虫女とゲロ男とガチコミュ障+α
第15話 2度目のゲロ
ついこの前行った、プロボクサーとのガチマッチ配信で、プロボクサーに10時間以上耐久する事によって粘り勝ち、その結果ボクシングファンから叩かれ炎上すると言う、しょうもない事が原因で炎上したことによって、またしてもマネージャーが泣いたらしく、その件で美咲さんに社長室まで呼び出された。
そして今回もきっちり1時間説教され、その後は解放してもらえた。
前までは週2で社長室に呼ばれていたが、最近は呼ばれる頻度も減る様になり、今週はお呼ばれしないと思ったのだが、なんとも惜しい事に今日呼ばれてしまった。
そんな少し残念な気持ちのままに、阿久津は事務所を後にした。
今日は小雪が学校の日なので、家に帰っても昼飯がないので、事務所の近くにある牛丼屋に入った。
料理を何にするか決める為に、メニューを開き中身を見ていると、ここ最近よく見かける様になった、謎メニューを発見した。
「超メガ盛りスーパービッグ牛丼ってマジでなんだよ。料理名にスーパーとか入れるなよ」
事務所の周りで最近見る様になった、謎メニュー。そうそれは、謎の大盛りメニューだ。それもただの大盛りではなく、テレビで見る様なフードファイターが食べている様な量の料理なのだ。
「こんな馬鹿な料理誰が食うんだよ」
阿久津がそう1人で呟いていると、隣の席に阿久津と同年代程度の美形の女性が座った。
「店長、この超メガ盛りスーパービッグ牛丼を一つ」
いたー!馬鹿な料理食べる奴いた!あまりの衝撃に阿久津はその女性の方へと、勢いよく向いてしまった。そして何故かこちらを見ているその女性と目が合うと、その女性は先程頼んでおいた大盛りの牛丼を見ると、嘲笑う様に鼻で笑って来た。
何故だか知らないが、一眼見た時から隣に座った女性に、苛立ちを覚えていた阿久津はそのこちらを嘲笑うかの態度に憤慨し、静かに店長にメガ盛りスーパービッグ牛丼を頼んだ。
二つの牛丼が隣に並ぶ。その姿は圧巻としており、周りの客も好機の目でこちらを見ていた。それもそのはず、何故なら阿久津と女性の前には、その女性の肩幅サイズの器に山盛りの牛丼が横に二つも並んでいたのだから。
阿久津とその女性は、お互いに向き合い一斉に牛丼を食べ始めた。
それから30分後、阿久津とその女性は同時に、その山盛りの牛丼を食べ終えた。
本当に食べ終えると思っていなかったのか、女性は驚きながら阿久津を見た。
「へぇー、あんた結構やるんだね」
「ふっ、お前こそな」
その言葉を最後に、阿久津は目の前の女性にゲロをぶち撒けながら、女性の方はともたれかかる様にして、気を失った。
◯
阿久津が目を覚ますと、そこは見覚えのない部屋、そうどこかのホテルの一室だった。
阿久津は、自分の素晴らしさを見抜いた誰かに誘拐されたと勘違いし、部屋から逃げる為に行動を開始した。
まず初めに行うのは自身の身の回りの調査だ。
相手は不用心なのか、何故か拘束の類が一つも見つからなかった。そしてもう一つ気になるのは、何故か服がバスローブになっている事と、身体からほんのり酸っぱい匂いがする事だ。
だが、いつ誘拐犯が帰ってくるかわからない今、そんな事を考えている暇はない。まずは元着ていた服と、持って来ていた鞄を探そう。そう思い部屋の中を見渡すと、壁際に見た事ない女性者の鞄と一緒に、持って来ていた鞄を発見できた。中身を確認してみるが、特に荒らされた形跡などはなかった。
そのことにホッと息を吐くも束の間、どこに繋がっているかは不明だが、どこかには繋がっている扉の奥から、かすかに何かが擦れる様な音が聞こえた。
その瞬間本能が阿久津に告げた。そこに誰か居ると。そしておそらく、相手は1人それもこちらが目を覚ましていることには気づいてない様子だ、これは絶好のチャンスだ。
相手に気づかれぬ様にその扉の前まで移動する。
そして次の瞬間勢いよくその扉を開いた。
中は脱衣所だったようで、そこには風呂上がりであろう女性が、下着をつけようとしているところだった。その瞬間阿久津は、その全裸の女性にゲロをぶちまけた事を思い出した。
次の瞬間、何が起こったのかを瞬時に理解した全裸の女性が、顔を真っ赤にして全力の右ストレートを顔面狙って放って来た。だが、その事が咄嗟だったことで、阿久津はプロボクサーのアイク直伝のカウンターが咄嗟に出てしまい、阿久津の右フックが女性の顎を掠め、女性はその場で力無く倒れ伏した。
「すぅー……やっちまったな」
◯
うーん……って痛たたた。いつの間にか寝ていたのか?そしてどうして私は顎に怪我をしているんだ?そんな疑問と共にベッド目を覚まし、ベッドから体を起こすと、目の前には自分と同年代ほどの男性がいた。
その瞬間その男にカウンターを決められて、自分が気絶した事を思い出した。
すぐさまその男から距離をとり、そして気絶していた頃自分が全裸だった事を思い出し、慌てて手で体を隠そうとするが、何故かいつの間にか服を着ていた。
「ようやく起きたか、すまんかったな顎。最近知り合いにカウンターの決め方を教わってな、いきなり襲いかかって来たから咄嗟に出てな。怪我は無いか?」
「何故私は服を着ている」
「ん?服か?それは俺が着せておいたぞ。流石に女性を全裸で放置するほどの鬼畜ではないからな」
「そうか、なら私のを見たのだな?」
「私の?ああ!裸のことか?そら見ないと着替えさせられないからな」
「何故お前は人の裸を見ておいて、そんなにも冷静なんだ!!」
そう言いながら、ゲロをぶっかけられた挙句、全裸で気絶させられた可哀想な女性は、再度阿久津に殴りかかって来た。
今度は何となく殴ってくるだろうなと、思っていた阿久津は、その女性にカウンターを決めることは無く、その拳を容易くかわした。
「何故避ける!」
「急に殴りかかられたら誰でも避けるだろ普通」
「普通はそうだな。だがお前は私の裸を見た、ならば殴られる義務がある」
そんなめちゃくちゃな理論を立てて殴りかかってくる女性に対して、阿久津は冷静にその拳を交わし続けた。
「でも俺も目を覚ました時バスローブに着替えてたってことは、そっちも俺の裸を見たんだろ?ならお相子だろ?」
「男と女の裸の価値は全くもって違う!男の体など金を積まれても見たくもないものだが、女の体は違う!世の男どもは女の体を見る為なら金だって払う。男と女の裸にはこれほどの差がある。分かったか!分かったなら一発殴らせろ」
「成程な。だがそれは一般の男と女の裸の差だろ?俺の美貌は神をも惚れさせてしまう完璧な肉体をしている、それに俺の周りには俺の裸を見る為なら金を積む奴だっているぞ?お前はどうだ?お前の裸を見る為に、お前に金を払ってくれるやつはいるのか?」
「居るかボケ!居たらそいつは変態だ!」
女性は殴る拳を止めることなく叫んだ。
「変態?お前は一体何の話をしているんだ?」
「裸を見たい変態がいるかの話だろ?」
「……は?そんなわけ無いだろ頭沸いてんのか?この変態女が。俺が話しているのは絵のモデルのことだ。もしやお前はヌードデッサンを、えっちとか言っちゃうガキンチョなのか?某名探偵とは真逆だな。見た目は大人頭脳はお子ちゃまな変態女さん」
阿久津に散々ないわれをした女性だが、先程から殴り続けていた為体力が尽き、反論することさえできなくなっていた。
「じゃあ目を覚ましたことだし、俺は毎日エロい妄想をしている君とは違って、忙しいからもう帰るわ。もう二度と会うことはないとは思うけど、それじゃあお達者で」
そう言うと阿久津は、自分の鞄を持って部屋を出て、受付で2人分の料金を払いそのまま家へと帰った。
ーーあとがきーー
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