第5話 秘密

キミは秘密が多い。だけど俺は君の秘密を聞くことはなかった。


俺も君に秘密にしていることがある。君への思いをただただ隠している。


互いに秘密に踏み込まないことが俺たちの約束だった。秘密以外は何でも話した。


どんな下らないことでも話せた。でも本当に大事なことは秘めたままだった。


互いに知りたがっていた。相手の秘密を、その思いを。


先に限界がきたのは君だった。君は病院で寝たきりの彼氏がいると告白した。


本当に好きなのに、話すことができないと。だから俺は嘘をついた。


俺にも遠くにいて会えない彼女がいる、と。きみの罪悪感を少しでも薄めるために。


これで親友だね、とキミと俺は手を繋いだ。ああ、本当に、その通りだ。


帰り道で俺は泣いていた。この涙も、きっと君には話せない。

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