店ごと異世界召喚されたので焼肉屋を開きます!〜バイトリーダーは勇者になったようです〜
いヴえる
プロローグ
「ようこそー!いらっしゃせー!! これ3番テーブルね! あっ、レジレジレジ! お客さん待たせないで!」
「はい! ……お待たせしました〜! いつもありがとうございます! 本日のお食事は……」
いつも通りの喧騒。そして金曜の夜は、飲食店のかきいれ時だ。忙しいが、今のところ良いサービスで店は回せてるな。
俺の名前は
そして俺が住むここ静岡は、近場にキャンプ場がいくつもあり、場所にも困らない。
仕事というのは焼肉屋だ。これでも一応店長をやっている。
「ナオ店長! 5番テーブル火がつきません〜!」
「OK今行く。レジの引き出しからチャッカマン持ってきて」
「はい!」
祖父から任されたこの焼肉屋を25の時に受け継ぎ、事務管理も含めて切り盛りしている。バイトの子達も、サービス業のあれこれを熱心に教えたおかげで、今ではとても良い接客をしてくれており、地元の評判もいい。
俺はチャッカマンで5番テーブルの火をつけると、キッチンへと向かう。丁度新規の組が重なりオーダーが立て込んでいるのだ。
「焦らなくていい。だけど急げ〜! スムーズに丁寧に。……石焼きビビンバはちゃんとナムルでご飯を隠せ、貧相に見える。ちょっとやり直し…………。それ! もうちょい綺麗に並べよう! ……うん、OK! さ、次!」
ピーク時ということもあって鬼のように忙しいが、妥協は出来ない。
店長である俺が妥協を見せた瞬間、アルバイトはそれを見て自分のスタンダードを下げてしまうからだ。
常に模範となる背中を見せなければいけない。
「店長〜!! こっちやばいっす!! 助けてー!!」
「あいよ、……落ち着けあつし。すぐ行くぞ」
「あざっす!!」
疲れているだろうに笑顔で答えるスタッフを見て俺は少し微笑む。本当にみんないい子達ばかりで、この店をよく支えてくれているのだ。
そして俺は目まぐるしくもやりがいのある営業を、いつものようにこなしていった。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「いやぁ〜マジで今日はダメかと思ったわ。店長まじやべえな」
「それな、俺も今日3回フォローに入ってもらったけど一瞬でオーダー無くなったわ〜。……あ! 店長お疲れ様っす!!」
「お疲れ様っす! 明日もおねしゃーす!!」
「おう!お疲れ様!! 今日もありがとな! 気をつけて帰れよ!」
「「うーーっす!」」
営業終了後、俺はスタッフルームから出てきた2人に挨拶すると在庫を確認して発注を行うため倉庫に向かう。
今日も仕事帰りのサラリーマンや学生達で賑わい、中々の売上だった。有難いことなんだが……そろそろ店のキャパを超えてきてるんだよなぁ。
お客さんを長い時間お待たせするのは心苦しい。だがそもそもの席も人手も足りてないのが現状だ。
「改築も金かかるしな〜。やっぱ席回転のスピードあげるしか……」
「お疲れ様です店長」
俺が独り言を言っていると、少し開いた倉庫の扉から黒髪の女性がひょっこり顔を覗かせた。
「ん、おぉ。白雪。まだ上がってなかったのか?」
「発注まだだったでしょう? お肉の解凍もあるのにひとりじゃ大変かと思いまして」
「……すまんな。助かるよ、ありがとな」
ユニフォームのバンダナを解き、黒く長い髪を纏めるようにしてポニーテールを作る。いつもの彼女の発注スタイル。
目もクリっとして大きく、顔がビックリするくらい小さい。更にはすらっとした体型で身長も高く、モデルと見紛う程だ。詳しく聞いたことは無いが170以上はありそうだ。
店の仕事は発注も含め、全て習得して、俺と変わらぬ仕事ぶりで店を支えてくれているが、彼女も大学最終年度。既に就職先を決め、来年の3月にはウチを卒業する。
マジでこの穴は大きい……。うちでこのまま働いて欲しいくらいだ。だが彼女が決めた就職先は父が経営する一流大企業。さすがにそれを蹴ってうちで働いて欲しいなんて俺には言えない。むしろそんな子がうちで働いてくれているだけでびっくりなのだ。
「……店長あまり休んでないんですから、これくらいお安い御用です。いつも助けられてばかりですから」
「いやいや! 助けられてるのはこっちだって! マジで! ……ほんとにありがとね。発注代わるから上がりな? 」
「いえ、迎えがくるまで少し時間があるのでこれだけやっちゃいます! 店長は明日のお肉の準備に行ってもらって大丈夫ですよ?」
「……毎度毎度すまんな。白雪マジで女神だわ! じゃあお言葉に甘えてサクッとやってくる!」
「フフ……。そんな事ないですよ。行ってらっしゃい」
正直一人じゃしんどかったところだった。本当に有難いな。……そう考えると来年で白雪がうちの店からいなくなってしまうのは本当に痛い。果たして俺は一人でやって行けるのだろうか。
そんな事を思いながら俺は白雪のお言葉に甘えて明日使う肉の解凍へ向かう。
人が余裕で入れるほどの業務用冷凍庫の前に立ち扉に手をかけた。
「明日は土曜か……。日曜の分も合わせたら100kg以上は出さないとな……。ふぅ。…………よし!
やるか〜!! 」
ガチャリ
「……うわっ!! なんだ!? まぶしっ…………!?!?」
冷凍庫の扉を開けた瞬間、俺は目の前が真っ白になるほどの光に包み込まれた。
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