2・フサフサに発狂?!
「パイ社、そんなにカッカしていると禿……てました」
席についた蓮のところへ近づいた社長に対し、蓮は相変わらずの反応。
「だから、そのパイシャってのやめなさいって!」
「アイシャみたいで可愛いじゃないですか」
とPCモニターに向かう彼。
「それ人名じゃないの」
「パイ社も人名にしたらいいと思いますよ?」
どういうこっちゃと思いながら、二人を眺める悠。
「ね?」
と社長に笑顔を向ける蓮が可愛い。
だが言っていることは、どこかおかしい。
業務に戻ろうと思いデスクに向うと視界の端にスマホの画面が映る。
早速、蒼姫と三多からのグループメッセージ。
悠はスマホを取り上げ、メッセージアプリ『エアガ』を開く。
──ああッ。禁断の!
メッセージアプリ『エアガ』は、エアーガンが由来の一風変わったメッセージアプリである。スタンプが全てエアーガンにまつわり、ロングとショートがあるが前者は遅漏、後者は早漏が好むというジンクスがある為、あまりスタンプを使うユーザーがいないとされる。
そんな中、彼らはスタンプを使っているではないか。
──意外と言うか、予想通りと言うか。
三多がロング、蒼姫がショートエアーガンのスタンプを使っていた。
スタンプも良いが、業務中に何しているんだこの二人はと思いつつ、二人のメッセージに視線を走らせる。
三多も蒼姫も概ね『尻が風邪ひきそう』と言っていた。
──アイツら業務中に映画観てるわけ?
恐らくカーナビで観ているのだろう。
どちらも営業部所属だが、会社が違う。同車で出かけたなら、株原関係かと悠は顎に手をやった。
先日見かけた株原本社ビルを思い出す。
(株)原始人といえば、社長が美男美女ばかりスカウトすると有名な会社だ。げんに蒼姫も、どちらかと言うと美男子に入ると思う。
中でも副社長が若くてキラキラしたイケメンらしい。一度拝んでみたいものだ。
──わたしにとっての一番は蓮だけどね。
我が社の社長がとてつもなく社交的なため、しょっちゅう他社との合同パーティは開催されているが、未だ株原本社とのパーティが行われたことはない。
そのことを以前チラッと社長に聞いてみたところ、
『株原の社長の呉崎くんはね! 長身イケメン、ふさふさなんだよ。きいいいいいいッ』
とハンカチを噛みしめていた。
──髪が生えているから仲良くなれない?!
いやいや、そんな理由で?
美男美女と合同パーティとなれば、参加者も倍増に違いない。
今度打診してみようと、悠は思うのだった。
後日……
『相模ちゃんは、あのフサフサと合同パーティをしたいって言うの?!』
『あ、いや株原と。ほら、仲良くなれば業績UPに繋がりますしね?』
『フサフサと……? きいいいいいいッ』
社長は発狂しながらも、株原に合同パーティの話しを持っていくことにしたようである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。