第8話 立候補

姉さんはいつも、リーダーシップを自然に取る。

どんな集団に属してる時も、大概そうだ。

部活、課外活動、委員会、授業中のグループ活動、ご近所での役割当番系、なんでもだ。

幼い時から両親が仕事で忙しく、いつも一緒に行動して来た。

だから毎日姉さんの行動や立ち居振る舞いを見て来た。

父の転勤が多く、しょっちゅう居住地が変わる。

だから、人生経験こそ短いが、多くの集団のタイプを観察できた。

姉さんはその経験を自身の行動にきちんと落とし込めてる。

そこが本当にすごい、なんていうか、地に足がついてるんだよね。

俺も負けないくらい冷静で、歳不相応な静かさというか立ち居振る舞いだと、勝手に自己認識してるくらいだけど、姉さんのそれには遠く及ばない。


沙里奈「鏡花、大事な項目だけ黒板に残していってもらえる?」

鏡花「ああ、わかってる」

沙里奈「さっき流したボイスレコーダーの内容とそのアタッシュケースが発見された場所、注射器が使用されたであろう場所から推定するに、ボイスレコーダーの話にはかなりの信憑生があると判断できる。私は、この残りの注射器を有効に使用してみたいと思ってる。そこで、多数決でその注射を誰が注射するかを話し合いで決めたい。もちろん無理強いはありえないから、安心して。というよりも、もしも誰も注射したくないってなった場合には、私が立候補する。でもできたら、私は注射した人間がきちんと理性を取り戻すまで責任持って見守る人間、役割を担いたいと思ってるし、務め切る自信を持ってる。みんなは、どう思うかな?」

鏡花「姉さんが打つくらいなら、俺が立候補するよ。でも本当は、嫌かな。他に誰もいない場合に限る」

沙里奈「そう、ありがとう鏡花。どうかしら、立候補者はいないかしら?」

航平「剛、お前どうよ?ワンチャンめっちゃ強くなれるかもじゃん?サイヤ人的な笑?」

剛「俺は、、ごめんだ。沙里奈さんの言ってる通り、確かに注射の信憑性は低くない。だが、そうじゃなかった時のリスクがデカすぎる」

航平「そうだな、間違いない。それに、理性を取り戻すまでに最短で半年だろ、その期間に暴走を止めきれずに止むを得ず始末されたりしたら、冗談じゃ済まされねえ」

剛「全くその通りだ」

沙里奈「誰も、立候補しないかしら」

花柳院「はーい。」

沙里奈「あら、花柳院くん、してくれるの?」

花柳院「立候補しまーす。その代わり、ちゃんと半年間面倒みてくれよなー」

沙里奈「ええ、もちろん。私が責任を持つわ」

鏡花「決まりましたね」


沙里奈「それでは、注射を打ってくれる人が決まったので、今度は具体的な隔離期間とその対応方法を話し合いましょう」

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