第11話 だから誰?

「拙者、まだ若いがこの辺りでは最強の魔物なのに、ぐすっ」

「お前、しゃべれるのか?」

「たったいま、しゃべれるようになったでござるぐすっ」

「そのぐすっをキャラ付けに使うのは止めろ。ござるでいいだろ」

「そうするでござる」


 俺は改めて家を見る。見事な日本庭園……はどこいった?


「今度は不透明な結界か?」

「普通の壁だと思うモん」

「紛らわしいなおい」

「誰が見ても壁でござるが」


 真っ白な壁が俺の前に立ち塞がった。幅も高さもどのくらいあるか見当もつかない。まるで城壁だ。さっき見たのはカモフラージュか。いったいなんのために?


「さっき、この金属を結界に当ててみろって言ったよな?」

「そのシーンだけはあちこちで良く見たので知ってたでござる。でも、その先は見えないので分からないでござる」

「なるほど、そういうことか」


 最初のセキュリティを偶然突破できても、ここでひっかかるわけだ。


「分からんことだらけだが、ここからどうすりゃいいんだ?」

「目の前にちょうど良い感じのすき間が空いてるモん」


「ほんとだ。また微妙な穴だな。指でも突っ込んでガタガタ言わしたろか」

「そのすき間にさっきのカギがはまりそうな気がするモん」

「少しは自分で考えろよ」

「自分で考えた結果がこれ……いまの誰?」

「「ボク拙者じゃないモんでござる」」


 ??? どうもさっきから登場人物がひとり多いような気がするのだが。


 ネコウサの言う通り、白い壁には幅10、厚み3センチメートルのスリットがある。


「ばっちりさっきのカギサイズだモん」

「なるほど。ということはだ」

「ようやく分かったか」

「ここに指を突っ込んでガタガタ言わす痛っ!」


「ネコウサ! お前か、さっきからポンポン叩きやがって」

「ボクはずっとこの結界に閉じ込められているモん」

「それもそうか」


 そのとき、ポンッという音がした。


「ああもう面倒くさいやつだ。さっきのカギをここに差し込めば良いのだ。さっさとやらないと話が進まないだろ!」

「「「だから誰?」」」

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