7月27日
君の親御さんから「遺品整理を手伝ってほしい」と言われた。
「どうして僕に……」
そう思ったが、引き受けることにした。
君の持ち物を箱に詰めて。
君の部屋はすっかり、空っぽになってしまった。
まるで最初から誰もいなかったんじゃないかと思うほどに。
「手伝ってくれてありがとう。お茶でも飲んでいって」
そう言われて、お茶を出された。温かい。湯気が立っている。
「ごめんなさいね。冷たいお茶のほうが良かったかしら」
そういわれて、クッキーを出された。
「そんなことないです。ありがとうございます」
手を付けられないでいた。
お茶を見つめる。
下の方に、少量の緑色の粉が溜まっていた。
「……あの子からね、手紙を預かっているの」
重々しい空気の中、口を開いた君のお母さん。
「え……?」
「あなた宛ての手紙があるのよ。読んでいってくれない?」
「ちょっと待っててね。取ってくるわ」そういって、二階の方へ上がっていった。
僕は呆然とするだけだった。
「あったわ。どうぞ、読んでみて」
そう言って手紙を渡された。
君へ
これを読んでいるということは、私はきっともう、死んでいることでしょう。
まず、置いて逝ってごめんね。
私の病気について説明しましょう。
事実からいうと、私の病気はまだ解明されていないそうです。
担当医に言われたことは「あと、1年ほどが限界でしょう」たったそれだけ。
100万人に1人しかならないとされている病気なんだって。
意味わかんないよね。なんでそんな病気、私がなるんだろうって。
だけど、受け入れるしかなかった。受け入れることしか許されなかった。
だから開き直って「あと1年、思い切り生きてやろー!」って。
最期まで私のわがままに付き合ってくれて、ありがとう。
私の人生、君のおかげで、とってもとっても、幸せでした。
ごめんなさい。愛しています。
少し丸っこくて、個性的な君の字。
『ごめんなさい。愛しています。』
その言葉に、君の全てが込められている気がして。
「……ぅ、っ、ぁあぁぁ……」
涙を、こぼさずにはいられなかった。
僕の気が済むまで。涙尽きるまで。
ずっとずっと、泣き続けた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます