第25話 虫ゲロ障(仮)無人島編2日目その3

「前回のあらすじ、前回アクトプレゼンツな無人島レースを楽しんでいた、虫ゲロ障(仮)のメンバー達だったが、そこに混ざりたかったのか森のクマさんが出現!そして追いかけられる3人とカメラマンに、全く別の場所で難問に苦しむ監督、一体全体これから虫ゲロ障(仮)のメンバーは、どうなってしまうのか!」

「前回のあらすじとか、馬鹿なこと言ってないで、あんたもこれからどうするかを考えなさいよ」


アクトがふざけて前回のあらすじを言うと、そんな場合じゃないと冠に怒られた。


それと前回走り疲れて死にそうな顔をしていたネガは、いつも通りの定位置でぐったりしていた。


「これからどうするって、逃げるんじゃないのか?」

「じゃあ聞くけど、あんたは熊から逃げ切れると思ってるの?さっきから全然距離が離れないどころか、ちょっとずつ距離を詰められてるし!」


冠のその発言にカメラマンも全力で頷いていた。


「俺とネガだけなら、簡単に逃げ切れると思ってるぞ。それと熊の走る速度は60キロって言われてるから、そら人間如きじゃすぐに追いつかれて、終わりだからな」

「それじゃあどうして、あんたは逃げ切れるって言うのよ!」

「そんなん木の上に登って、木から木へと飛び移り続けて、物理的に熊が追ってこれないところまで行けばいいだろ?ついでに言っとくけど、流石にもう一人担いだら、俺でも逃げられないからそこは諦めてくれよ」


実は過去何度か山で熊に出会ったことのあるアクトは、今までも10メートルはあろう崖を登って熊から逃げたり、先ほど言った通り気を伝って熊を撒いたりと、何度も熊と対峙してその度無傷で帰還している為、今の状況も正直それほど危険に感じていない。


「それでお前らはどうすんの?」


そう聞かれた冠とカメラマンは、特にいい案が思いつかなかったのか。走りながらどうすればいいのかわからず、黙って俯いてしまった。


それを見たアクトはため息をついた。


「しょうが無いから俺がなんとかしてやるよ」

「あんたが?相手は熊よ?例えあなたがいくら言葉で人を操るのが得意だとしても、相手は言葉の通じない熊なのよ?」

「いや、人を操るって人聞きが悪いな。ってまぁ今はそんなことどうでもいいか。おいネガ、今から結構無茶な動き方するから、その衝撃で舌噛まないようにしっかり、歯を食いしばってろよ」

「えっ、ほんとに何をする気?」


冠のその言葉に返事をすることなく、アクトは走りながら適当に拳サイズの石を拾うと、それを後ろも見ずに熊の額に投げつけて、熊の標的を自分に移し、そのまま冠達から熊を遠ざける為に、獣道すらない本当の山に入り、そのまま奥の方へとネガを抱えたまま走っていく。


そして石をぶつけられた熊は、怒り先ほどよりも一段ギアを上げたのか、どんどんと加速してアクトに近づいて、その手を振りかざすが、その都度木や岩などを利用して、余裕を持って熊の攻撃を躱し、更には今度は泥を熊の目に向かって投げつけ、熊の視界を奪い、それに追撃を加えるように目の前の大きな木の幹を足場にして、こちらに走ってきている熊の顔面に向かって、ドロップキックをかました。


そして熊が怯んでいるうちに、匂いで追って来られない為に熊の鼻めがけて、走っている間にいくつか取っておいた木の身を握りつぶし、それを熊の鼻に投げつけた後、先程冠達に説明したように、猿のようにスルスルと木にのぼり、そこから木から木へと飛び移りながら砂浜を目指して移動した。


無人島レースのスタート地点に戻ると、そこには他の山に入っていたスタッフ達に、冠や監督までおり、この無人島に熊がいた事について話し合っていた。


「おお、みんな無事に戻ってこれたんだな」


一人呑気に、ガチガチに固まったネガを傍に抱えながら、その集団に近づくとスタッフ達も話し合いをやめ、アクトの方へと近づくと、各々が心配をする声や、危険なことはしないでほしかったとアクトを叱る声、またアクトに感謝を伝える声で訳がわからない状態になっており。

聖徳太子でも無いアクトはいきなりにそんなに話しかけられても、理解ができないので大きく手を叩きその場を一瞬で掌握した。


「まぁ、多分熊が出た事だしこのまま無人島生活は続けられないと思うし、今は帰りの支度をして、話し合うのは帰りの船の中でもいいんじゃ無いのか?それともまさか俺たちを熊の出る無人島で、サバイバルさせるつもりじゃ無いよな?」


自分が大丈夫だと伝える為に、いつも通り生意気な話し方で、混乱しているスタッフ達にこれから真っ先にやらないといけないことを伝えると、スタッフ達はどこかに連絡したり、今まで使っていたキャンプ道具などを片付け始め、残されたアクト達は船の来る港へと向かうのだが、その際流石に熊に襲われたのが怖かったのか、遅れて恐怖がきたのか冠はプルプルと生まれたての子鹿のように足を震わせると、その場に腰を抜かして座り込んでしまった。


「ああ、すまない恥ずかしい事に私は、わ、私は……」


そう言う冠の目からはボロボロと大粒の涙が流れてきて、冠がいくらそれを拭おうがその涙は止まる事はなく、冠の意思とは真逆に流れ続けた。


それを見た監督は、自分の着ていた上着を脱ぐと冠の頭にかけ、そのまま何も言わずに冠の事をおんぶし、冠は監督の背中に顔を押さえつけ、声を殺すようにしながら子供のように泣きじゃくった。


流石にこれを茶化すことはなく、アクトも腕に抱えているネガの頭を撫でながら、優しい声で大丈夫だよと言いながら、静かに監督と港へと向かった。


それから迎えの船が来て、女性陣は疲れと恐怖から眠り、アクトと監督で無人島で熊が出て、途中ので終わる事を謝りながら、動画用のエンディングの撮影をとり、そのまま本土に戻るとスタッフ達が冠とネガを送ってくれる事になり、アクト達はその場で解散する事になった。


その後変な空気にはなったものの、大きな企画である無人島生活を終えたアクトと監督で、少しお高めな焼肉を食べにいった。


焼き肉も食べ終え、阿久津的には結構楽しかった無人島生活のことを振り返りながら、家に帰るとどこから聞きつけたのか、家の扉を開くと玄関で待ち伏せをしていたのか、小雪に抱きつかれた。


「お兄様と2日も会えなくて、私すごく寂しかったです!」

「そうなのか?今までもっと会えなかった時とかあっただろ?」

「その時はまだお兄様と電話などして、お声を聞けていたので大丈夫でしたが、今回はそれもできなかったので、すごく寂しかったんですよ!」

「ああ、そういやそうだったな。」


そんな事を小雪と話しながら2日ぶりの風呂に入る為に、脱衣所に向かうが何故かそこに小雪まで付いてきた。


「おい、小雪俺は今から風呂に入るんだが?」

「もう!お兄様こそお忘れですか?今日が日曜日だって事!」


たった2日とはいえ、無人島に行っていたせいか曜日感覚が狂ったのか、今日が日曜日だった事をすっかり忘れていた。


「けどなぁ、俺も無人島で疲れたからできれば一人で入りたいんだが?」

「それなら私がお兄様のお背中をお流ししますので、それに疲れているのならマッサージなんかもしましょうか?」

「おお!マッサージか、それはいいな!」


そう言うと阿久津は自分の着ていた服を脱ぎ、許可の降りた小雪も服を脱ぎ、一緒にお風呂に入った。


それから1週間後、公式チャンネルから無人島動画が公開され、その反響はとてもよく、阿久津のチャンネルの登録者数は、50万人から70万人まで増加した。


ーーあとがきーー


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