スローなライフにしてくれ

第17話 神獣降臨

「まったく、眷属をいったいなんだと思ってるモんプンプン」

「そうプンプンするでないでござる。狩りぐらい簡単でござる」

「ワンコロは毎日のように狩りをしていたのだろう？」

「そりゃそうでござる。でなきゃ飢え死……あれ？　オツ殿？」

「どうしてオツ様がここに。光一に付いていたのでは？」

「いや、なんか行けって怒鳴られて、お主らにくっついて来てしまった」

「流されやすい貴神さんでござるな」

「……めんぼくない」

「ど、どんまいモん」

「ま、まあ。狩りのお手伝いでもしてもらえれば重畳でござる」

「うむ。それなら我にはサーチ能力があるぞ」

「それはどんな能力でござる？」

「さーちねぇ？」

「「ネコウサ！」」

「ｺﾞﾒﾝﾅｻｲ ﾓﾝ」

「サーチエリア内にいる人や魔物を見分けるスキルだ。半径数キロなら楽勝で判別が付くぞ」

「ほほぉ、それは便利そうな。それじゃこの周辺に狩りやすい魔物はいるでござるか？」

「ウサぴょんとワンにゃんキツネがおるな。ウサぴょんはすばしっこいのでネコウサが担当すると良い。ワンにゃんキツネは……ってなんだお前ら、そんな呆れた表情で我を見るでないぞ」

「いや、我ら表情筋はないでござるが」

「中二病貴神に呆れてるモん」

「誰が中二病だ。それを言うならペケモンの影響ってやかましいわ！」

「自分で自分にツッコんでるでござる」

「ポと言わないところになにかの圧力を感じるモん」

「これが正式名称だから仕方ないであろうが」

「ウサぴょんが正式名でござるか？！」

「ワンコロは毎日狩りをしていたのではないか？」

「してたでござる。が、名前など知らなくても食べられればそれで良かったでござる」

「それもそうか。まあ良い。ともかく今晩のおかずだから狩って来い」

「貴神どのも食べるのでござるか？」

「なんだ、我をのけ者にするつもりか」

「いや、姿もないのにどうやって食べるのか不思議モん」

「そこは異世界ラノベという不思議小説のなせる技」

「ま、まあ。なんでもありでござるな。それでは狩りに行ってくるでござるモん」

「「ただいまでござるモん」」

「早いなおい！」

「狩りの描写が苦手な作者ごにょごにょごにょモんモん」

「ところで、ちょっと気になるものを見つけたでござるが」

「なんだ？」

「なにやら人だかりがあったでござる」

「ああ、人は検索から外していたから気づかなかった。確かにいるな。人ではなくミニエルフとあのもっと小さいのはコロボックルかな？　確かに集まっておるな」

「ハクメイとかいるでござるか」

「誰？」

「気にしないでくだされ」

「なにかあったモン？」

「なにやら深刻そうな話をしている様子でござる」

「気になるな。ちょっと見て来るか」

「「了解！」」

　ご主人はほったらかしであるが、そんなこと気にする3人（匹）ではない。

旅人「うぅむ。困ったな。これでは荷物を届けられない」

男A「それより中の作業者たちが心配だ。このままでは中の酸素がなくなってしまうぞ」

男B「魔素の枯渇も心配だな。しかし、これを全部撤去するにはどれだけ時間がかかるか見当もつかない」

全員「「「「うぅぅぅぅむ」」」」

「なにかあったモん？」

「いやそれがな、崖崩れ……わぁぁおっ、びっくりした！！　な、なんだ、なんだお前は！」

「通りすがりの愛らしい神獣モん」

「自分で愛らしいとか言ってるぞ。確かに可愛いが、なんで言葉がしゃべれるんだ？」

「神獣だからモん」

「拙者も話せるでござるよ」

「「「「……ふぁぁぁぁっ！？」」」」

男Ａ「お、おかしら、お頭、お頭、ちょっとおかしらやつがやって来た」

お頭「こんなときに良くそんなボケを言って……ああっ！　あなた様は噂に聞く神獣様ではありませぬか？！」

「うむ、そうであるモん。なにか困ったことがあったのならボクに話してみると良いモん」

（なんか急に威張り出したぞ、あいつ）

（我なんか無視されているでござる）

「親方、こいつ……この方をご存じなので？」

「ああ学生の頃に学んだ記憶がある。教科書に出ていた神獣様のひとりだ。こんなところにご来迎いただけるとは実に幸運なことだ。数千年に一度、この世に現れては奇跡を起こすと言われている伝説の方だぞ」

「親方はここでは珍しい学卒でしたな、って」

「「「「それほどの方なのか！？」」」」

「こんなときに神獣様が現れたのはなにかの縁。お力添えをお願いしてはもらえないでしょうか？」

「神獣様にお願いなど、本来ならおこがましいのだが、今は背に腹は代えられぬ事態だ。神獣様！」

「なんでも言ってみるモン。ボクに任せるモん！」

（とうとうつけ上がりやがった）

（自分の能力の限度を忘れているでござるな）

「サルトラヘビ様。どうかこの洞窟に閉じ込められた我らの同胞をお救いください」

「「「「ははぁぁぁぁ（ひれ伏し）」」」」

「良いであろう。任せ……洞窟モん？」

（名前が違ごてるでござる）

（ネコウサにこの崖崩れが直せる能力などないのだが、どうするつもりだ、あいつ）