第二話
「そういえばだけど、男いなくない?」
「お、男?あー、数万年前までいた種族のことか」
セラはそう答えた。
やけに男がいないと思ったらそういうことだったのか。ということは、子孫はどうやって作るんだ……?
「ね、ねぇ、結婚って女性同士でするもの?」
「ん?そりゃそうじゃん。何言ってるの?」
まじか。この世界では女性同士で結婚が当たり前と。
捗るな。
てことは私も将来的には美少女と結婚できたりするのかも。
「そっか、サヤは男の生き残りを探してるのか」
「ま、まぁ。そんな感じかなー」
私はそう適当に答えた。
「男の生き残りを見つけると、人生三回分は遊べるお金が貰えるしねー」
セラはそう言う。
人生三回も遊べるお金……。普通に男探そ。
「まあ、それはそれとして、私はこのパーティーに入れてもらったけど、普段はどんなことをしてるの?」
「そうだなぁ、いつもは依頼を一日一個受けて報酬を貰ってるよ」
「となると、生活最低限って感じ?」
私がそう聞くと、三人は頷いた。
生活最低限度のお金だと、装備品などを調達することは難しそうだ。となると、ランクアップを狙って高時給を目指すしかないのか。
「そしたらさ、頑張ってランク上げて報酬額増やせるようにしようよ」
「確かに私たちも最近金欠だと思ってたから丁度いい機会かもね。私たちも昇格試験受けたの結構前だし」
ということで、私たちは昇格試験を受けることになった。
「皆んなのランクって何?」
「大体Cだよ。サヤはあれだけ強いから、Aとか?」
「いや、Eランク」
そういうと、三人はとても驚いた。
「あの魔法の練度でEランク!?もしかして、昇給試験あるの知らなかった……?」
そう私はアナに言われ、頷いた。皆、とても驚いた様子だ。
「二種属の魔法に加えて、両方ともあの精度。Aランクを取ることもありえるかもね」
セラはそう言う。
Aランクとなると、あの火炎竜の討伐も受けることができるのか。これも全て精霊の力なんだけどね。
「二種属持ちなんて聞いたことないですよー」
ソラはそう言った。
「大体は低級魔法の複数属性持ちは分かるが、高級魔法になると二種属鍛えることはほぼ不可能だからな」
セラはそう付け加えた。
二種属魔法使えることはそんなにも珍しいことだったのか。私は右手の人差し指と中指にある紋章を見た。これが、精霊から貰った力の証……。
「どうして二種属も使えるんですか?」
ソラは言った。
「うーん。私も分からない」
精霊のことは何となく言ったらいけない気がしたので言わなかった。
「お、ついたな」
話していたらあっという間にギルドに着いた。
三人は依頼を受けていたのか、カウンターに行った。そして、暫くすると戻ってきた。
「これは、サヤが倒したからサヤのな」
セラはそう言って私にお金を渡した。
「え、いやいいよ」
「まあまあ、そう言わずに」
他の二人も同意見のようだ。私は断り切ることができず、お金を受け取った。二万ゴールドくらいかな。
「それじゃあ、昇格試験を受けよっか」
セラはそう言った。
「昇格試験なんて2年ぶりだよ〜」
アナはしょっぱい顔をしてそう言った。
昇格試験、果たしてどのようなものなのだろうか。
「それじゃあ、私が皆の分も一度に応募してくるよ」
セラはそう言ってカウンターに走っていった。
「昇格試験ってどういうことするの?」
「そうですねー、基本的には、自身の得意分野をその場で見せてアピールって感じですねー」
ソラはそう答えた。
得意分野か……。私は炎魔法なのかな。しっかりと力を発揮できるか心配だ。
「応募してきたぞ。一時間後には開始だって」
セラはそう言って戻ってきた。
皆私のように緊張しているようだ。
「セラ様のパーティーの皆様、昇格試験を始めます!」
気がついたら一時間が過ぎていた。
皆、緊張してカチコチの状態で試験会場へと歩いて行った。
「それでは、試験を始めます。試験内容は、自身の持ち前をアピールしてもらいます」
試験監督はそういうと、紙を取り出し、セラを呼んだ。
セラは試験監督と一緒に別室へと連れて行かれた。その別室の様子は、私たちがいる廊下からも見えるようになっている。
「試験開始!」
試験監督がそう叫ぶと同時に、セラは試験会場にある的を目にも止まらない速さで次々に切り裂いて行った。そしてそれが終わったのは、数秒後だった。
全ての的を切り付け、セラは最後の的の隣で立ち止まった。
「試験終了!」
セラは試験会場からゆっくりと出てきた。かなり早く動いていたため、とても汗をかいていた。雨も滴るいい女か……。
「それでは次はアナさん」
そうして、次はアナが試験会場へと入って行った。
アナは落ち着いた様子で立っていた。
「試験開始!」
そう掛け声がかかるとともに、アナは詠唱を始めた。
「<風よ 刃となりて 切り刻め>!」
そうアナが唱えると、アナの周りから風が吹き始め、それは段々と大きくなっていった。そして、それは的へと向かっていき、全ての的が風によって切り刻まれた。風で切り刻むことができるとは。
「試験終了!」
アナは一段落済んだという顔で出てきた。
「それではソラさん、お願いします」
「あの、私<索敵魔法>が得意なんですけど、何人か役員さん呼んでもらえますか?」
そうソラが試験監督に言うと、試験監督は裏方の方へと走って行った。
「なんで何人か呼ぶの?」
「私の能力は索敵でしょう。的があっても何もできないもの。いつも私は試験の時、役員の動きを目を瞑ったまま当てて、それで能力を見て貰ってるの」
そういうことだったのか。
「お待たせしました。それでは試験を始めます」
「お手数すみませんが、私の周りを自由に動き回ってもらえますか?」
そうソラが言うと、役員五人が周りを動き始めた。動きは全員バラバラだ。
「ストップ。<索敵魔法>を使います」
「一時方向に一人、六時方向に一人、八時方向に二人、十一時方向に一人。ですね」
そうソラが言うと、役員たちから歓声が上がった。全て的中していたのだ。
「試験終了!」
ソラは得意気な顔で出てきた。私は緊張で胸がドキドキしていた。大丈夫、私は精霊から授かった力があるんだから。私は自身の紋様を見た。
「それでは、最後にサヤさんお願いします」
私は役員と一緒に別室へ行った。
別室に入ると、三人の姿が見えた。皆が見てくれている。頑張らなくちゃ。
「試験開始!」
私は視界にある的全てを燃やし尽くせるようにイメージをした。そして、右手の人差し指から魔力が流れるイメージ!
そして私は的に向かって炎を出した。炎は一番遠くの的まで届き、青く燃え盛った。そして、炎が消えた時には、的も全てなくなっていた。
「試験終了!」
そして私は試験会場から出た。
「お疲れー」
ソラが言った。
「それじゃあ、試験結果が出るまでロビーで待ってよっか」
「セラ様、試験の結果が出ました。受付まで来て下さい」
私たちは固唾を飲み、受付まで向かった。
「試験お疲れ様でした」
そう役員が言った。
「それでは、試験結果を発表します。セラさんはBランク動きに少し無駄があったので、そこを直せればAランクになれますね」
「ありがとうございます」
セラは真っ直ぐな瞳でそう返事した。
「アナさんはB+です。非常に魔法の練度が高かったです」
「当然です!」
アナはドヤ顔を決めた。
「ソラさんはB−ランクです。精度自体は素晴らしいのですが、索敵ですのでどうしても」
「そうですよね。大丈夫です」
ソラは笑顔でそう答えた。
「最後にサヤさん。Aランクです。まず、無詠唱という時点で凄かったです。そして、青い炎という炎魔法でも上の上。魔法の精度も無駄なものがなかったですし、文句の付けようがありませんでした」
「おめでとう、サヤ!」
私にセラが抱きついた。む、胸が当たってるってー!まあ、いいか。私のことの様に喜んでくれていて嬉しいし。
「ありがとうございます」
「それでは、皆様の冒険者カードをお預かりします。新しいランクのものに交換しますので」
役員はそういい、奥の方へと入っていった。
さて、待ってる間にコーヒーでも飲もうかな。
異世界転移した先の世界では、唯一精霊魔法を使える魔法使いでした @nidankaiusetsu
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