二人の交換日記 長き月

ー夜が長く更けゆく月/15日 (樹)ー


昨日、いや、もう0時を過ぎていたから今日か。

飲み比べは私の勝ちだったな。

しかも、結果、お前がまったく起きず、私まで慌ただしい朝になってしまった。

お前の馬鹿力で絡みつかれては、さすがに私でも身動きとれん。

以後、気をつけろよ。

依然としてナーミオのことは気に食わないが、昨日の騒動のこともあって、然程さほど気にならなくなった。

まぁ、何があってもお前は私の犬だ。

もう少し賢いと良いが、馬鹿なほどなんとやら、とも言うしな。

それでは明日も訓練に励めよ。



ー夜が長くふけゆく月/16日 銀の日ー


はーい!

俺はエムの犬だからね!

捨てちゃダメだよ(笑)

あと、多頭飼いもおすすめしないです!

ヤキモチ妬いて、噛んじゃうかもしれないからね☆

飲み比べは自信あったんだけどなぁ……残念!

あ、そうだ!また今度やろうよ!お酒用意しとく!

その時には、なんか賭けない?

お金とか物だと味気ないし、エムが勝った時、あんまり嬉しくないでしょ?エムお金持ちだし。

そうだなぁ……。

たとえば、負けた方は一つなんでも言うこときく!とかどう?



ー夜が長く更けゆく月/17日 (地)ー


私に一度負けておきながら、また勝負をしかけてくるなど、本当にバカ犬だな、お前は。

まぁ、いいだろう。

負けた方は、どんな命令でも従う、か。

構わないが、それだと、お前が負けた場合、いつもと変わらなくないか?

お前、私の命令に逆らわないだろう?

バカ犬だから、逆らう気はないのに従えないことはあるが。

それでも良いなら、受けて立とう。

受けて立つで思い出したが、来月に催される国内闘技こくないとうぎのことについて話しておく。今年はそこで、異例のことだが、エスとエムの称号の返還と争奪戦が行われることが既決きけつした。

よほど、上の者たちは私をこの立場から引きずり落としたいらしい。

いや、ナーミオにエムの称号を与えたいのだろう。

それに、ナーミオの思惑も読めてきた。

あの田舎の貴族が戦士や騎士ではなく、私の部下、魔導師になった理由はこのためだろう。

おそらく、はなから大臣と裏でやり取りが行われていて、称号を得て、王都で戦果を挙げたいのだろう。

力比べでは確実にお前には勝てないから、まだ勝てる可能性がある私の方で挑むため魔導師を選んだ。

力比べと違って、魔法は魔力の優劣ばかりでなく、繰り出す魔法の種類でも勝負は変わる。

まだ、可能性はあると思われたのだろう。

心外だな。

完膚かんぷ無きまでに叩き潰して、思い知らせてやる。



ー夜が長くふけゆく月/18日 陽の日ー


そんな話、知らなかった!

でも、俺も絶対、どんな戦士や部下たちにも負けないから!

エムも他の奴らなんかに絶対、負けない!

でも結局俺たちがエスとエムになるなら、これって、時間の無駄じゃない……?

別にエスとエムの称号なんちゃら〜なんてしなくても、毎年やってるみたいにみんなが盛り上がる模擬戦で良くない?

まぁ、それでみんなが盛り上がって楽しめるならいいけど。

来月は頑張ろうねっ☆




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