【不定期】コルヴスの独り言

コルヴス

帰り道

 帰り道。車の助手席から見た空は広く、真っ赤に染まっていた。

 少々薄暗くなっていく街とぽつりぽつりとつき始める家の灯り。それに気がつかないほど見事な赤色であった。


 左手で窓ガラスを開け放つと、秋の少々肌寒い風が頬を撫でた。横髪が目の辺りをちらついて鬱陶しい。手で押さえてみてもお構いなしに張り付いた。

 面倒くさい。髪のことは放っておいて、外の景色に目を移す。



 田んぼが右から左へと流れていく。稲刈りを終えたところもあれば、まださらさらと揺れているところもあるようだ。

 小さな森に囲まれた家が田んぼの中ぽつぽつ立っている。あの家には補助輪付きの自転車が置いてあった。今日のごはんはきっとあの子の好きなものなのだろう。



 今日の西の空は本当に綺麗だった。走って行くうちにだんだん空の色が変わって来るし、帰った頃には真っ暗になっている。それは分かっているけれど、この瞬間が永遠になれば良いのに、なんてぼんやりと思った。


 西は茜色だが、少し上を見ると藍色になっている。そして、その間は……うーん、何色なのか、分からない。

 私はこれでも理系というモノに分類されるし、実際理科は好きだった。虹が7色ではなくグラデーションで出来ていることも、それが奇跡ではなく光の屈折で出来ていることも分かっている。同じように夕焼けもグラデーションであるのは分かっている。


 でも、あの色に名前が欲しい。


 色の名前はよく知らないので、知っている色で良い。ただ自分の納得する答えが欲しくてその中間をじっと見つめた。

 ぱっと見は黄色だ。でも、本当にそうかなと親指と人差し指で空を切り取ってみてみた。緑に見える。指を離すと確かに緑に見えたが、黄色だと思うとそうにしか見えない。


 まあ、いいか。だってそうだ、名前を決めてしまうとそれにしか見えなくなってしまう。私はこの想像する時間が好きなのだから、結論はいつまでも知らなくて良い。

 なんなら虹も夕日も神様の粋な計らいだと信じたって良い。(本音を言うと、光の反射だとか屈折だとか言う夢のない話にはげんなりする)


 流石に寒くなって窓を閉めた。


 田舎の広い空いっぱいに水彩で描いたような夕焼けはそれはそれは美しい。


2022/10/19

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