言の葉、心模様
慈雨
奇妙な始まり
週に一度の学校からの帰り道。運動不足で疲れた足取りのまま駅のホームに降りて、柱に寄り掛かり電車を待つ。
夏が来るには早くて、それに騙された蝉が鳴いている騒がしい夕暮れ前の時間。無線で繋がるイヤホンで、暑さを軽減してくれそうな爽やかな曲を聴きながら、情報で溢れたSNSを眺める。
時刻は十七時半前。
自分が待っている電車が来るのは何分だったかと、瞬きとともに吊るされた電光掲示板の方に顔を向ける。
その瞬間、電車がホームを通り過ぎたような突風が吹いた。その風に思わず、開きかけた目を瞑り、顔を背ける。
風が落ち着くのを待ち、この時間に電車が通り過ぎる予定なんてあったか?と疑問を抱きつつ、徐に目を開けた。背けた顔をパッと上げれば、視線の先には真っ暗な電光掲示板。次の電車の時刻や遅延情報などが表示される様子もなく、まるで通電していないかのように真っ暗なまま。
明らかな異常に疑問符を浮かべ、先程までSNS鑑賞に使っていたスマートフォンに視線を移すと、画面は暗く、いつもの動作で電源ボタンを押してみるも、点く気配が一切ない。更には、いつの間にかイヤホンから流れていた音楽も止まっている。
辺りを見回せば、ホームにいたほかの人達は見当たらず、騒がしかった蝉の声も聞こえなくなっていた。
言の葉、心模様 慈雨 @hp9rain
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