第4話 おじとおば
俺は面倒臭くなって、どちらにもそれ以上連絡はしなかった。テレビに出たことが会社にバレなかったらいいなとそれが気がかりだった。
それから一月後だった。従妹のお姉さんからいきなり電話がかかって来た。俺は親しい親戚がいなくて、母が亡くなった時、たまたま葬式で会って連絡先を交換した人が何人かいるだけだった。
「ニュース見た?」
「え。何、何?」
悪いニュースだろうと思った。誰かが事故にでも巻き込まれたのかと想像した。
「〇〇のおじさんとおばさん殺されたって」
「え!?」
被害者はあの日本料理屋の夫婦だった。
「犯人は?」
「誰かわからないらしい。でも、金庫が開けられてて、中は空だったらしいから、強盗だったのかな。あの二人って現金持ってたのかもね。商売やってたし、ひょっとして脱税かな」
その時、すぐに思い浮かんだのは、美緒ちゃんのことだった。あんなにきれいな顔をして、人殺しなんて、そんな・・・。
俺は従兄弟からの電話を切った後、すぐに美緒ちゃんに連絡することにした。Lineを送ろうと思ったらメンバーなしと表示された。あれ・・・。Lineやめちゃったのかな・・・芸能人の堀川美緒ちゃんは今どんな活動をしてるんだろう。俺はすぐにネットで調べたら、体調不良のため主演映画を降板と書かれていた。ネットニュースを毎日見ていないから気が付かなかった。降板したのは三週間前で、俺と一緒にテレビの撮影をしたすぐ後だ。あの時撮影した映像はまだ放映されていない。
あれは有名な〇〇〇〇という番組だったはず。俺はテレビ局に電話を掛けた。すると、撮影はしましたけど、堀川美緒が休業しているから放送は見送ることになりました、ということらしい。次に堀川美緒の事務所に連絡を入れてみた。親族だと伝えたが、今は本人と連絡が取れていませんと言われた。
彼女が犯人なんだ。俺は確信した。俺は今は未央子を知っている。彼女から連絡をもらったからだ。そうでなかったら、あの美女と養子の未央子が同一人物なんて絶対に思わなかっただろう。警察はもう堀川美緒の存在まで辿れただろうか?整形して別人になった彼女を探せるだろうか。だって、捜索願を出したのに、ずっと発見されなかったのに・・・。もしかしたら、警察だって、堀川美緒のことを知らないかもしれない。
もし、おじさんたちを殺害するなら、表に出て来なければよかったのではないか。そしたら、完全犯罪を遂行できたかもしれない。一体、何のためにテレビで俺の名前を告白したんだろうか。
なぜ?
なぜ?
美緒ちゃん、どうして?
俺には彼女の目的がわからなかったし、その足跡をたどることができなかった。亡くなった夫婦が、元養子の美緒ちゃんのことを誰かに喋ったかはわからない。俺は警察に彼女のことを黙っていた。
そして、有休を取って一人で地元に向かった。突然帰ったのだが、親族だから怪しまれることはなかった。
しかし、そこで、おじさんとおばさんの裏の顔を知ることになった。
2人は美緒ちゃんがいなくなった後、さらに養子をもらってた。今度は男の子だった。店で働いていた調理人を後継にしようと、養子縁組をしたそうだ。女の子の美緒ちゃんがじゃまになったんじゃないかと思った。それで三人で美緒ちゃんを追放したんだ。俺は確信した。だから、施設に返したのでも、美緒ちゃんが耐えられなくて家出したのでもどちらでもいい。
そして、今度は養子の男が行方不明になっていた。今のところ重要参考人として、警察に指名手配されている。せっかく養子になったのに、なぜ殺したんだろうか?殺さなくても黙っていれば店も財産も手に入るのに。おじさんはよく、養子の敏行さんを怒っていたらしいが、殺害するほどの動機があったかと言えば、そうは見えなかったようだ。
俺は考えた。美緒ちゃんと敏行さんは恋仲だったんだ。美緒ちゃんが夫婦を殺害して、敏行さんはそれを庇って逃げているんじゃないかと。十分あり得る話しだ。敏行さんは夫婦と同居していたから、殺害した犯人を見ているはずだ。
なら、口封じで連れ去られて、殺害された可能性もあるではないか。後者の場合、成人男性を連れ去るためには、力のある複数の協力者がいるはずだ。美緒ちゃん一人では無理だ。
俺は恐ろしくなった。自分も危害を加えられるのではないかと。
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