言の葉、心模様

慈雨

奇妙な始まり

 学校からの帰り道。疲れた足取りで駅のホームに降りて、柱によりかかり電車を待つ。

 夏が来るには早くて、それに騙された蝉も鳴いており、騒がしい夕暮れ前。無線で繋がるイヤホンで爽やかな曲を聴きながら、スマートフォンをいじる。

 時刻は十七時二十六分。自分が待っている電車が来るのは何分のだったかと、瞬きとともにホームに吊るされた電光掲示板に視線を移した。

 その瞬間、電車が通り過ぎたような突風が吹いた。その風に思わず目を瞑る。

 突風に疑問を抱きながらも、目を開けると、視線の先には真っ暗な電光掲示板。次にくる電車の時刻などが表示される様子もなく、真っ暗なまま。

 不思議に思い、先程まで見ていたスマホに視線を戻すと、画面が暗くなっており、電源ボタンを押しても点く気配がない。更には、いつの間にかイヤホンから流れていた音楽も止まっている。

 辺りを見回せば、ホームにいたほかの人達は見当たらず、騒がしかった蝉の声も聞こえなくなっていた。

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言の葉、心模様 慈雨 @hp9rain

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