第102話 子の心、親知らず

俺と君は互いに好意を感じていた。その最中、実家の両親が病で倒れた。


君に想いを伝えるのを俺は止めた。そして何も言わずに実家へ帰った。


両親は礼など言わない。帰って来るのが当然だと、むしろ遅いと俺を非難した。


もし君を連れてきたらどうなっていただろう。君はきっと耐えてしまう。


それで病んでしまったら俺は後悔してもしきれない。それに付き合ってすぐ親の面倒をみさせる男になりたくない意地があった。


嫁はまだか、彼女の一人もいないのか。そんなことを言う両親に暴言を吐きそうになるのを必死に飲み込んだ。


両親を見捨てて君と二人で暮らせたらとふと思う。でもそしたら君は俺を失望するだろうから。


これが一番よかったんだ。そう言い聞かせ俺は親の介護をしていた。

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