第6話 二回目の初配信その1
vtuberとしての見た目ができ、小雪について来てもらい配信用のパソコンを買って、その設定などをしてもらい、他にも何度かリリィの配信枠で一緒に配信したりなどをしていると、時間は過ぎ阿久津と他にも数名のvtuberがUPライブからデビューする日になった。
デビューするのは阿久津を除くと、女の子が2人いるらしい。
そして阿久津は知らないが、今まで男性を全くデビューさせなかったUPライブが、初の男性をデビューさせると言う事で、ネットでは既にお祭り騒ぎになっていた。
初配信の時間は運営から指定されており、初めに女性2人が配信を行い、俺がトリを行うらしい。まぁ、失敗出来ないトリニ完璧な俺を持って来るのは妥当だろう。そんな事を考えていると1番手の女が配信を始めた。
やはり初配信は皆が気になるらしく、同接数は配信を開始した時には既に5万人もおり、配信が終わる頃にはその数は2倍の10万人にもなっていた。そして2人目も順調に進めた結果と、初の男性という事で皆が尊敬や羨望、面白半分で観にくる者や単に人が多く集まっているから観にくる者が集まった結果。配信を開始する前の待機枠の時点で50万人もの人間が、阿久津の配信を見に来ていた。
普通の人ならこの人数が自分を見に来ている事で、緊張する筈なのだが、阿久津は既に何度かリリィとやった配信の経験と、謎の自信で緊張のきの字すらなかった。
その代わりに、阿久津と通話を繋いでいるとある人物は阿久津とは違い、普通に緊張していた。
「じゃあ配信始めるから俺が読んだら通話に入ってきてくれ」
そう言われた人物が何かを言おうとしたが、そんな間も無く阿久津は配信を開始するためのボタンを押した。
◯
ぼきゅは自称vtuber博士として日夜、企業勢から個人勢までのvtuberの配信を仕事もせずに見まくっては、面白いことがあれば自分のブログに書き込んでいる。
そして今日はvtuber界隈にとっての大イベントである、有名企業の新人の初配信である。だが今日は単なる初配信では無い、男性を取らない事で有名なvtuber事務所のUPライブから、初の男性vtuberがデビューするとの事だった。
大体2ヶ月前に、リリィちゃんの配信でパーフェクトゲロお兄様事、リリィちゃんのお兄さんが乱入する事件があったりと、少し男性関係でUPライブでプチ炎上があったので、少し炎上しないか心配な気持ちがあるが、なんだかんだでパーフェクトゲロお兄様も始めは少し反発していた者達も居たが、今ではほぼUPライブのメンバーと言っても過言では無いほどUPライブに溶け込んでいるし、多分大丈夫なんだろうなと軽く考えていた頃も、ぼきゅにはあったが今はそれどころでは無い。
まさかの初配信の同接数が50万人もおり、コメント欄では嫉妬のせいか、心にも無い言葉が散見された。
それを見たぼきゅは我慢ならず、vtuberだって人間なんだお!人の嫌がる事を言うんじゃ無いお!と勢いに任せてコメントしてしまった。
そんな自分の軽率な行動のせいで、配信が始まる前からコメント欄では、男を嫌がる者達とそれに反抗する者達、純粋に配信を楽しむ者達のコメントが入り混じりカオスな状態になっていた。
「ああ!やっちまったお!ぼきゅは、ぼきゅはなんてバカなんだおぉぉぉぉぉぉぉ!」
自分の過ちに気づいた、自称vtuber博士の男は頭を押さえ、気持ち悪い声で絶叫した。
自称vtuber博士は、心の中で一生懸命時を戻れと祈っていたが、現実そんな上手いことはなく、自称vtuber博士の願いは当たり前だが、叶わず時間は無情にも進み、ものすごくかっこいい音楽がれ始め、その曲が次第に小さくなっていくと、ものすごく聞き覚えのある声と共に配信は開始された。
◯
配信が開始した途端、先程までぐちゃぐちゃしてて見にくかったコメント欄が、どゆこと?やアレ?などの困惑しているものが多くなり、コメントに統一性が出て凄く見やすくなった。
「はいはい、えーっと初めましてかな?俺の名はアクトだ、よろしく」
その挨拶はアクトの正体を知っている者には特に響かず、その者達はお兄様!?や不名誉極まる愛称である、パーフェクトゲロお兄様!?などと呟き驚いていた。
「おいおい、お前らはさっきから誰の話をしているんだ?パーフェクトゲロお兄様?知らない名前だな」
半笑いでアクトが否定するが、声と言うか言動がパーフェクトゲロお兄様そのものなアクトのその発言は、あっさりとリスナー達に流されてしまった。
アクトのデビュー前の活動を知らない者達は、何故かコメント欄がお祭り騒ぎになっているのか分からず、パーフェクトゲロお兄様とネットで調べ、そのおかげでアクトが蜘蛛を食ってゲロを吐いた切り抜きの再生数が急激に増加したり、ツイッターでパーフェクトゲロお兄様というワードがトレンド1位にまで上り詰めた。
「はい、と言う事でもう皆んな気づいてるようだから、誤魔化すのはやめよう。改めて俺はリリィの兄で完璧超人な、ネットではお兄様と呼ばれていたその人だ。俺の細かい事を知りたければリリィの配信を見てこい」
アクトがそう言い切ると、コメントでは公式ナイスやパーフェクトゲロお兄様なら許す、などの肯定的な意見が散見されコメント欄の統一化ができた。
「んじゃ、俺のことは皆んな知ってると思うから、もう俺の自己紹介は必要ないな」
アクトはそう言うと、いきなり今日特別ゲストを連れてきた言い出し、これまたコメント欄が騒然とした。
本来初配信とは、vtuberの始まりとして今後見続けてくれるか、その後は見なくなるかを決めるとても大切な場所だ、アクトの前にデビューした2人はその事を十分理解していたのか、事前に準備をしていたのか大変素晴らしい配信になっていた。
そんな自分を見てもらわなければならない初配信に、ゲストを呼んでくるなどもっての外だ。
だが、一部のリスナー達はその呼ばれる特別ゲストが、先ほども軽くだが紹介のあったアクトの妹のリリィだと思っていたので、そこまでの驚きは無かった。
「おら、何グズグズしてんだ?お前が引き受けたんだろ?ならさっさと出て来い」
「……はい」
アクトに言われて物凄く嫌そうに出てきたのは、一部のリスナー達の予想を裏切り全く知らない男だった。
「という訳で、今日ゲストに来てもらったのは俺のオープニングの曲を作った。
「はい、轟奏です。アクトの配信を見に来ていただきました皆様初めまして」
その名前を聞いた途端ほとんどのリスナー達は、いきなり知らない男が配信に入ってきた事とは違う驚きを表した。
それはそのはず、アクトが無理やり配信に連れてきた轟奏とは、ネット発のシンガーソングライターで、初めてネットに投稿した曲の『サンタナ』はそう再生回数が5000万再生を超えており、轟奏が人気になる起爆剤になった曲『完璧超人』は3億再生をついこないだ超えたばかりの、超人気歌手なのだ。
そんな超が付くほどの人気者がいきなり配信に現れた事により、アクトのコメント欄は配信を始めるよりも前よりもカオスな状態になっていた。
「いやーでも奏が来てくれて助かったよ。他の奴らには断られててさ」
アクトがヘラヘラ笑いながらそう言うと、今まで黙っていた奏が絶叫し始めた。
「そりゃそうだよ!あーもうなんで言ってくれなかったんだよ」
「言ってくれなかったって何をだ?」
「僕はvtuberと言うものにあまり詳しくは無かったが、てっきり個人で始める者だと思ったから。気軽にコンビニに行く感覚で了承したんだけどさ、そしたら次の日にUPライブってところから正式なお仕事として、僕の元にオープンニングを頼む依頼が来てね、そこには物凄く聞き覚えのあるアクトって名前があって、ちょっと嫌な予感がしたんだよ!そしたら案の定これだ!なんだよ同接数50万って!無理だよ緊張するよ!」
「ん?でもお前の曲の方がいっぱい見られてんじゃん、それは恥ずかしく無いのか?」
「いや、それとこれとは話が違うと言うか。」
「いやいや、そんな変わらんってあっそれと奏」
「何?」
「お前が来てから同接数伸びたっぽくて、今80万人になってるぞ」
「やばい僕も吐きそう」
あまりメディアに轟奏本人が出て来ることが少なく、出てきてもあまり喋ることが無かったのに、今画面の中には友人と話すが如く完全にオフモードの轟奏が話しており、轟奏と言う名前の影響力はアクトが思っていたよりも強いらしく、ツイッターの世界トレンドにアクトの配信が乗るような異常事態にもなっていた。
ーーあとがきーー
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