ハッピーバレンタイン(武器ストーリー風)

一.

 彼へ渡すチョコに血を入れた。これであの人は私と同じだけ生きられる。

 時の移ろいと共に恋敵は老い、やがてこの世を去る。それでもあの人は彼女を想い続けるだろう。

 決して結ばれないのはわかっている。実らない恋に永久とわに患わされるとしても、あの人を失うなんて考えられない。


二.

 すんなりと竜の血を手に入れられた。

 これを彼女と分け合えば、まさに永遠の契りを得たも同然。

 女とはいえ相手は竜族、しかも顔見知り。命を捨て、道も踏み外さずに済んだのは何の因果だろうか。

 大金をはたいて得たこの剣は大切な人を守る為に使わせてもらおう。

 それが贖罪になるのなら。


三.

 結婚したければ竜の血を取ってきなさいと!

 あの子を殺してきなさいと!

 諦めさせるつもりで言ったのに!

 私じゃなくあの子と結ばれてほしいから、その気持ちに気付いてほしいから、こんな無茶を言ったのに……!

 ああどうして、二人してこんなどうしようもない男に惚れてしまったのかしらね……。


四.

 人里離れた土地に何百年も生き続けている仲睦まじい夫婦がいた。

 二人の噂を聞き、時の王は軍を以て彼らを拘束しようとする。夫は傷だらけの古い剣を振るって抵抗したが劣勢だった。

 これまでかと思われた瞬間、灼熱が兵士を襲った。

 大いなる影が一帯を覆い、咆哮に天地が震える。




2023/2/10投稿(ツイッターには第一話のみ)

二~三話いずれも一四〇字以内

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