現代版白雪姫(現代社会・掌編)
美魔女インフルエンサーこと「りんご屋」は継子の「白雪」との丁寧な暮らしを綴る投稿で人気を博していた。
ある日、彼女は娘とのツーショットを披露し「どちらがアリ?娘ならRT母ならいいね」とフォロワーに尋ねた。無論、いいねの方が有利と見込んでの行動だ。
ただ、狙いとは裏腹に結果はRT数の圧勝。りんご屋は満たされるはずだった承認欲求の矛先を失い、やり場のない怒りを白雪に向ける。
手始めに裏アカで彼女のアカウントにリプライで粘着するようになった。しかし、白雪が抱える七人のガチ恋フォロワーに尽く論破され、しまいにはブロックされてしまった。
続いて別の裏アカで関係者を装い、プライベートの暴露を匂わせた。複数のアカウントを巧みに操って騒ぎを焚き付け、果ては殺害予告にすら及んだ。この策は予想以上に効果を上げ、白雪はアカウントに鍵をかけてそれから何も投稿しなくなってしまう。
りんご屋は表向きには白雪を心配する素振りをしつつ、フォロワーからのエールにすっかり気を良くしていた。
――大変なことになりましたが、りんご屋さんと白雪さんの温かい投稿にいつも癒やされていました。これからも応援しています!
――白雪さんを困らせ、りんご屋さんも心を痛めておられるかと思うとアンチが許せません!
――きっとアンチは世界で一番美しいお二人に嫉妬しているんですよ。
「しめしめ……これであの子のフォロワーも私のものに」
ところが愉悦な日々も長く続かなかった。白雪の七人のガチ恋フォロワーが騒ぎの陰で入念に証拠を集めていたのだ。彼らが事件の経緯を暴露系インフルエンサーにタレ込んだことにより、裏アカを使った白雪への悪事は世間に露呈し、瞬時に拡散された。
信用とフォロワーを失ったりんご屋はすっかり参ってしまい、老婆のように老け込んでしまった。
一方、白雪はSNSから離れている間に出会った男性と親しくなり、活動再開と同時に結婚を発表する。七人のガチ恋フォロワーはリプライを送らずいいねするだけに留めて、彼女に健やかな日々が訪れるようささやかに祝福しましたとさ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます